2025年2月28日(金)

世界潮流を読む 岡崎研究所論評集

2025年2月12日

 テキサス大学のグレイテンズ准教授とカーネギー国際平和財団シニアフェローのカードンが、Foreign Policy誌(電子版)に1月13日付けで掲載された論説‘Vietnam Wants U.S. Help at Sea and Chinese Help at Home’で、ベトナム、米国、中国の関係を論じている。

 この論説は、「ベトナムにとって、米国との安全保障分野の協力強化は中国の覇権を阻止するために必要である一方、中国との協力強化は政治体制維持のために必要である。米国はその点をよく理解し、ベトナムとの協力関係強化を過大評価すべきでない」と指摘している。要旨は次の通り。

南シナ海での安全がベトナム外交を左右する(Quang Ho/gettyimages)

 過去4年間、バイデン政権はベトナムとの防衛関係強化のために多大な投資を行ってきた。2023年9月、バイデンがベトナムを公式訪問し、「包括的戦略パートナーシップ」を発足させ、米越関係は新たな高みに達した。

 米国にとって、ベトナムとの防衛協力は、インド太平洋における「安全保障上の利益」となり、特に南シナ海での中国の活動に対抗するために重要である。

 しかし、国防関係だけに焦点を絞ると、米越関係の真の姿について誤解を招きかねない。ベトナムには自国の利益があり、米国が理解できないような方法で道を切り開いてきた。重要なことは、ベトナムの指導者たちが中国との結びつきをさらに深めていることだ。

 ベトナムの米中両国に対する二重の働きかけは、米国との関係が偽りということではない。ベトナムは、主権および南シナ海の権益に対する中国の具体的脅威に対抗するため、積極的に米国の支援を求めてきた。ただし、パートナーシップは狭い範囲にとどまっている。

 ベトナムの指導者にとって決定的な重要課題(政権生き残り)について、中国は大きな影響力を有する。中越の緊密な関係が米国の影響力を制約することは大いにありうる。

 ベトナムにとり「中国と組めば、国を失うかもしれない。米国と組めば、政権を失うかもしれない」とのジレンマが、米中両方と関係を結ぼうというハイブリッド戦略に繋がっている。米越関係の強化は、ベトナムが中国との関係を犠牲にすることを意味しない。対外防衛と海洋安全保障に重点を置く米越関係とは異なり、中越協力はベトナム共産党政権を支えるためである。


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