東京都台東区池之端で昨年閉館した旅館「水月ホテル鷗外荘」の敷地内にある文豪・森鷗外(1862〜1922年)の旧邸が、鷗外にゆかりの深い根津神社(文京区)に移築されることが決まった。今年は鷗外没後100年。「由緒ある建物をなんとか残したい」と奔走してきた同旅館おかみの中村みさ子さん(65)は「後世に残っていくことになり良かった」と胸をなで下ろしている。(浜崎陽介)
◆70年以上宴席で使われた「舞姫の間」
太い木の梁や柱、ねずみ色の瓦屋根が、明治の雰囲気を伝える。旧邸は築130年以上の木造平屋で、延べ床面積は約120平方メートル。鷗外が最初の妻である赤松登志子と1889年5月から住み、小説「舞姫」などを執筆した。翌年9月に長男が生まれたが、11月には登志子と離婚。鷗外は離婚直前に文京区に転居した。
1946年、旅館の創業者が隣接する旧邸を買い取った。邸内の座敷は「舞姫の間」と名付けられ、70年以上にわたって宴席などで利用されてきた。全国から鷗外ファンやツアー客が、たびたび見学に訪れたという。
ところが、新型コロナウイルスの流行により、宿泊客が途絶え、2020年5月末に旅館を一度閉館した。旧邸の移築先を探しながら、屋根の修繕費を募るクラウドファンディング(CF)を実施。移築先は見つからず、旧邸を維持したいと21年5月に旅館を再開したものの、客足は戻らず同年10月に再度、閉館した。
◆移築先も鷗外と深い縁
移築先の根津神社...
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