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東大附属図書館の蔵書が1000万冊突破 「解体新書」や国宝など、デジタルアーカイブ化も | 朝日新聞Thinkキャンパス

東大附属図書館の蔵書が1000万冊突破 「解体新書」や国宝など、デジタルアーカイブ化も

2025/01/28

国内の大学図書館で唯一、蔵書が1000万冊に到達しているのが、東京大学附属図書館です。2027年に創立150周年を迎える東京大学。その図書館の魅力に迫ります。(写真=教科書でおなじみの「先大津阿川村山砂鉄洗取之図」。東京大学工学・情報理工学図書館 工3号館図書室所蔵)

1000万冊を超える大学図書館は東大だけ

大学図書館の蔵書の数と内容は、大学の規模や学びの特色を反映したものになる傾向があると言われています。

国内の大学図書館で、最も蔵書数が多いのは、東京大学附属図書館です。1877年に法学部、理学部、文学部の構内に設置された図書館の、当初の蔵書数は約5万4000冊。以来、教育・研究分野の拡大とともに図書館と蔵書の数を増やし、2023年度に国内の大学図書館で初めて1000万冊に到達しました。附属図書館を構成する30の図書館の現在の蔵書数は、合計で1003万9322冊です(2023年度末時点)。

東京大学総合図書館(写真=東京大学提供)

東京大学に次いで蔵書数が多いのは、京都大学の約741万冊(「京都大学概要2024データ編」)。早稲田大学(約613万冊/「早稲田大学図書館年報」)日本大学(約551万冊/「日本大学データサマリー」)慶應義塾大学(約511万冊/「慶應義塾大学メディアセンター統計」)といった歴史ある私立大学もランキングの上位に名を連ねます。日本図書館協会が2023年に行った統計調査によると、日本の大学図書館の蔵書総数は約3億4000万冊(「日本の図書館2023」)に上り、1000万冊という数字は全体の3%ほどです。とはいえ、第2位の京都大学とは約260万冊の差があり、東京大学附属図書館の蔵書規模が群を抜いていることがわかります。

東京大学総合図書館本館3階大閲覧室(写真=東京大学提供)

蔵書の算出基準に違いがあるため、単純に比較はできませんが、国内で最多の蔵書を保有しているのは国立国会図書館の約4753万冊(国立国会図書館年報webサイトから)で、1000万冊を超える図書館は国内に2つしかありません。一方、世界に目を向けると2000万冊(ハーバード大学図書館webサイトから)を超えるとされるハーバード大学をはじめ、よりスケールの大きい大学図書館が存在します。
なお、東京大学の蔵書数には電子リソースを含めていません。電子ブック電子ジャーナル、さらに製本されていない雑誌までカウントすれば蔵書数はさらに増えます。

教科書で見た本が目の前に

東京大学附属図書館のコレクションには、国宝に指定されている「島津家文書」や重要文化財の「東京大学史関係資料」など、歴史的価値の高いものが数多く含まれています。

島津家文書「歴代亀鑑 源頼朝袖判下文」(東京大学史料編纂所所蔵)

『解体新書』『種の起源』「先大津阿川村山砂鉄洗取之図」といった、教科書で見たことがある資料がいくつも収蔵され、数はもちろん内容も充実しているのが最大の特徴です。例えば、24年の大河ドラマのテーマになっている『源氏物語』も、「東京大学本」または「東大本」と呼ばれる写本を含めて複数のコレクションがあり、申請すればそれら貴重なコレクションを学習や研究のために閲覧することができます。

東京帝国大学五十年史料「開成学校開校式図」(東京大学総合図書館所蔵)

1000万冊を超える蔵書の最大の特色は、古い書物から最新の文献まで、あらゆる学問分野の本がバランスよくそろい、学習や研究活動に必要なものをほぼ網羅している点です。「分野の幅広さ」と「歴史の奥行き」を兼ね備えていると言えるでしょう。

『解體新書』 序図(東京大学医学図書館所蔵)

和書(約542万冊)と洋書(約461万冊)の比率にも大きな差はなく、学問分野や出版された時代に加えて、幅広い言語や地域を扱っていることも、最初の帝国大学として長い歴史を重ねてきた証しだと言えるかもしれません。

『源氏物語』(東京大学総合図書館所蔵)

アニメ「風立ちぬ」のモデルに

蔵書が1000万冊に到達するまでには、第2次世界大戦中に空襲の被害を受けるなど、さまざまな困難が立ちはだかりました。なかでも1923年9月に起きた関東大震災による被害は深刻で、地震による火災が図書館の建物に燃え移り、蔵書の大半が失われました。東京大学の卒業生が主人公のアニメ映画「風立ちぬ」では、燃え上がる図書館から必死に本を救い出そうとする学生の様子が描かれたシーンがありますが、これは東京大学附属図書館がモデルと言われています。

関東大震災からの復興にあたっては、国際連盟で東京帝国大学図書館復興援助が決議され、ジョン・ロックフェラー・ジュニア氏をはじめ世界中から支援の手が差しのべられました。

「ジョン・D・ロックフェラー氏より古在由直総長宛書簡」(東京大学総合図書館所蔵)

貴重な蔵書をデジタルアーカイブ化

1986年に蔵書検索サービス「OPAC」の運用をスタートさせるなど、コンピューター技術を積極的に活用して、図書館機能を強化してきました。学内の研究成果を「東京大学学術機関リポジトリ」として公開しているほか、貴重な蔵書の利活用を目的としてデジタルアーカイブ化を進めています。「東京大学デジタルアーカイブポータル」はデジタル化した学術資産を一元的に検索・利用可能とするポータルサイトとして高く評価され、2024年に「デジタルアーカイブジャパン・アワード2024」を受賞しました。

大学における学術資産のデジタルアーカイブ化は東京大学にとどまらず、多くの大学図書館が貴重図書などの所蔵資料の電子化を進めています。文部科学省は23年に「オープンサイエンス時代における大学図書館の在り方について(審議のまとめ)」を公表し、30年度の「デジタル・ライブラリー」の実現に向けて動き始めています。

東京大学では、大学の基本方針として蔵書のアーカイブ化に取り組んでいますが、実際にデジタルアーカイブとして公開できているのは1000万冊のほんの一部分にすぎません。デジタル化の流れをさらに加速させることで、附属図書館の蔵書コレクションを含む東京大学の学術資産の魅力を発信していくことを目指しています。

東京大学総合図書館本館大階段(写真=東京大学提供)

最近は私立大学を中心に、図書館を建て替え、その魅力をPRする大学が増えています。設備の良さや利便性の高さを前面に押し出す大学が多い中で、東京大学附属図書館の蔵書数と質の高いコレクションは大きな強みでしょう。また、総合図書館(本郷キャンパス)で関東大震災からの復興当時の机が今も大切に使われているように、歴史が息づく厳かな空間で学びを深められることも他の大学図書館にはない魅力です。

実際に、メディアが多様化して「読書離れ」が指摘される中でも、来館者数や蔵書の貸出冊数は減少していません。学生生活を充実させる場所として、東京大学附属図書館は学生の活気にあふれているようです。

アクティブラーニング用スペース(東京大学総合図書館別館「ライブラリープラザ」)(写真=東京大学提供)

(文=加藤徹)

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【写真】東大附属図書館の蔵書が1000万冊突破 「解体新書」や国宝など、デジタルアーカイブ化も

東京大学総合図書館(写真=東京大学提供)
東京大学総合図書館(写真=東京大学提供)

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