<Albums>
1.COMMON &
PETE ROCK『AUDITORIUM, VOL.1』

まさしくオジサンのオジサンによるオジサンのための音楽。もちろん、オレもオジサンの端くれだから、この音楽に心の底から共感できるし、この音楽を心の底から愛しておるよ。ラップもビートも極上。
「Wise Up」が出たのと同じ時期に
NasとPremoのタッグも「Define My Name」をドロップしたんだよね。そのとき、個人的にはCOMMON &
PETE ROCK組の圧勝だと思ったんだけど、でも、これがアルバム1枚分の勝負だったら、総合力に勝る
Nas & Premo組の勝利に終わるのかなあ、とも少し思った。結果的に
Nas & Premo組のアルバムは年内にドロップされなかったけど、この内容だったら、決して負けることはなかったであろう。
ヴァイナルで聴いたら長すぎるかもの尺だけど、CDなら問題ない程度の尺だよね。正直な話、
PETE ROCK & CL SMOOTH名義以外のPeteの仕事を(何枚か持ってはいるものの)追ってきてないので、今回の作品が「好調を維持してきたうえでの当然の結果」なのか、「COMMONと組んだ化学反応による突然の快作」なのか、そこを正確に把握できていないんだけどね。
で、本当はBOOM BAPっていうタームは必要ないと思ってる。だって、これこそがHIP HOPだし、これしかHIP HOPじゃないから。・・・なーんて血迷い言を吐きたくなるほどの快作。
たとえば、R&Bの世界であれば、
Beyonceみたいな自作自演型の人に比べてMary姐さんみたいな「楽曲を提供してもらって」やっていくタイプの人は(キャリアを築くうえで)不利だよね、みたいな言説があるけども。それでいうと、COMMONは色々なプロデューサーと組んで多くの傑作をモノにしてるわけで、そのキャリアの歩み方は改めて凄いなと。個人的には「好きじゃないアルバム」も複数枚存在するけど、でも、少なくとも「あの人は今」のポジションに陥ったことは一度もないもんな。
2.
THE BLACK CROWES 『HAPPINESS BASTARDS』
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『SHAKE YOUR MONEY MAKER』の30周年のためにリユニオンと聞いたときのオレ自身の反応は、まあ、結構微妙なものだった。というのも、2015年の解散以降、オレは(CHRIS ROBINSON BROTHERHOODとTHE MAGPIE SALUTEの作品としての評価も加味しつつ)Richの肩を持つって決めてて、しかも、
MAGPIE SALUTEの来日公演も最高に楽しめて「一生Richについていく」と決心を新たにしたんだからね。その年のうちにリユニオンがアナウンスされて「ふーん」ってなカンジだったけども。
カヴァー集EPのリリースと
『SHAKE YOUR MONEY MAKER』再現ライヴの日本公演も経て、純然たる新作アルバムのリリース。でも、これが最高の内容だったんだから手のひら返したように諸手を挙げて賞賛するまでの話。正直、彼らのアルバムに駄作なんてほぼないと思ってるような人間だから、そんなオレが言っても説得力はないんだけど、楽曲の充実度が最高レベル。
BLACK CROWESの新作を聴くのが20年ぶりの人だろうが、解散前のアルバムまで聴き続けてた人だろうが、1曲目を聴いた瞬間にガッツポーズでしょうね、これは。ソングライティングの充実ぶりもさることながら、プロダクションもすこぶる良好。Jay
Joyceってオレは初めて聞いた名前だけど、ChrisとRichの指名で
アサインされたようだし、ホントいい仕事してる。ガツンとくるロックンロールのパワーをたたえつつモダンな音作り。理想の音像だわ。
『SHAKE YOUR MONEY MAKER』再現ライヴは、あのアルバムが日本でも人気あるから実現したと思うけど、今回のアルバムではどうだろうね。こんなにも素晴らしいアルバムが出たのだから当然ライヴで体感したいのだけど。ウドーさん? どない?
3.
私立恵比寿中学 『indigo hour』
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アルバムらしいアルバムを作ってくれたなあ、という印象だし、それがとても嬉しい。先行シングルやらタイアップやら諸々含んでるのに、アルバムとしてまとまりがあるのはお見事。
「Summer Glitter」が出た時点で方向性の転換に関する論争があったらしいけど、自分は
TikTokとか見ないし、そことは無縁でいられた。だから、完全にフラットにこのアルバム作品に触れることができたのも良かったんだろう。
このインタビューを読んで、三頭体制での制作が奏功していることがわかった。
自分は残念ながら、ツアーのチケットを手に入れることができなかったので、現場ではどんなだったかはわからない。三頭体制ではない???
ただ、Everything Pointでチラっと見た(本作の収録曲ではないけど)えまの「I'll be here」は素晴らしかった。涙出るレベル。
4.Aooo 『Aooo』
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素晴らしいアルバム。メンバー全員がソングライティングを担当していて、そのうえで、つまんない曲が一曲もない。つまり、四者四様にポップセンスを備えているということ。本当に凄いことと思う。
いくつかの楽曲の歌詞で
赤い公園を示唆するワードやフレーズが散見されるわけだが、インタビューでも
赤い公園の名前を挙げているわけで、「物語の続き」を感じ取るのはそんなに間違った考察じゃないんだろう。そう思って聴いたら「水中少女」とかはホントに泣くわ。
メンバー全員にそれぞれの活動があるバンドなので、今後の動き方がどんなカンジかは読めないところだけど、、、ライヴ演りまくってほしいし、作品も作っていってほしいね。
ただ、本盤、大きな難点があって、それはCDの音作りの点。ギターとか完全にシャリっちゃってる。今回、アルバムのクレジットのドアタマで
井上うにさんがRecording, Mixing and Sound designとして記載されているけども。どうなんだろう。氏の手掛けた他の作品を
赤い公園しか知らないので、これが彼の
シグネチャーな音像なのかどうなのか判断できないんだけど。でも、少なくとも『THE PARK』も『熱唱サマー』もこんな音じゃない
*1わけだからな。一方でMasteringっていう項目のクレジットは見当たらないんだよな。うーん。「ちょっと気になる」っていう程度の話じゃないので、この点がなければもっと上の順位にしてたわ。それぐらいの傑作。
5.
PEARL JAM 『DARK MATTER』
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前作以外は全部持ってるけど、リアルタイムで新作を聴いたのはマジで初めて。どういう風の吹き回しで聴くことになったかというと、例の
プラネタリウム試聴会がきっかけで。ファンでも何でもないから軽い気持ちで応募したんだけど当たっちゃって
*2。まあ、星の投影は置いといて、やっぱり、あの暗闇のなかで音だけと対峙するっていう体験が良かったよね。本当にガチの力作なんだということがハッキリわかった。
STONESの最新作での奇跡的手腕が高く評価されたAndrew Wattが、ここでもプロデュースを担当。話聞くと、どうも(STONES愛を超えるぐらいに)
PEARL JAMのガチフリークらしいな。そのうえで、絶妙な距離感・サジ加減で仕事をしたのだろう。プロデュースっていうけど、実際にはソングライティングにもガッツリ関わってる。さらには、サポートのJosh Klinghofferのクレジットがある曲もあるしね、ギタリストが勢ぞろいして作り上げたギター
オリエンテッドなアルバムといえそう。そのうえでMike McCreadyの
リードギターがふんだんに入っているのも嬉しいポイント。
自分は
PEARL JAM観たことないけど、最後の来日から20年経ってるらしい。こんな素晴らしいアルバムを堪能したら、当然ライヴが観たくなるけど、、、まあ、難しいか。。。
6.GEORDIE GREEP 『THE NEW SOUND』
![The New Sound [国内盤CD / 解説書・歌詞対訳付き / ボーナストラック追加収録] (RT0499CDJP) The New Sound [国内盤CD / 解説書・歌詞対訳付き / ボーナストラック追加収録] (RT0499CDJP)](https://images.weserv.nl/?url=https%3A%2F%2Fm.media-amazon.com%2Fimages%2FI%2F51lM4RdvwRL._SL500_.jpg&q=12&output=webp&max-age=110)
black
midi活動停止と聞いてもちろんショックだったし、今でも残念に思ってはいる。「ソロとバンド両立できるでしょ」って言いたくはなる。まあ、でも、「Holy Holy」が出た時点で、このクオリティの作品を出されたら文句も言えないわなという結論に。だから、ホントは「ドラムはやっぱりMorganのほうがいいじゃねえか」とか言ってやりたい気持ちもあったけど、もう諦めて降伏することにしたわ。
超力作のアルバム(に込められている情報量)を、正直咀嚼し切れてはいないけど、それでも聴き応え十分の一枚。
肩書というのか属性というのか、ギタリストとかフロントマンとか色々あるなかで、今のGeordieは作曲家という自覚が強いのかもね。各種インタビューを読んだ印象では。
2025年2月の来日公演のチケットは確保してある。その「咀嚼し切れていない」部分の答え合わせができる場になるのか、それとも、音源とは全然別モノの世界を構築するのか。まあ、「公演地ごとにバンドメンバーをごっそり変えたい
*3」旨の発言から考えると後者のほうが可能性高いのだろうけど、とても楽しみであることは事実。
7.NAO YOSHIOKA 『FLOW』
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もちろん、音楽を生業にしている人々のなかでコロナ禍の影響を受けなかった人なんて一人もいないと思うんだけど、でも、海外展開を本格化させていた彼女たちのような人は一番ダメージが大きかっただろうな。そこでホントに沈み切ってからの復活の一枚。でも、あせらずじっくり作ったのが素晴らしい。2020年以降のシングル単位の曲は収録せず、ガッツリとアルバム用のセッションで制作した模様。それが奏功してるのがハッキリわかる。だって、前作アルバムと比べて楽曲の充実度が桁違いだもの。とりあえず、これまでのキャリアの最高傑作になったのは間違いないかと。
8.
DOS MONOS 『
DOS ATOMOS』
![Dos Atomos [Analog] Dos Atomos [Analog]](https://images.weserv.nl/?url=https%3A%2F%2Fm.media-amazon.com%2Fimages%2FI%2F410PCiH7wsL._SL500_.jpg&q=12&output=webp&max-age=110)
まあ、ハードルは高くなっちゃってた気はする。「第1期は終わりで、次はバンド形態になります」って宣言してから1年以上の時を経ているわけで、リスナーそれぞれに想像(妄想)をふくらます時間があったわけだから。正直、先入観一切なしで聴いたほうが良かったとは思ってる。
でも、リスナーとしてのオレの最大の落ち度はフラットな姿勢で本作に触れられなかったことではなく、本作のレコ発を見逃したことで(先に他の予定が入っちゃってた)。その後、3回ライヴを観る機会には恵まれたけど、そのどれも生ドラムではなかったからなあ。やっぱ、あのレコ発を目撃した人とそうでない人とでは、本作の理解度にも差があるかもなあ、と思って。
とりあえず、没のインプットの割合が増えたことが客観的な評価における肝になるのかな。元々没ファンのオレとしては全然アリ。アリのなかのアリ。アルバム全体が平板にならないことを好むクチなので、今後もどんどんインプットしてどんどんカオスしていただければと。
9.
MARY J. BLIGE 『GRATITUDE』
この年間ベストの10位以内にはランクインさせなかったものの、前作『GOOD MORNING GORGEOUS』はいいアルバムだったと思ってる。でも、それ以上に気に入ったのが今作。前作は(シーンの最先端とはいわないまでも)時流への目配せも含まれてたと感じるけど、今回はそこバッサリ落としてオーセンティック一直線なカンジ。COMMON &
PETE ROCKの項で書いた「オジサンのための」にそのまま通ずる話やね。複数のプロデューサーが起用されているけど、
Jermaine Dupriの名前が出てきたりして、まさに「あのころの」リスナーに捧ぐ内容でしょう。
それでいてアルバムタイトルが「感謝」だもんな。長年姐さんの音楽を聴き続けてきた人は本作を聴いて幸せな気持ちになるんじゃないかな。オレはなったよ。でも、また来日してくれたらさらに幸せ。2017年が最後だっけ? 実現の可能性が低くないうちにどうにかならないかなあ。
ちなみに、「Nobody But You」っていう曲は2014年作『THE LONDON SESSIONS』にもあるんだけど、まったくの同名異曲みたいだわ。
10.ORANGE GOBLIN 『SCIENCE, NOT FICTION』
Hikkiのベスト盤は『SCIENCE FICTION』だけど、このアルバムはその真逆で『SCIENCE, NOT FICTION』。自分はこのバンドの新譜をリアルタイムで聴いたのは初めて(これまでのカタログは中古でしか買ったことなかった)。
なぜ突然リアルタイムで聴いたかというと、やっぱり、来日公演が大変素晴らしかったから。実はライヴを観たのも初めてだったんだけど。耳栓を持参しかなかった人には最悪の音響だったみたい
*4だけど、オレはちゃんと持っていったので極上
サウンドを味わえた。
来日公演のときはちょうどリードトラックが公開されたばかりのタイミングで、ライヴではその曲しか演らなかったけど、他の収録曲も総じてクオリティ高し。
DOOMとかSTONERとか、そういう狭い範疇のお話ではなくて、「HEAVY METALを好きで良かった」と心から思わせてくれる好盤。あと、アルバムタイトルにもあるとおりで、過去を経て現在を生きるオジサン視点の詞作面も読み応え十分。
このアルバムの曲も聴きたいから、また来日公演実現するといいな。
次点:J MASCIS、
MELT-BANANA、FRIKO、FLO
まあ、もう数年来フィジカル派(厳密に言うとCD派)は追い詰められてきたわけだけど、この2024年はいよいよトドメの年だった気もする。象徴的に思えるのが『COWBOY CARTER』で。例のTOWER渋谷でのサイン会のときにはCDが持ち込まれて、これを買った人に参加券が配られたわけだけど。でも、フタを開けてみたら4曲少ない不完全版だったそうで。で、てっきり、1~2ヶ月後には完全版がリリースされるんだろうと思って待ち構えてたら。結局出なかったな。超大物ですらCD出さない既定路線が確立しちゃった感があって。こっちとしてはトドメの一撃だったなと思ってる。苦笑
Kendrick Lamarはどうだろうね。1~2ヶ月後にCD出るかな? 出たらじっくり聴くわ。
大好きな311の新譜はかろうじてCDのリリースあるみたいなんだけど、年内には間に合わなかったな。注文はしてあるので、届いたらじっくりゆっくり楽しむよ。
で、年の瀬になってDOWN BY LAWの新作が夏に出てたことを知った。今から聴いても間に合わないので、年明けてじっくり聴くわ。Dave Smalleyのがん闘病のニュースは伝わってきたけど、退院したとか新作できたとかは(日本語メディアでは)ニュースにならない。報道に偏りがあって実に困る話。がんには打ち克ったけど、治療費はべらぼうだったらしいから、ちゃんとフィジカルで買って少しでもDaveに還元されるようにするよ。