肉のプロが「七輪」でBBQパーティーをしていた
以前、家業が肉の卸しという友人宅のBBQに招かれたことがありました。
そこで用意されていた熱源は……七輪(しちりん)!
組立式のバーベキューグリルに比べ、設置も簡単でサイズもコンパクト。
強い火力を長時間維持できます。
庭でBBQを楽しむなら、実に理にかなったアイテムだったんですね。
焼肉店では七輪で食べさせるところもありますけど、自宅で使うという発想は死角でした。
さすが肉のプロは楽しみ方もわかっている。
以来それをマネしてウチでも七輪を購入。
ときどき自宅の庭で七輪を使ったBBQを楽しんでいます。
そんなわけで、今回は「はじめての七輪BBQ」をテーマにカゲゾウの経験とノウハウをお伝えしたいと思います。
まずは最低限そろえたい道具
七輪、金網、木炭、炭用トング、火消しつぼですね。
どれも近所のホームセンターで手に入れました。七輪はたしか2,000円くらいで購入した記憶があります。
ご近所になければネット通販でも普通に取扱っています。
製造メーカーや形・サイズにもよりますが1,500~3,000円程度で入手できますよ。
ちなみにウチの七輪は直径が27cmほどありますが、炭の火力はけっこう強いので、家族や2~3人の友達とBBQをするのであればもっと小さいサイズでも十分だと思います。
木炭はオガクズを圧縮加熱成型した通称「オガ炭」を使っています。
直方体で中心部に穴が通っているアレです。値段も安価ですし、火力も持ちも十分。
金網、炭用トングは説明不要ですね。
火消しつぼはマストアイテムです。
BBQ後、まだ火がついている炭をこの中に入れ、密閉して消化します。
火事を起こさないようかならず購入してくださいね。
※火の扱いにはくれぐれもご注意ください。
「火おこし」には男のロマンとコケンがかかっている
ご想像していただきたい。
このカゲゾウ、3人の子を持つ5人家族の長であります。
炭の火おこしは誰の仕事か? いわずもがなですな。
ここでスマートに七輪に火をつけられないようでは、男として、夫として、父親としてのコケンにかかわります。
で、その火おこしなんですが……
実はけっこう苦労します……。
いや、着火剤や固形燃料、あるいは火おこし器(底が格子状になった鍋で、炭を入れてガス台で直接炙ることができる器具)などの文明の利器を使えば正直割と簡単にできるんですよ。
ええ、みなさんは文明の利器を大いに使ってください。
でも、でもですよ。
「男の美学」(と称し、カゲゾウが勝手に自らに課している縛り)としては、火付けの道具はマッチ、ライター(点火棒ライター含む)まで。
これに火種として「使い終えた割り箸」と「古新聞」までと決めてあります。(あ、空気を送り込むためのウチワはセーフです)。
しかし当初はそんな小難しいことをいっていたためか、なりカッコ悪い思いをしました。
自宅BBQを始めたばかりの頃の、ある日を再現してみましょう。
【再現】ある日の火おこし風景。そのとき父は……
「じゃあ、父ちゃんが火をおこしておくから、みんなで食材でも買っておいで~」なんて家族をスーパーマーケットに送り出すわけですな。
ここからは男の仕事とばかりに、やおら庭の縁台にどっかと腰を下ろし、目の前にある七輪の中に新聞と割り箸を敷き詰め、その上に炭をセットしたら……
まずはビール、ビールです。
ここまでの労をねぎらう必要がありますから当然ですね。
天にビール缶を掲げ「かんぱ~い」と宣言したら直接ノドに流し込みます。
クハァ~、うんめっ!
さて作業に戻りましょうかね。
七輪の下部には「風口」と呼ばれる小穴がついています。ここから吸気された空気が上へと抜ける「エントツ効果」で燃料が火力を増していくんですね。
なので最初は全開にしておきます。
で、マッチに火をつけ七輪の中に放り込む。
新聞と割り箸に火がつき一瞬盛大に煙は出るのですが……
つかない、炭にはぜんぜん火がつかない。
この間、ビール片手に、もう一方の手にはウチワ。
風口めがけて全力であおいではおります。そのうち火力も衰えてきて、炭はウンともスンともいいません。
あとで知ったんですが、ウチワを使う場合、風口をあおいでもあんまり効果がないらしく、むしろ上面から大量の空気を送るのに使うんですね。
最初の頃はこんなことも知らなかった。
そんなこんなで新聞と割り箸は燃やし尽くされ、火が消えてしまいました。
ふう、まあ待て。いったん落ち着け。
空き缶をくしゃりとつぶし、真っ黒なままの炭を一回取り出し、すっかり灰になっている新聞・割り箸をかき出し捨てると、また新たな新聞と割り箸をセットし直しです。
「ちょっとアルコールが足りなかったかな~」なんて今度は度数高めのキンキンに冷えた「進駐軍マティーニ」をなめつつ……。
ウチワではなくミニ扇風機で(←ヲイ、美学はどこいった!?)がっつり空気を送り込みます。
が、炭は沈黙を続けたまま。やれやれ。
また炭と灰を取り出し「ドンマ〜イ」とウィスキーロックで喉を潤し、再び火種をセットします。
てな感じで悪戦苦闘を繰り返しているとですね、やおら車が家の前に止まります。
「あれ~パパ、まだ火がついてないの?」と買い物帰りの子どもたちにディスられ、「男のくせに満足に火もおこせないなんて……」と言わんばかりの奥さんからの冷たい視線にさらされる。
ぎゃああああ、コレなんたる屈辱!
パパの面目丸つぶれ。これが原始時代だったら一家全滅になるところです。
でも、ご安心ください。みなさんにはそんな恥ずかしい思いはさせません。
「火おこしに文明の利器を使用しない派」のみなさんに秘策があります。
新聞だけで火おこしできる「西尾流七輪着火法」
長らく火おこしに苦労していたカゲゾウですが、ネットでいろいろ調べてついに「コレは!」という方法に出合いました。
それが高知で土佐木炭を取り扱っている西岡謙一さんが考案した「西岡流七輪着火法」!
詳しい手順はこちらの動画から確認できます。
動画に代わって簡単にご説明しますと、広げた新聞を半分サイズに切り分けます。
で、これを半分、半分、半分と3回ほど折ったらギュッと絞って「こより」を10本ほど作ります。
七輪の内壁にキャンプファイヤーの木材のように井桁状に組み上げていきます。七輪の中心部が空洞なるように組むのがコツです。
10本使い切ったらこれで土台完成。この上に炭をセットすれば準備完了。
最後に着火のきっかけとなる燃やした新聞を七輪の真中に放り込めば……
最初こそ炎が上がりますが、固くこより状にしている新聞は一気に燃え上がらずじっくりと延焼していきます。じわじわと温度があがっていくのがいいんでしょうね。
気がつくと炭に火がついているという感じです。
あとはお酒を飲みながら時々様子を見るだけ。
火種が弱いようならウチワを使ってもいいでしょう。
風がある日だったら、風口を風上に向けるだけでその作業さえいりません。
すっかり炭が白くなり一部赤く燃えるところも見えます。これで火おこしは無事終了。
この日も10分くらいで無事に火がつきました。
ああ、今までの苦労の日々は何んだったんだ……。
この状態でさらに待てば炭が赤々としてきました。
さていよいよ焼きに入りましょうかね。
自宅BBQをやる際のオススメ食材・レシピは
一度炭に火がつけばBBQなど九分九厘勝利したようなものです。
あとは牛・豚・鶏・羊のカルビでもロースでもホルモンでもお好きな肉をじゃんじゃん焼いて大いに楽しんでください。
でもせっかくなので、いくつかカゲゾウのオススメをご紹介しましょう。
オススメその①焼き鳥加熱済み鶏もも串
お手軽さとお値段の安さからオススメなのが「焼き鳥加熱済み鶏もも串」などの名前で売られている冷凍焼き鳥です。
カゲゾウは近所の業務用スーパーで購入していますが、通販でも取扱いがあるようです。
50本入りで1,080円(1本 20円)というコスパ!
串もののいいところは、取り皿もお箸もいらないこと。
小さなお子さんがいる場合、タレの入った皿をキープしつつのお箸って扱いがまだ難しいことと思いますが、焼き鳥ならただ食べるだけ。
加熱済みを冷凍したものなので、生焼けってことがないのも安心ポイント(調理時に焼きが甘くて冷たいってことたまにありますが)。
ウチの子たちはカゲゾウが焼いてるそばから手をのばしてきます。
で、食べ終わったら串なんてポイポイ七輪にくべてしまえば処理までカンタン。
みなさんそのことをよく知っているようで、GWや夏休みなどのBBQシーズンには結構な割合で売り切れもある食材です。
もも以外にもつくねやネギマ、鶏皮なども販売されており、最初から最後まで焼き鳥で通すのもアリですね。
オススメその②子どもがいるなら鉄板! マシュマロ焼き
BBQをやるぞと宣言すると、必ず子どもたちからせがまれるのが「マシュマロ焼き」。
お子さんがいる方ならマストアイテムです。
串に刺して炙るだけですが、子どもにとっては自分で焼くこと自体もエンターテインメント。
準備もカンタンな上に自分で焼いてくれるので親としてもラクです。
この日も肉の隙間の熱源めがけて一生懸命焼いていました(あ、親御さんは子どもがやけどしないようにしっかり見守ってくださいね)。
オススメその③エダジュンさんの「ピリ辛ホイル焼き」
さてここからは『メシ通』のレシピから少し本格的なものに挑戦してみます。
まずはエダジュンさんのこちら。
もうね、ひと言でいうとぜいたくな大人の味。だって見てくださいよ、使われている食材! チョリソとエリンギとカマンベールですって。
しかもこれをオリーブオイルとスイチリとバターで味付けですよ。なにそのハイカラな感じ。
自分が子どもの頃、スーパーにあったのってエリンギとバターくらいなもんで、あとの食材なんておっさんになるまで見かけたことなかったよ。
しかも仕上にパクチーまでのせちゃったりして、はあ、ぜいたく。
子どもらには大人過ぎる味かな? なんて思ってましたけど、いざ皿を出すと我先にと箸がのびてきてあっちゅうまに完食でした。
オススメその④魚屋三代目さんの「鮭のちゃんちゃん焼き」
お肉だけじゃなく、お魚も食べたいですと!?
はは~ん、であれば魚屋三代目さんの「鮭のちゃんちゃん焼き」で決まりですね。
「ちっとも豪快じゃない」なんて銘打ってますけど、なにいってるんですか!
コチトラ七輪で調理してるわけですからこのサイズ感こそベスト。
「それでいい」いや「それがいい」ですよ。
すりおろしニンニクがピシリと効いてて、味噌マヨをさらに一段ひっぱりあげています。ビールはもちろん、日本酒もグイグイいきたくなる。
みんなを幸せにする一皿でした。
ちなみにホイル焼するときは食材の上側に火が回りにくいので、両レシピともふたとしてホイルを被せるのを忘れずに。
オススメその⑤BASE CAMPの「チキンのフレドレ漬け」&「トロピカルステーキ」
こちらはひろさわゆかりさんの記事から。
サイドメニューもおいしいですが、やっぱり炭火の直火で肉を焼くことこそ王道。
で、プッシュしたいのが東京・水道橋にあるカフェ&バー「BASE CAMP」の「チキンのフレドレ漬け」と「トロピカルステーキ」です。
チキンはレシピ名の通り、フレンチドレッシングに事前に(前日から)漬けておき焼くだけ。ステーキの方はこれまたパイナップルジュースに漬け(こちらは1時間前に)、塩コショウをしたあと焼くだけ。
網焼きで調理するメリットは余分な脂がガンガン落ち、それがまた煙となって食材を燻し、さらに直火ならではのおいしそうな焦げがつくところ!
そして両レシピとも事前の漬けによって、味の深みがもう1レイヤーのっかってますからね。
ああ、もう画像見ていただければ説明は不要でしょう。
素人が調理してもうまそーに焼けちゃいました。
こちらも家族に出した途端、一瞬で蒸発してしまいました。
オススメの〆は焼きオニギリで
ラストは炭水化物で締めたいですよね。
BBQの締めは「焼きそば!」って方も多いと思いますが、網焼きなので麺系は残念ながら不向き。うちでは焼オニギリをフィニッシュブローにしています。
自分で握ってもいいのですが、どうしても米が網にくっついたり、逆にほぐれて網の間から米つぶがほろほろと落ちちゃうことになるので、オススメは市販品の冷凍オニギリです。
こちら冷凍されたものをいきなり火にかけてしまうと、外は焼けてるのに中心部は冷たいってことがあります。
ここは自宅という地の利をいかし、レンジで普通にチンしてしまいましょう。
七輪には焦げをさらに香ばしくするためにのせます。外はカリッカリ、中は熱々、スモーキーな香りをまとったワンランク上の焼きオニギリが味わえますよ。
自宅七輪BBQのミニハック集
最後にこれまでの自宅BBQの経験からあると便利、知ってるとラクになるミニハック集をお伝えします。
塩・コショウミックスがあると便利
肉の下味をつけるときに、塩とコショウがあらかじめミックスされた調味料を用意しておくと便利です。
家にもともとある塩とコショウを各々振りかけてももちろん差し支えはありませんが、庭での作業スペースは小さいですし、2工程の作業が1工程になるだけでも地味ながらラクになります。
BBQに野菜はいらない説
個人的に焼き野菜は大好きなのですが、網焼きでする場合って実はハードルが高かったりします。
じーと見ていると焼けないくせに、一瞬目を離しているとあっという間に炭になってしまうことしばし。あと意外と焼きムラがあって火加減も難しい。
玉ねぎなんて輪切りだとほぐれちゃうから、串を通したりと下ごしらえも面倒。
だったら野菜はムリに焼かず、この際ナシにしちゃいませんか?
どうしても野菜がほしいという場合は、先ほど紹介したレシピでとったり、ここも自宅という地の利をいかし、サラダとして食べるのが◎だと思います。
ヘッドライト、ランタンはあったほうがよい
夕方から夜にかけてBBQをする場合は、ランタンやヘッドライトがあると便利です。
暗くなると家の窓からの光だけでは足りず、特に手元の七輪が見えにくい場合もあります。
かといって大仰なライトをガッツリ用意するのもアレですよね。
ランタンなら100円ショップの電池式でも十分。またウチの場合、ヘッドライトに関してはキャップのツバにセットできる簡易なものを利用しています。
炭の火力、やっぱハンパない
今回は夕方の4時頃から火おこしを始めて、夜の7時頃まで楽しんだ自宅BBQでした。
見ていただきたいのが炭の様子。
都合3時間ほどたちましたがまだ赤々としています。この間「追い炭」は一切していません。この火力こそ七輪をオススメしたい最大の理由です。
替え網は用意する? しない?
ウチでは面倒くさいので網を替えずにそのまま最後まで通しています。
ホルモンなどを大量に焼かなければ網につく焦げはそれほど気になりません。
ホイル焼きなどを併用すればなおさらでしょう。
とはいえ、友達や彼女を招いたとき替え網があるとBBQ巧者に見えてスマートです。替え網は1枚くらい用意しておくとベターですね。
最後のお片付け
残った炭は火消しつぼに入れて密閉し消火します。この残り炭は次回の熱源の補助として使えますので取っておきましょう。
七輪の中に残った灰はそのまま一晩置いた後、ウチでは肥料として庭にまいています。
自治体によっては「燃えるゴミ」として捨ててもよいようなので、そのあたりはお住まいの役所のHPなどでご確認いただければと思います。
脂と焦げで汚れた金網ですが、スポンジなどで掃除すると一発でスポンジがダメになってしまいます。ウチでは丸めたアルミ箔でガリガリと削り洗っています。
気にならなければ網はこれ以降も何度か使えますが、100円ショップでも売っている安価なものなので、毎回新品を使ってもいいでしょう。
ネットで他の掃除のやり方がないか調べてみると、「BBQ後に網にアルミ泊を敷きつめて少し時間をおく」や、「火のついた炭を網に乗せる」というものがありました。
要は網の付着物を完全に焼き切って、灰にしてしまえば簡単に掃除ができるというアイデアです。次回はこの方法を採用しようと思っています。
自宅BBQの手引き、いかがだったでしょうか?
七輪は地面に直火するわけではないので、自宅の庭で気軽に楽しめます。
ただ多少の煙はでますので、楽しむときはご近所への配慮をお忘れなく!
書いた人:飯炊屋カゲゾウ
1974年生まれの二女一男のパパ。共働きの奥さんと料理を分担。「おいしいものはマネできる」をモットーに、料理本やメディアで紹介されたレシピを作ることはもちろん、外で食べた料理も自宅で再現。家族と懐のために「家めし、家BAR、家居酒屋」を推進中。「双六屋カゲゾウ」名義でボードゲーム系のライターとして活動中。「子育屋カゲゾウ」名義で育児ブログも更新中。
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