2025年2月28日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年2月28日

 2月5日付ニューヨーク・タイムズ紙は、フィリピンのサラ・ドゥテルテ副大統領に対する弾劾決議が採択された、次期大統領を狙う彼女の政治的野心は大きく傷ついた、一方米国にとって戦略的に重要なアジアの同盟国の政治的緊張が高まることを憂慮する、との解説記事を掲載している。概要は以下の通り。

議会下院での弾劾訴追を受け、声明を発表するサラ・ドゥテルテ副大統領(ロイター/アフロ)

 サラ・ドゥテルテ副大統領は数百万ドルにおよぶ公的資金の不正使用とマルコス大統領夫妻及び従兄弟であるロムアルデス下院議長の暗殺を企図したとの4つの訴状に直面していた。

 2022年、サラ・ドゥテルテとマルコス両氏は大統領選挙で手を組み、国民の団結を約束して選挙に大勝した。しかしながら当時からそのパートナーシップは便宜的なものとみられており、程なく破綻した。

 副大統領は自身の汚職を否定し、弾劾は政治的動機によるものであるとして反発したが、このような見方は多くのフィリピン人にも共有されている。一方マルコス大統領は、弾劾プロセスは副大統領の政治キャリアを終わらせかねないとして、自らのこのプロセスへの関与を否定している。

 フィリピン大学のアルゲイ政治学部長は「これはフィリピン全体を政治的カオスに引き摺り込むもの」であり、「米国と異なり、サラ・ドゥテルテには副大統領としての重大な権能がある訳ではなく、将来のサラ・ドゥテルテ大統領の誕生を阻止するとの政治的動機しかない」と述べている。

 サラ・ドゥテルテはマルコス大統領の任期6年が終わる28年の大統領選挙に出馬することを既に公に宣言している。

 ドゥテルテ家とマルコス家は米国と中国との関係について見解を異にしている。サラの父親であるロドリゴ・ドゥテルテ前大統領は在任中に中国との関係に軸足を置き、一方マルコス大統領はワシントンとの緊密な関係を重視している。

 この弾劾の動きは2つの一族とその支持者の間の反目を危険なほどエスカレートさせている。

 2月5日午後、下院では306議員のうち215議員がドゥテルテ副大統領の弾劾に賛成し、本会議場は拍手喝采に包まれた。

 副大統領は議会が開会する6月以降上院において弾劾手続きに服することになる。弾劾決議の成立には3分の2の賛成が必要であり、ドゥテルテ派の多い上院においてこれが成立する可能性は低いと専門家は分析する。


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