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(PDF) Evaluation of non-basal slip activity in rolled Mg-Li alloys
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Evaluation of non-basal slip activity in rolled Mg-Li alloys

2020, Journal of Japan Institute of Light Metals

研究論文 軽金属 第 70 巻 第 4 号(2020),117–121 Mg-Li 合金圧延材における非底面すべりの活動性の評価 宮野 遥 ・竹本 圭佑 ・津志田 雅之 3, 4 4 北原 弘基 *・安藤 新二 1 1 2 Journal of The Japan Institute of Light Metals, Vol. 70, No. 4 (2020), 117-121 © 2020 The Japan Institute of Light Metals Evaluation of non-basal slip activity in rolled Mg-Li alloys Haruka MIYANO1, Keisuke TAKEMOTO1, Masayuki TSUSHIDA2 Hiromoto KITAHARA3, 4* and Shinji ANDO4 Tensile tests of rolled Mg-6.2mol%Li and Mg-11.7mol%Li alloys were carried out at room temperature to clarify effects of lithium addition on the relationship between mechanical properties and activities of slip systems. Ductility was found to increase with increasing lithium content. 0.2% proof stress increased when 6.2mol%Li was added. However, Mg-11.7mol%Li showed low 0.2% proof stress compared to pure magnesium. On the other hand, maximum stress decreased with increasing lithium content. Frequency of non-basal slips increased with increasing lithium content. Also, first order pyramidal <c+a> slip showed the highest frequency among non-basal slips in Mg-Li alloys. Critical resolved shear stresses for non-basal slips, which were reduced by lithium addition, resulted in high ductility and low tensile strength of magnesium. (Received August 28, 2019 Accepted January 23, 2020) Keywords: rolling texture; pyramidal slip; prismatic slip; basal slip; CRSS 1. 緒 言 マグネシウムの主すべり系は底面すべり(BS:basal slip) である。しかしながら,BS のみでは独立したすべり系は 2 つ しかなく,von Misesの条件を満足することができない。その ため,マグネシウムは冷間加工性が悪いという欠点がある。 このような延性の改善を目的として,希土類元素を添加した 1) 5) 1) マグネシウム合金の研究が行われている 。Sandlöbes ら は,イットリウムの添加により,マグネシウムと同程度の強 度を維持しつつ,延性が 5 倍になることを報告している。そ の理由として,イットリウム添加による <c+a> 転位の活性化 2) を挙げている。Rikihisa ら は,イットリウム添加量の異なる Mg-(0.6-1.3)mol%Y合金単結晶において底面に平行な方向で 引 張 試 験 を 行 い,Mg-(0.6-0.9)mol%Y 合 金 単 結 晶 で は, {1011}<1123> 一次錐面すべり(FPCS:first order pyramidal <c +a> slip)により降伏することを明らかにしている。さらに, 底面集合組織を有する Mg-0.9mol%Y 合金板材の引張試験を 行った結果,イットリウムの添加により FPCS の活動頻度が 増加することを明らかにしている。これらの結果から,Mg-Y 合金の延性の増加は FPCS の活動頻度が増加したためと報告 している。 Ando ら は,リチウム添加量の異なる Mg-(3.5-14.0)mol% Li合金単結晶の<1120>引張試験を行い, {1122}<1123>二次錐 面すべり(SPCS:second order pyramidal <c+a> slip)の降伏 応力がリチウム添加量の増加とともに低下することを報告し 7) 8) ている。また,Yoshinaga ら と Ahmadieh ら は,リチウム添 加により{1100}<1120> 柱面すべり(PS:prismatic slip)の臨 界分解せん断応力(CRSS)が低下することをそれぞれ報告し ている。以上の報告から,リチウム添加により非底面すべり の活動性を向上させることで,マグネシウムの延性の増加が 期待される。しかしながら,Mg-Li 合金多結晶材において活 動するすべり系や,すべり系に与えるリチウム添加の影響に ついて明らかになっていない点が多い。そこで本研究では, Mg-Li 合金多結晶材における機械的性質と活動するすべり系 の関係を調査した。 6) 2. 実 験 方 法 2 種類の Mg-Li 合金は,高周波誘導加熱真空溶解炉を用い て,試薬として購入した純度 99.9% 以上のリチウム(ナカラ イテスク社)および Table 1 に示す組成のマグネシウムイン ゴットから鋳造した。ICP 発光分光分析装置を用いて合金組 成を分析した結果,Mg-6.2mol%Li および Mg-11.7mol%Li で 熊本大学大学院自然科学教育部材料・応用化学専攻大学院生(熊本市) Graduate Student of Science and Technology, Kumamoto University (Kumamoto-shi, Kumamoto) 2 熊本大学工学部技術部(熊本市) Faculty of Engineering, Kumamoto University(Kumamoto-shi, Kumamoto) 3 熊本大学パルスパワー科学研究所(〒860-8555 熊本市中央区黒髪 2-39-1) Institute of Pulsed Power Science, Kumamoto University(2-39-1 Kurokami, Chuo-ku, Kumamoto-shi, Kumamoto 860-8555) 4 熊本大学先進マグネシウム国際研究センター(熊本市) Magnesium Research Center, Kumamoto University(Kumamoto-shi, Kumamoto) * 責任著者 E-mail:kitahara@msre.kumamoto-u.ac.jp 1 軽金属 118 70(2020.4) Table 1 Chemical composition of pure magnesium ingots. (mass%) Zn Ni Si Mn Fe Cu Al 0.0607 0.1017 0.3875 0.0804 0.1178 0.1231 0.2911 Mg Bal. あった。作製した Mg-Li 合金に対して,平均結晶粒径を約 50 μmに制御するために,熱間圧延と焼鈍を行った。熱間圧延で は,523 Kで複数回の圧延パスを行い,合計圧下率を72%とし た。熱間圧延後の Mg-Li 合金は水中で急冷した。その後の焼 鈍 は,Mg-6.2mol%Li 合 金 で は 723 K で 1.5 ks の 条 件,Mg11.7mol%Li 合金では 748 K で 1.2 ks の条件でそれぞれ行った。 Fig. 1に,本研究で用いた引張試験片の形状を示す。試験片 の平行部は,#400〜#4000のエメリー紙で研磨後,MD-Nap研 磨盤およびダイヤモンドスプレー 3,1,0.25 μm(Struers)を 用いて機械研磨を行った。機械研磨後の試験片表面は,化学 研磨液(HNO3:H2O2:C2H5OH=5:7:20)を浸漬させた綿 布を用いた酸研磨盤により鏡面に仕上げた。その後,ピクリ ン酸溶液(HOC6H(NO 2 2) 3:CO3COOH:C2H5OH:H2O=5: 10:60:10)による腐食を行った。試験前の結晶粒の方位を Fig. 1 Schematic illustration of tensile test specimen. 同定するために,試験片の板面(ND 面)の FE-SEM/EBSD 解 析 (JEOL-JIB4601F) を 行 っ た。 方 位 解 析 に は TSL OIM Analysis7 (TexSEM Laboratories)を用いた。引張試験は,室温 4 (298 K),初期ひずみ速度ε=8.4×10 /s の条件で行った。引 4 張方向は圧延方向(RD)と平行である。すべり線は,ノマル スキー型微分干渉顕微鏡(Nikon ECLIPSE LV 150N)により 観察した。所定のひずみを付与後,EBSD であらかじめ測定 した各結晶粒の初期方位と各結晶粒内で観察されたすべり線 の方向を用いて,活動したすべり系を決定した。本研究では, 各ひずみ段階でのすべり系の同定および活動したすべり系の Schmid 因子は,試験前の初期結晶方位を用いて求めた。 Fig. 2 (0002) and{1010}pole figures of (a) Mg-6.2mol%Li and (b) Mg-11.7mol%Li alloys before tensile tests. - 3. 実 験 結 果 Fig. 2に, (a) Mg-6.2mol%Liと(b)Mg-11.7mol%Liの(0002) および{1010}極点図を示す。Mg-Li 合金は c 軸が ND に強く 配向する底面集合組織を形成していた。同様の底面集合組織 は,純マグネシウムで報告されているが,その最大強度は純 2) マグネシウムで約 23 であることから,リチウム添加により 集合組織が弱化していることがわかった。また,リチウム添 加量の違いによる底面集合組織の最大強度の差は非常に小さ いこともわかった。 Fig. 3に,代表的な公称応力−公称ひずみ曲線を示す。比較 2) のため,純マグネシウムと Mg-0.9mol%Y 合金の結果 も示 す。図中の横矢印と縦矢印は,0.2% 耐力と破断点をそれぞれ 示している。純マグネシウムに比べ,Mg-Li 合金の加工硬化 率は,小さいことがわかる。どちらの Mg-Li 合金も 6.0% の引 張ひずみまでは加工硬化を示し,Mg-6.2mol%Li 合金は破断 したが,Mg-11.7mol%Li 合金は破断せずに,ほぼ一定の流動 応力で変形した。Fig. 4 に,リチウム添加量の増加に伴う, 0.2% 耐力,最大強度および破断ひずみの変化を示す。純マグ ネシウムと比較して,0.2% 耐力は,Mg-6.2mol%Li 合金では 増加し,Mg-11.7mol%Li 合金では低下した。また,リチウム 添加量の増加に伴い,最大応力が低下する一方で,延性は増 加した。 Fig. 3 Stress-strain curves of (a) pure magnesium, (b) Mg6.2mol%Li, (c) Mg-11.7mol%Li and Mg-0.9mol%Y alloys. Fig. 5 に,Mg-Li合金で観察された,すべり線の光学顕微鏡 写真を示す。いずれの合金においても,BS,PS,FPCS,SPCS およびレンズ状形態をしている{1012}双晶が観察された。 BS のすべり線は多くの結晶粒で観察され,結晶粒内全面で 均一に観察された。Fig. ( 5 b)に示すように,FPCS のすべり 線は,BSのすべり線に比べ微細であり,結晶粒内全面ではな く,粒界近傍に局所的に観察される場合が多かった。一方, PS および SPCS のすべり線は短く,その多くが結晶粒界付近 119 J. JILM 70(2020.4) Fig. 4 0.2% proof stress, maximum stress, fracture strain as a function of lithium content in Mg-Li alloys. Fig. 6 Relationship between frequency of activated slips and nominal strain in pure magnesium, Mg-6.2mol%Li, Mg11.7mol%Li and Mg-0.9mol%Y alloys. Fig. 5 Optical micrographs of slip lines and{1012}twins on the surfaces of (a) Mg-6.2mol%Li and (b) Mg11.7mol%Li. Slip lines were crystallographically analyzed and identified to the corresponding slip system: basal slip (BS); prismatic slip (PS); first order <c+a> pyramidal slip (FPCS); and second order <c+a> pyramidal slip (SPCS). - でのみ観察された。 {1012}双晶が観察された結晶粒の個数の - 割合は,Mg-6.2mol%Li 合金(ε=3.6%)では観察した結晶粒 の内 50%,Mg-11.7mol%Li 合金(ε=3.0%)では 8% であり, リチウム添加量の増加に伴い減少することがわかった。ここ で,高い延性を示した Mg-11.7mol%Li 合金では,双晶が観察 された結晶粒の割合は少ない。また,Mg-6.2mol%Li合金の双 晶の活動頻度は 50% であるが,1 つの結晶粒内の双晶の面積 比は15%程度であり,試験片全体の面積比は7.5%程度であっ た。さらに,試験片は底面集合組織を持っていることから, {1012}双晶によるひずみは底面に平行,すなわち引張方向で ある圧延方向には圧縮ひずみを生じることになる。仮に,こ の双晶によるひずみが延性に寄与するとしても,マグネシウ ムにおける{1012}双晶のせん断ひずみは 13% であり,底面 に平行な垂直ひずみとしては 6.8% である。以上のことから, 双晶により生じたひずみ量は面積比を考慮すると 0.5% 程度 となり,Mg-6.2mol%Li 合金の伸びに対しては少ないと考え られる。したがって,今回用いた圧延材では,双晶による延 性への寄与は非常に小さいといえる。 2) Fig. 6に,純マグネシウム ,Mg-Li合金およびMg-0.9mol%Y 2) 合金 の各すべり系の活動頻度とひずみ量の関係を示す。こ こで活動頻度とは,観察領域中の結晶粒の個数に対するすべ り 線 が 観 察 さ れ た 結 晶 粒 の 個 数 の 割 合 と 定 義 し た。Mg0.9mol%Y合金は,Mg-11.7mol%Li合金と同程度の延性を示す ことから,比較材として示している。純マグネシウムの破断 ひずみであるε=4.0% 付近では,BS が約 50% であり,最も高 い活動頻度を示す。SPCS,FPCS および PS も活動しているが Fig. 7 Number fraction of grains where basal slips were activated as a function of Schmid factor for basal slip in (a) Mg-6.2mol%Li and (b) Mg-11.7mol%Li alloys. いずれも数%である。また,高い延性を示すMg-0.9mol%Y合 金(ε=12.5%)は,純マグネシウムに比べ,各すべりの活動 2) 頻度が高いことが報告 されている。特に BS の活動頻度は 2) 90% 以上 と非常に高い。これらの合金の BS の活動に対し て,Mg-Li 合金の BS の活動頻度は 30〜40% 程度であり,純マ グネシウムや Mg-0.9mol%Y 合金に比べ減少した。一方で, Mg-Li 合金の FPCS と PS の活動頻度は,Mg-0.9mol%Y 合金と 比較しても高く,非底面すべりの中で FPCS が最も高い値を 示した。また,リチウム添加量の増加に伴い FPCS と PS の活 動頻度は増加しているが,SPCS の頻度は増加しなかった。 Fig. 7 は,各ひずみ量において BS が活動した結晶粒の割合 を 0.1 刻みの Schmid 因子で,系統的に整理したものである。 ここで,黒の棒は,引張試験前に EBSD により観察した各結 晶粒における BS の Schmid 因子のうち最大の値について,全 結晶粒に対する割合として表している。つまり,黒の棒から, 引張試験前の組織は,BS の Schmid 因子の小さい結晶粒が多 いことがわかる。これは Mg-Li 合金が強い底面集合組織を形 成しているためである。また,引張試験中のひずみ段階ごと に,BSが活動した結晶粒の割合を棒グラフで示している。引 張試験中には,比較的 Schmid 因子の高い結晶粒から順に BS が活動しており,BS の活動性は Schmid 則に従うことがわか 軽金属 120 る。 Fig. 8 に,Mg-Li 合金の約 3% のひずみにおいて活動した各 非底面すべりに作用する分解せん断応力(RSS)を示す。こ こで,RSSは活動したすべり系のSchmid因子と流動応力を用 いて算出したが,今回は単軸応力と仮定しているため,実際 にすべり面に作用しているせん断応力とは異なる可能性があ る。図中の破線は,Mg-7.0mol%Li と Mg-10.6mol%Li 合金の SPCSのCRSSであり,それぞれ約36 MPaと約29 MPaである。 6), 9) これらの CRSS は,Ando ら が報告している Mg-Li 合金単 結晶の <1120> 引張試験から得られる降伏応力を用いてそれ ぞれ算出した。また,図中の実線は,Mg-7.9mol%Li 合金と Mg-12.9mol%Li 合金における PS の CRSS の報告値であり,そ 8) 8) れぞれ約 30 MPa と約 24 MPa である。その結果,Mg-Li 合 金の SPCS と PS が活動したほとんどの結晶粒において,見か け上,CRSS より高い RSS がすべり面に作用していたことが わかる。ここで,Mg-Li 合金における FPCS の CRSS は不明で あるが,Mg-Li 合金単結晶は <1120> 引張において SPCS によ 6), 9) り降伏することが報告 されており,FPCSのCRSSはSPCS よりも高いことが考えられる。そのため,FPCSが活動した結 晶粒の半数以上は,見かけ上,CRSS 以下の RSS において活 6), 9) 動していることになる。ここで,Ando ら は Mg-Li 合金単 結晶の <1120> 引張試験において SPCS が活動する際,加工硬 化を示すことを報告している。そのため,3%変形した状態を 考慮すると,Fig. 8 中の CRSS を示した線は上昇すると考えら れる。したがって,さらに多くの結晶粒において,FPCS が CRSS 以下の RSS で活動していることになる。また,すべり 線観察から,FPCS が活動していた結晶粒の周囲では BS のす べり線が観察されていた。以上のことから,BSによる粒界付 近への応力集中により,FPCS は 見かけ上,CRSS 以下の RSS で活動したと考えられる。 70(2020.4) Fig. 8 Resolved shear stresses (RSSs) for non-basal slips at a nominal strain of approximately 3.0% in Mg-6.2mol%Li and Mg-11.7mol%Li alloys. - 4. 考 察 リチウム添加によるマグネシウム圧延材の機械的性質と各 すべり系の活動性の変化について考察する。本研究では, Fig. 4 に示したように,0.2% 耐力は Mg-6.2mol%Li 合金では増 加したが,Mg-11.7mol%Li合金では低下した。Fig. 9に,これ 10) 12) 6) 9) まで報告されている純マグネシウム ,Mg-Li および 2), 13) Mg-Y合金 における各すべり系のCRSSを示す。純マグネ シ ウ ム に リ チ ウ ム を 添 加 し た 場 合,BS(◇)の CRSS は 7) 7) 6.6mol% のリチウム添加で増加するが,15.0mol% 添加して も BS の CRSS はほとんど変わらない。一方,PS(□)および SPCS(△)の CRSS は,リチウム添加量の増加に伴い減少す る。そのため,Mg-6.2mol%Li合金の0.2%耐力は,BSのCRSS が上昇したことで増加するが,Mg-11.7mol%Li 合金では非底 面すべりの CRSS の減少が大きく,0.2% 耐力が減少したと考 えられる。 Fig. 10 に,今回の実験結果を基に,集合組織,合金元素の 添加によるすべり系の活動性,強度および延性の変化を模式 的に示す。純マグネシウムにリチウムを添加することによ り,延 性 は 増 加 し た が 強 度 は 低 下 し た。こ こ で,Mg11.7mol%Li合金は20%の延性を示し,Mg-0.9mol%Y合金の延 2) 性 と同程度であった。Fig. 10 (a)のユニットセルで示すよ うに,強い底面集合組織を有するマグネシウム圧延材の場 合,BS の Schmid 因子が 0 に近いため強度は高くなるが,BS Fig. 9 Relationship between CRSSs and content of alloy elements in Mg-Li and Mg-Y alloys. の活動性が低いため延性は低くなる。そこで延性を増加させ る方法として,Fig. 10 (b)に示すように,底面の配向を引張 14) 方向に対し傾けることが有効であると考えられる 。しかし ながら,底面の配向が引張方向に対して傾くと,BSのSchmid 因子が増加し,BSの活動が容易になるため,延性は増加する が強度は減少する。一方,Fig. 3に示したように,イットリウ ムを添加すると強度は低下することなく延性が改善すること 2) が報告されている 。高い延性の理由として,Fig. 10(c)の 2) ように,イットリウムの添加により集合組織が弱化する こ とで,Fig. 6 に示したように BS の活動頻度が増加し,それに 加えて非底面すべりの活動頻度も増加したためと考えられ る。しかしながら,イットリウムの添加により,BSおよび非 底面すべりの CRSS がともに増加したため, (0002)集合組織 が弱化したにもかかわらず,Fig. 9で示したように,強度が低 下しなかったと考えられる。一方,Fig. 10 (d)に示すように, リチウムを添加した場合,マグネシウムと同様の強い底面集 合組織を示すため,Fig. 6 で示したように,BS の活動頻度は 30〜40% 程度であった。それに対し,非底面すべりの活動頻 度が純マグネシウムおよび Mg-0.9mol%Y 合金に比べて高い ことから,延性が増加したと考えられる。リチウム添加によ り,BSのCRSSは多少増加するものの,非底面すべりのCRSS が大きく減少することから強度が減少したと考えられる。こ 121 J. JILM 70(2020.4) Fig. 10 Schematic illustrations of texture and tensile properties of rolled pure magnesium and magnesium alloys. こで,Mg-Li合金とMg-Y合金ともに,非底面すべりの中で活 動頻度が高いのは FPCS および PS であった。しかしながら, 2) Rikihisaら によると,FPCSとSPCSに比べPSが高い活動頻度 を示した Mg-1.2mol%Y 合金は,Mg-0.9mol%Y 合金に比べ延 性が低く,延性の向上には FPCS の活動が必要であるとして いる。本研究の Mg-Li 合金の FPCS と PS の活動頻度は同程度 であるが,Fig. 5に見られるようにFPCSによるすべり線はPS よりも広い領域で観察されることから,Mg-Li 合金の変形に は FPCS の寄与が高いと考えられる。しかしながら,いずれ のすべり系が延性向上に寄与するかについては不明確であ り,今後の検討課題とする。 5. 結 言 Mg-6.2mol%Li 合金と Mg-11.7mol%Li 合金圧延材の引張試 験を行い,Mg-Li 合金多結晶材における機械的性質と活動す るすべり系の関係を調査し,以下の結言を得た。 (1)リチウム添加量の増加に伴い,延性は増加し,強度は 低下した。 (2)リチウム添加量の増加に伴い,非底面すべりの活動頻 度は増加した。特に,一次錐面すべりが最も活動した。 (3)Mg-11.7mol%Li 合金における底面すべりの活動頻度は 純マグネシウムと同程度であった。一方で,非底面すべりの 活動頻度は,Mg-0.9mol%Y 合金と比較して高いことから,主 に非底面すべりの活動により延性が増加する。 (4)Mg-Li合金の強度の低下は,非底面すべりのCRSSの低 下によるものである。 参 考 文 献 1) S. Sandlöbes, S. Zaefferer, I. Schestakow, S. Yi and R. GonzalezMartinez: Acta Mater., 59 (2011), 429-439. 2) H. Rikihisa, T. Mori, M. Tsushida, H. Kitahara and S. Ando: Mater. Trans., 58 (2017), 1656-1663. 3) S.R. Agnew, M.H. Yoo and C.N. Tome: Acta mater., 49 (2001), 42774289. 4) Y. Chino, M. Kado and M. Mabuchi: Mater. Sci. Eng. A, 494 (2008), 343-349. 5) J. Bohlem, M.R. Nürnberg, J.W. Senn, D. Letzig and S.R. Agnew: Acta Mater., 55 (2007), 2101-2112. 6) S. Ando, M. Tanaka and H. Tonda: Mater. Sci. Forum., 419-422 (2003), 87-92. 7) H. Yoshinaga and R. Horiuchi: Trans. JIM., 4 (1963), 134-141. 8) A. Ahmadieh, J. Mitchell and J.E. Dorn: Trans. AIME, 233 (1965), 1130-1138. 9) S. Ando and H. Tonda: Mater. Trans. JIM., 41 (2000), 1188-1191. 10) S. Miura, S. Imagawa, T. Toyoda, K. Ohkubo and T. Mohri: Mater. Trans., 49 (2008), 952-956. 11) 安藤新二,中村寛治,高島和希,頓田英機:軽金属,42(1992), 765-771. 12) J.F. Stohr and J.P. Poirier: Philos. Mag., 25 (1972), 1313-1329. 13) A. Kula, X. Jia, R.K. Mishra and M. Niewczas: Int. J. Plast., 92 (2017), 96-121. 14) X. Huang, K. Suzuki, A. Watazu, I. Shigematsu and N. Saito: J. Alloy. 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