このページの本文へ

前へ 1 2 次へ

Windows Info 第247回

Windows 10におけるキーボードの秘密

2020年10月25日 10時00分更新

文● 塩田紳二 編集● ASCII

  • この記事をはてなブックマークに追加
  • 本文印刷

 PCのキーボードは、現在に至るまでのベースとなったIBM PCの頃から大きく変わっていない。いまだにPS/2コネクタを持つマザーボードも存在し、変換コネクタを使うと当時のIBM PCのキーボードを接続して利用できる。

 一方で今の時代は、USBやBluetoothといった接続方式を使うキーボードも存在する。あらためてWindowsのキーボードはどうなっているのかを見ていく。今回はユーザーがキーボードを押してから、アプリケーションにそれが通知されるまでを概観する。各所に細かい話はあるのだが、なるべく全体を見るようにしたい。

Windowsのキーボード入力の仕組み。USB/BluetoothでPS/2の大きく2つのハードウェアに分けられ、双方が押されたキーをWindowsスキャンコードで表現して、kbdclass.sysで処理する。この時点では、どのキーも単なるコードでしかないが、その後、レイアウトDLLを使い、仮想キーコードに変換されるとき、言語、キー固有の処理がされる

キーボードのハードウェアは
大きくPS/2とUSBで仕組みが分けられる

 まず物理的なキーボードだが、現在では大きく2つに分けることができる。それは、USBキーボードとPS/2キーボードだ。この2つはハードウェアが違うし、キーの表現方法も違う。USBキーボードは、USB HID(Human Interface Device)であり、レポートという形式でキーの状態を報告する。

 キーボードのレポートでは、その時点で押されているキーをすべて列挙するだけで、Ctrl/Shift/Altといった「修飾」キーの処理は、すべてソフトウェア側に任されている。また、BluetoothキーボードはUSB HIDの定義を利用しており、コントローラーや伝送プロトコルは違っていても、同じHIDレポートを送信するようになっている。

 PS/2キーボードは、IBMのPS/2シリーズで採用されたキーボードのインターフェースである。端子自体には違いはあるが、基本的には初代のIBM PC~PC/ATまでとほぼ同等で、変換コネクタ経由で基本そのまま使える。ここでは、初代IBM PCからのPCキーボードとPS/2キーボードをまとめて「PS/2キーボード」と総称する。

 PS/2キーボードは、キーボードユニットとPC本体がケーブルでつながっており、その間の信号線を少なくするため、信号をシリアル伝送。キーボード側、PC側にそれぞれコントローラー(1チップマイコン)が存在する。キーボードケーブルの信号線は双方向で、PC側からキーボードにコマンドを送って設定を変更できる。このとき、キーボードケーブルを流れるコマンドで押されたキーを通知する。このキーの表現を「スキャンコード」という。

 ただし、キーボードのスキャンコードは広い意味があり、たとえば、その定義の一部をWindowsが利用している。そこでキーボードから送られるスキャンコードを「メーク/ブレーク(スキャン)コード」などとして区別することがある。メーク/ブレークは、キーが押された/離された、という2つの状態を示す言葉。電子回路のスイッチが「つながった」「離れた」を意味する英語である。この「メーク/ブレークコード」は、キーが押されたとき、離されたときにそれを示すコードが送られる。

 このスキャンコードには大きく3種類がある。それぞれ、Scan Code Set 1/Set2/Set3と呼ばれている。Set 1は、初代IBM PCからPC XTのIBM PCキーボード(86キーボードやXTキーボードなどと呼ばれる)まで使われていたもの。Set 2は、IBM PC/ATの拡張キーボード(Enchanded Keyboard、101キーボードなどとも)で採用されたスキャンコード、Set 3はPS/2で採用されたスキャンコードだ。現在の標準はSet2。仕様上、PCからキーボードにコマンドを送ってScan Code Setを切り替えることができるようになっているが、他のSetに切り替えができるかどうかはキーボード次第で、Set2が出力できれば、Windowsの利用は問題ない(はず)。

 PS/2キーボードの特殊なものとして、ラップトップなどの内蔵キーボードがある。基本的には、PS/2キーボードと同じなのだが、分離されることがないため、「組み込みコントローラー」と呼ばれる部品でキーマトリクスのスキャンとスキャンコードの出力するようになっているものが多い。

キーボードのレイアウトを
ハード的に判別できないのでOS側が管理する

 キーボードには国際化のために多数のバリエーションがある。日本語では、106キーと呼ばれるタイプ(OADGで定義したことからOADGキーボードと呼ばれることもある)が普及し、これは101キーに対して、変換/無変換/カタカナ・ひらがな(俗に言うカナキー)などの5キーを追加したもの(全角/半角キーは101のチルダキーを利用しているため含まれない)。今はWindowsロゴキー(正式には左右2つ)やメニューキーも標準的に搭載されるため、109/108キーが標準的だ。

 スキャンコードは、86キー、101キーのキートップをベースにキーに番号を割り当てたものだ。元々はキートップ文字に対応していたが、国際化の過程でキーそのものを区別するコードになり、OS側で、キーボードのレイアウト(キートップの並び、どのキーを押したらどんな文字や機能になるのかということ)を定めて、スキャンコードを文字コードなどに変換している。

 こうしたバリエーションについては、キーボードからは2バイトのIDを返す仕組みには一応なっているのだが、IBM PC/ATのハードウェアが互換機として普及していく過程でID割り当てを誰も管理しなかったため、すべてのキーボードを明確に区別することが困難になった。

 そこでキーレイアウトに関しては、OS側で面倒を見ることになっている。USBキーボードは、デバイスに関する情報を返す機能を持っており、メーカー名やキーボード名を取得し、これを使ってレイアウトを判別することは可能なのだが、OS側でレイアウトを管理していることから、これに従うことになっている。昔からのユーザーは、ときどきWindowsやデバイスドライバーのバグなどで、日本語キーボードが英語版配列になった経験をお持ちの方もいるだろう。これはソフトウェアだけでレイアウトを指定しているからである。

 Scan Codeは、キーを押したときに発生するメークコードとキーを離したときに発生するブレークコードからなる。セットによりブレークコードの表現が違い、Set 1は上位ビットを1にし、Set 2、Set 3は、メークコードの前に0xF0(16進数)を付ける。左右に同じキーがある場合、片方には、0xE0を付けどちらのキーが押されたのかを区別する。このため、アプリケーションで利用するショートカットなどでは、左右にあるAltキーやCtrlキーを区別するものがある。

前へ 1 2 次へ

カテゴリートップへ

この連載の記事

注目ニュース

ASCII倶楽部

プレミアムPC試用レポート

ピックアップ

ASCII.jp RSS2.0 配信中

ASCII.jpメール デジタルMac/iPodマガジン

pFad - Phonifier reborn

Pfad - The Proxy pFad of © 2024 Garber Painting. All rights reserved.

Note: This service is not intended for secure transactions such as banking, social media, email, or purchasing. Use at your own risk. We assume no liability whatsoever for broken pages.


Alternative Proxies:

Alternative Proxy

pFad Proxy

pFad v3 Proxy

pFad v4 Proxy