2014年2月9日日曜日

職業別の生涯未婚率

 生涯未婚率という指標をご存知でしょうか。読んで字のごとく,生涯,未婚の状態にとどまる者がどれほどいるかです。

 これは,全人口の人生を死ぬまで追跡して出すような,込みいったものではありません。生涯未婚率としては,50歳時点の未婚率が用いられます。この年齢以降は,結婚する者はほとんどいないであろう,という仮定に立つわけです。

 なお,多くの官庁資料の年齢統計は5歳刻みのものですが,5歳刻みの統計から生涯未婚率を出す場合,40代後半と50代前半の未婚率を平均するという便法がとられます。

 私は,この方式に依拠して,男女の生涯未婚率を職業別に計算してみました。こういうデータは見かけないので,興味を持った次第です。正規・非正規の影響を除くため,正規職員男女の率を出すこととします。資料は,2012年の総務省『就業構造基本調査』です。
http://www.stat.go.jp/data/shugyou/2012/index.htm

 男性の教員でいうと,40代後半の未婚率は7.1%,50代前半の未婚率は7.6%です。よって,男性教員の生涯未婚率は,これらを均して7.3%と算出されます。ちなみに女性教員は16.1%なり。女性は男性の倍以上ですね。

 では,上記資料から計算した,全職業の正社員男女の生涯未婚率をみていただきましょう。下表をご覧ください。「**」は,該当者がいないため,率が算出不能であることを意味します。


 生涯未婚にとどまるであろう者の割合は,職業によって大きく違っています。医師などは,男性と女性の差がスゴイです。男性はわずか2.8%ですが,女性は35.9%にもなります。男性は36人に1人ですが,女性は3人に1人です。

 高収入ということがあるでしょうが,激務なので,家庭生活との両立が難しいという事情もあるかと。また,ある方が教えて下さったところによると,大病院の医局などは,妊娠した女性医師へのマタハラがすさまじいそうです。仕事か家庭か。医師は,こうした選択を迫られる度合いが高い職業でいえるでしょう。生涯未婚率のジェンダー差,さもありなんです。

 ほか,情報処理技術者も性差が大きくなっています。いわゆるIT技術者ですが,この業界では,正社員女性の半分が生涯未婚にとどまると見込まれます。音楽家・舞台芸術家などは,男女とも生涯未婚率が高いですね。

 職業別の正社員男女の生涯未婚率を視覚化してみましょう。横軸に男性,縦軸に女性の生涯未婚率をとった座標上に,男女双方の率が分かる62職業をプロットしてみました。点線は,全職業の値です。


 右上は,男女とも生涯未婚率が高い職業ですが,高度な知識・技術を要する専門職が多いですね。出版社の編集者とかも高いんだなあ。

 しかし,最も注視すべきは,やはり医師の特異性でしょう。諸外国でも,こんな位置になるのでしょうか。これから先,高度な専門職への女性の参入が進んでいくと思われますが,そのことが未婚化・少子化の進行をもたらすのではと懸念されます。そもそも,前者は後者の抑制要因になるものであり,その逆であってはなりません。

 指導者層や専門職の女性比率を*%にしようという数値目標が掲げられますが,形の上でそれを実現すればよいという単純な話ではなさそうです。
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