#AQM

あ、今日読んだ漫画

2023年に読んで面白かった漫画 59選

★★★    面白かった

★★★★   すごい好き

★★★★★  愛してる

★★★★★★ 人生のお供

この記事では★5以上を並べます。

同じ数同士の順番は、単純に読んで記事にした日付の順なので他意はないです。

読んで面白くなかった漫画は、わざわざDISるのもなんなので記事にしてないです。

その他、世の中には自分が読んでない漫画の方が圧倒的に多いです。

前回はこちら。

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1年分まとめて、寸評は巻ごとじゃなくて作品ごとに。

諸々コミでこんぐらい。長くてすいません。

あとで読んでください。

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投票や合議で広く意見を募りバランスを取る、多くの漫画賞などと違い、ある一人の人間が読んだ漫画が面白かった、というだけの話です。

多かれ少なかれ、

「ブログ主のアンテナが低かったり好みが偏ってたりのせいで、バランスが悪いラインナップだ」

と思われることでしょう。

ご自身の持つ好みとの違いを比べてみたり、たまに重なっていたり、そうした偏りをお楽しみいただければと思います。

『海が走るエンドロール』5巻より(たらちねジョン/秋田書店)

それがきっと、私の個性であり、あなたの個性なのでしょう。

予防線終わり。

じゃあ、そういう感じで。

 

1本目

★★★★★★

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最終巻の表紙も半ケツなぐらい、チラ見えする表紙や誌面のアクの強さ・癖の強さ・エグ味の強さ、「どう考えても頭のイカれた変態が描いてる漫画」と敬遠してるうちにネット連載がエラい盛り上がりを見せる中、自分は独り乗り遅れてしまって、結局完結してから大人買いしてイッキ読みをしました。なので自分とこの作品のお付き合いは2日間ぐらいです。

一昨年の藤本タツキの『ルックバック』と併せて、これほど優れた作品の連載を、集英社が「ジャンプ+」というネットで誰でも無料で読める媒体でタダ読みさせたことは、

「週刊少年ジャンプ本誌の葬式」

と言うのはまだ時期尚早としても、

「週刊少年ジャンプ本誌のお通夜に向けて、集英社が喪服に着替え始めた」

ぐらいは言っても良いかもしれません。

『ハイパーインフレーション』4巻より(住吉九/集英社)

「NOT王道」以上に、6巻という巻数由来の作品の短さ・接触時間の短さ故に、この作品はあるいは『ドラゴンボール』『スラムダンク』『ワンピース』などのジャンプ史上の伝説的名作たちほどには愛着を持たれず、将来語られず、忘れられていくのかもしれません。

近年惜しまれつつ完結していったジャンプ印の作品群を見るに既にその予兆はありますが、漫画を巡るビジネスモデルの変革に果敢に取り組む集英社には是非、

「キャラ人気を大爆発させてロングテール狙い」以外のやり方、

現状の打破を模索する営みを、継続されることを期待しています。

この作品のように、作者が全力疾走で描きたいことを描ききった美しさ、後年の新規読者が手に取りやすい6巻程度で完結する構成の美しさを、ぜひより大きな商業的な成功にも繋げて、漫画家も出版社も読者も今より更にWin-WIn-Winに、誰もがより良く漫画に関われるような仕組みを、ぜひ生み出していただきたいと願い、心から応援しています。

自分も漫画と全然関係ない自分の仕事を、そういうアレでがんばろうと思いますので。

パッションと合理主義の融合、利害が競合していてもより大きな視点で共栄できる道を模索すること、裏の裏・先の先を見通すまで考え続け動き続けるのをやめないこと、サバイブすること。

この漫画でルークがやって見せたことって、そういうことでしょう?

 

 

★★★★★★

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人間に化けて暮らすたぬき女子高生"ふみ"を中心に、彼女の家族の化けたぬき一家の家庭生活や、友達のキツネ女子・ネコ女子、コウモリ女子との学園生活。

4~6コマの変則ページの日常コメディ、フルカラーで絵本みたいな画風。

「女子高生日常コメディ」とカテゴライズすることも可能です。

キュートでポップでアートな画面、絵の可愛さに甘えずにゆるくてシュールなネタ、たまに哲学、大喜利っぽいネタも。打率も高いけど長打も多い。

『ぶんぶくティーポット+』8巻より(森長あやみ/まんだらけ)

日常ギャグコメディに垂らしたたった一滴の「風刺の毒」で、癒して笑わせると同時にほんの少しだけ、怒り・悲しみ・失望・愚痴などのマイナスの感情とその背景にある世界の理不尽に対して、本当にほんの少しだけ読者の目を向けさせます。

その「シニカル」「ニヒル」と呼ぶにはあまりに婉曲で押し付けがましさのない奥ゆかしさが、自分はとても知的で優しいものであるように感じていました。

日常コメディなので自分が死ぬまで続いて欲しかった。

完結してこれ以上ページが増えないことはとても残念で寂しく思いますが、自分にとってこの先何度も読み返して何度も新たな気づきを与えてくれるであろう、考え方・振る舞い方・漫画の読み方の指標の一つになってくれるであろう、

★★★★★★ 人生のお供

の漫画です。

この漫画が大好きでした。

 

 

★★★★★★

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迷宮の主"狂乱の魔術師"によって竜にされた妹・ファリンを追って、冒険者ライオス一行が途中で倒したモンスターを美味しく調理して食べながら下層を目指してダンジョンを進んでいく、RPG世界観の空想グルメ・ファンタジー。

冒険の終わり、最後の大仕事。

最後の最後まで『ダンジョン飯』、おかしなものを料理して、食っていました。

自らもまたいつか誰か(何か)に食われて生命と食の輪廻に加わり繋がることで、殺して食うことの罪もまた赦されている、あるいはもともと罪などではなかったのかもしれない営み。

いつか死ぬこと、それまで生きること、そのために食べること。

『ダンジョン飯』14巻より(九井諒子/KADOKAWA)

ラスボスとの決着がついて緊張が緩和され、この作品らしくコミカルな最終巻でしたが、ただ「良いエピローグだった」で片付けるには含意に富みすぎる、「生命への」というよりは「生命が巡る営為への」愛おしさに満ちた描写。

なによりこれ以上ないハッピーエンドの大団円。

彼らがその後の人生をどう送ったのか、まるで「空想する楽しさ」を空想上手の作者からお裾分けしてもらったかのような、良いエンディングでした。

 

 

ここから★5。

★★★★★

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TV放送40周年を迎えたTVアニメ『太陽の牙 ダグラム』のコミカライズ。

Wikipediaによると、ロボットものアレルギーだった高橋良輔は、『ガンダム』を観てロボットものへの理解を示し、本作の制作に繋がったんだそうです。

コミカライズは『FRONT MISSION DOG LIFE & DOG STYLE』、『機動戦士ガンダム サンダーボルト』の太田垣康男。

ロボットもののシリアスでハードでハードボイルドなコミカライズに俺の中で定評がある作家で、無骨なCBアーマーのデザインも相まって、基礎が1980年代の作品とは思えない、大迫力かつかっこいいメカ描写・戦闘描写。ちなみにフルカラー。

『Get truth 太陽の牙ダグラム』2巻より(太田垣康男/高橋良輔/小学館)

時代性を超越してる太田垣ナイズですが、モチーフが反政府革命・ゲリラ闘争というところ、原作の時代性を感じます。

アニメや漫画のコンテンツは90年代以降「体制側」を主人公にした作品が多くなるイメージですが、基が80年代前半の『ダグラム』は、まだ60〜70年代の若者の体制への怒りと、腐敗・堕落する前の革命の夢の残滓を引きずっていて、それが令和のいま読むとむしろちょっと新鮮にすら感じます。

主人公のクリンの若者らしい正義感と怒りと衝動、パルチザンの連帯と情熱。殺し合いが生む妄執。

自分は原作未履修ですが、美しくロクでもないエンディングを迎える予感が、既にプンプンします。

最近の作品では「滅びの美学」とかあんま描かれなくなっちゃいましたもんね。観てなかったけど『鉄血のオルフェンズ』とか、そういう感じだったのかな?

 

 

★★★★★

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巨大学園都市「ユーカリの葉学園」に高校の新1年生として入学した少年・猫田くんは、珍妙な部活勧誘チラシに導かれてたどり着いた校内の花壇のど真ん中で眠る珍妙な美少女・蟻ヶ崎千歳と出会う。

蟻ヶ崎さんは学校非公式の団体、SOS団じゃなかった「放課後ひみつクラブ」の設立を宣言、そのあまりの珍妙ぶりに放っておけなくなった猫田くんはこれに入部する。

かくして、巨大学園都市「ユーカリの葉学園」の秘密を探し、暴き、そして放置する二人の活動が始まった…という学園日常ギャグコメディ。

『放課後ひみつクラブ』1巻より(福島鉄平/集英社)

オールド少女漫画リスペクトな作風と言えばいいのか、一コマの中でボケてツッコんで更にボケてツッコんで、とセリフを幾重にも重ね、キャラの皆さん察しがいい上にネームの進行にとても協力的で、とにかくテンポが良い漫画。

人形や妖精のように可憐で華麗なキャラデザのヒロインが、自己中心的というよりきまぐれで自分勝手で人の話を聞かない性格ながらルックスの良さで全てが許され、ほっとけない系やれやれ系の狂言回しの少年、という『ハルヒ』みたいな建て付け。

「変な漫画が始まったなあ」という印象ですが、妙な心地よさ?中毒性?というか、描いてる方も読んでる方もラリってるというか。

 

 

★★★★★

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ボーイミーツガールから始まるコスプレ青春もの。それぞれの葛藤を乗り越え界隈を騒がすコスプレチームとなり、四天王と呼ばれる頂点のコスプレイヤーたちにも認知されるように。

新一年生の新キャラ、ハイスペお嬢様・華 翼貴(はな つばき)も早々にコスプレ部に馴染み、近刊は「最後の四天王」編。

『2.5次元の誘惑』18巻より(橋本悠/集英社)

テーマに相応に禅問答なネームですが、「『顔が良い』は七難隠す」ではないですけど、都度アップになるキャラたちが何しろ顔が良くて画面が華やかなのに助けられている感もあります。

「気の持ちよう」の埒外で苦悩と葛藤の積み重ねだけがたどり着ける境地が描かれると共に、それを誰かから受け継ぎ誰かに受け継いでいく営みもが描かれて、なんというかもう、コスプレに対してもはや「コスプレ道」と呼ぶに相応しい求道的な展開。

それがラブコメ要素にも絡み、青春もの要素にも絡み。

そんなリリサのコスプレ道もさることながら、みかりんを、みかりんの片想いに救いを!

 

 

★★★★★

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幼馴染の鬼ボーイ・ミーツ・魔女ガール・アゲインに、ニコの使い魔となる同居仲間が守仁以外にも天狗、狼男、吸血鬼と増えて、同居日常ギャグ学園ラブコメたまにシリアスバトルな漫画に。

シリアスなバトルもので人気を博したカッコよ可愛いキャラたちの、ギャグだったり緩かったりする日常や恋愛・ラブコメをもっとじっくり見てみたい、というのは人気作であれば多かれ少なかれ発生して、多くの場合その役割は公式スピンオフや二次創作に託されることになるんですが、

『ウィッチウォッチ』12巻より(篠原健太/集英社)

「一次創作内で自分で全部やっちゃおう!」

「バトル・ギャグ・コメディ・ラブコメ・日常・ホラー・ファンタジー、少年漫画のジャンルを全部一作品内でやっちゃおう!」

という作品。

『アクタージュ』と『チェンソーマン』きっかけに「週刊少年ジャンプ」の電子定期購読を契約し続けてるんですけど、最近はこの作品がジャンプで一番楽しみ。

ちょっと絵・ネタ・展開の幅と密度の面で「本当に週刊連載の漫画か?」って思っちゃいます。

今どき珍しい、年間6冊刊行のハイペース。たまには休んで、ご自愛くださいね。

 

 

★★★★★

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動物たちと三頭身の小人(こびと)たちが、互いに言葉を通じ合って社会を形成して暮らす、童話のような世界観。

で、一緒に暮らす2人の女の子を主人公にした日常もの。アニメ化済み。

童話やお伽話に喩えるには生活感がありすぎるけど、その生活感の醸し出す詩情、特に手慣れた料理と食事風景の描写は特筆もの。

「珠玉の」という形容がこれほど似合う漫画作品もないでしょう、珠玉のエピソード群。描かれた画面の情報量、それを支える技巧と作業量、細部にまで張り巡らされた空想力。

『ハクメイとミコチ』11巻より(樫木祐人/ KADOKAWA)

大工・建築のハクメイと料理・服飾のミコチを中心に、モノづくり、クリエイターのお話でもあるんですよね。

描かれる建物・料理・衣服・楽器・道具・歌・酒・店、その一つ一つの背後にそれを創った人の営み、こだわりと愛情の物語の存在を感じさせ、読者の空想力を刺激する拡がりを持った画面。

謎が謎を呼ぶ大事件、胸がときめく恋、抱腹絶倒のギャグ、血湧き肉躍るバトルやアクション、もちろんエロも殺しも、およそ売れ線とされる要素なんか何もなく、暮らしとその中のちょっとした事件や小さな冒険が描かれているだけの漫画が、こんなに面白く、こんなに美しい。

毎年1月の新刊発売が恒例になっていて、もうすぐまた新刊が読めるのがとても楽しみ。

こんなの、たった数百円で買って読めちゃって、本当にいいのかな。

 

 

★★★★★

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『かぐや様』の赤坂アカの作話を『クズの本懐』等の横槍メンゴが作画、という期待作。

要約すると二周目人生は伝説のアイドルの双子の子どもだった転生チートな芸能界サクセスストーリー、サスペンス・ミステリーと復讐劇付き。横軸の積み重ねが縦軸に密度高く有機的に絡んでいって、エピソードを単純に「スタンドアロン」と「コンプレックス」に分けられない、惹きつけられる作り。

アニメやその主題歌も大ヒットし、一読者としてのミクロ視点で感じる面白さだけでなく、商業マクロでも2023年を代表するコンテンツでした。

「【推しの子】」10巻より(赤坂アカ/横槍メンゴ/集英社)

「芸能界の裏側」っぽいことを描き、業界の構造や体質のみならず、その消費者・大衆をも批判の対象としてきた2023年の作品の道義的責任として、ジャニーズ事務所のスキャンダル問題を斬る章が在っても、バチは当たらないだろうとは思います。

同時に『かぐや様』実写化映画の主演にジャニーズ事務所のタレント(当時)が起用された「利害関係者」の赤坂アカには、ジャニーズ批判は無理だろうな、とちょっと意地悪な見方で見ていました。

しかし実際には、ジャニーズ事務所の問題が公になった時点で、本作の連載は既に最終章であろう「映画編」に突入していたため、そんなエピソードを差し込む隙間が物理的に在りませんでした。「斬らない」ことをもって本作を「弱腰」「ダブスタ」「ポジショントーク」「推しの子はジャニーズだけは批判できない」と批判するのは、ちょっと理不尽で不公正でしょう。

ジャニーズ事務所問題が公になった時、本作のモチーフとして取り上げるには既に手遅れだった赤坂アカは、ホッとしたでしょうか。それとも「社会問題化した芸能界の時事ネタ」を作品に取り込み損ねたことを残念に思ったんでしょうか。

機会があったら訊いてみたいものです。

ややこしいことに、映画『かぐや様』の主演を務めたタレントは、今年ジャニーズ事務所を退所した、とのことです。

 

 

★★★★★

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岩倉美津未(いわくら みつみ)、15歳(その後16歳)。

「石川県のはしっこ」、学年8人の中学から、東大法学部卒・中央省庁官僚を経て地元の市長となる大志を抱いて、叔父の住む東京の「高偏差値高校」に進学。

同級生が人数8人の地元の中学とはまったく違う、大都会・東京の高校の人間関係。クラスメイトたちの「珍妙な田舎者」という視線が突き刺さる、順風満帆とは言えない高校デビュー・東京デビューと、思われた、が。

東京のクラスメイトたちは思ったより優しい良い人たちだった…

『スキップとローファー』9巻より(高松美咲/講談社)

「楽しい日々が始まったよ」「きっと素敵な高校生活が待ってるよ」

と、まるで誰かを励ましているかのように、基本的に多幸感に満ちた読んでて楽しい漫画ながらも、みんなそれぞれしんどい思いをして傷ついて、でも戦うでもなく、逃げるでもなく、乗り越えるでもなく。

「青春がもたらす傷」をそこに居る友人であるかのように共に生きる高校生活。

9巻、2年生の夏休みは、高校の友達をみんな引き連れて地元に帰省。美津未はこの夏のこと、一生忘れないだろうな。

みんなで海で遊ぶシーン、おじさんなのでBGMにサザンを流したくなりますが、

真夏の果実

真夏の果実

  • サザンオールスターズ
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

あれでしょ、今時の若い人はオレンジレンジとかなんでしょ?

 

11本目

★★★★★

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ジャンプSQ連載の美少女オバQもの。祝福あれ。

「人類社会・日本社会の初心者」の美少女との同居・居候ものコメディ。類似の作品は枚挙にいとまがありませんが、動きと間と会話芸が中心のコメディの雰囲気は、むしろ冨樫義博の『レベルE』の最初のエピソード、「バカ王子・地球襲来編」が最も近いかもしれません。ありゃ美少女ではないですけど。

『堕天使論』2巻より(くろは/集英社)

美少女オバQは日常コメディが中心ですが、「(主に外の世界の)どこから来たか」「(なにしに)なぜ来たか」で話の縦軸が変わります。

今回の美少女オバQヒロインに持たされたのは、「天界から追放されて」、「肉の体を持つ人間の愛を理解」し、「愛を知って天界に復帰」したいという特性と動機。

馬鹿馬鹿しくて可愛いギャグラブコメですが、世界最大級の伝統的宗教をモチーフにしているだけに、くだらない切り口からたまにクリティカルに深い命題に一瞬触って逃げていく、ピンポンダッシュのような漫画。

「人の愛」、特にラブコメ漫画作品として描かれる「性愛」と、「神の愛」とを分かつものは、一体なんだろうか。

祝福あれ。

 

 

★★★★★

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彼女が最初に携わった仕事は、ぬいぐるみのようにキュートな見た目を持ちながら人類に害を為す性質を持つ原生生物・プクルを、防疫上の観点から絶滅させることだった…

という、未来で宇宙なSFもの。

作品タイトル「地球から来たエイリアン」は地球人類の日本人を指します。

『地球から来たエイリアン』3巻より(有馬慎太郎/講談社)

寄ってたかって若い女をいじめてるだけにも見えかねない、精神的にハードな内容の業務研修。何が描かれたかと言えば、『ナウシカ』では描かれることのなかった、「王蟲を見殺しにするナウシカ」の話です。

作品は完結しましたが、みどりの視点を離れてでも、もう少しだけ惑星・瑞穂の儚く美しい生態系を、ただ眺めていたかった。

残酷で美しくて、見たこともない生物たちがとても愛おしい、「たった3巻で」というよりも「たった1話で」、読んでる方の心をすごいところに連れて行ってくれるすごく面白い漫画だった。素晴らしかったです。

 

 

★★★★★

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元警察官が描き、『パトレイバー』『踊る大捜査線』の香りのするギャグコメディに溢れた日常要素と、生々しくダークネスな事件や人間の側面が同居する奇妙な警察官お仕事漫画。

「第一部 完」は、まあ勝ち逃げですけど、良いやり方だと思います。作者が疲弊したり幸福になれなかったりしたら元も子もないですから。

『ハコヅメ~交番女子の逆襲~』23巻より(泰三子/講談社)

決して手放しで美談として褒め称えられる話ではないんですけど、理不尽な現場で矛盾を抱えながらも誰かのために労を惜しまず働いて社会を支える、カッコ悪くてカッコいいおっさんを描かせたら一級品な漫画だったな、と思います。

いつか続きが読めるに越したことはないんですけど、自分はこの勝ち逃げされた曖昧な感じのお別れも嫌いじゃないので、続きが描かれることが二度となくても、それはそれで。

警察官や漫画家に限らず、すべての職業人が幸せでありますように。

システムの一部とはいえ、最終的には個人ですから。

 

 

★★★★★

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少女漫画の大家・いくえみ綾による漫画家漫画。

若い頃は10代の少女の恋愛ものをずっと描いていたいくえみ綾も、現役作品の他作『1日2回』と並んで中年を主人公にした作品に移行気味。

10代の感性を失った、ついていけなくなったというよりも、自身が中年を経験したことで中年に対する解像度が上がって、その情緒の面白さを発見した、ように見えます。

もともと繊細かつ地味な情緒の機微を描けることが売りの作家なので、ハマってますねw

『ローズ ローズィ ローズフル バッド』1巻より(いくえみ綾/集英社)

こっちも中年なので、「わかるー、解像度高ぇなー」とw 読者と一緒に歳をとっていってんなー。

モチーフは「少女漫画を離れて中年になって少女漫画に回帰したい女性漫画家」で、やはり「体験が作家を通じて作品を創る」ことがテーマになっています。

男が読んでても「ヒロインはなんでこんな男に…理解できない…」って思っちゃうことがない魅力的な男性キャラ、少女〜女性漫画を描く上で大きなアドバンテージだな。

ダメ男気味な奴を描いてもなんか魅力的なんですよね。ヒロインが惚れるのしょーがねーっていう。いくえみ綾の引き出しに「いい男」がたくさんしまってあるというか。

作者のいくえみ綾自身、若い頃から売れっ子でしたけど、円熟というものなのか、読んでるこちらの感性の変化なのか、90年代当時を超えて今まさに全盛期を更新しつつありませんか?という。

 

 

★★★★★

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ファンタジー世界を舞台にしたゆるーいコメディ漫画。

タイトルにも作中のセリフにも「拷問」という物騒な単語が踊りますが、中身はストレスなしのギャグコメディ。半分は実質グルメ漫画。

あとはもう黄金のワンパターンの手を変え品を変えの繰り返し。牧歌的で微笑ましい馴れ合いの世界。登場人物が全員なにかしらポンコツです。

『姫様“拷問”の時間です』11巻より(春原ロビンソン/ひらけい/集英社)

エクスつっこみ頑張ってんなあ。

この作品は読者の心の中のツッコミで初めて完成する作品で、エクスは心の中でツッコめる読者を育てる補助輪のようなもので、読者の「成長(ズレ)」に伴って最近はその補助輪が少しずつパージされていっているんじゃないか。

しかし、エクスという補助輪を外して読者が心の中でツッコめるようになっても、それでもこの漫画は次の意外性と面白さを求めて、ズレ続け、斜め上に登り続けます。

毎日1分ずつズレていく時計のように、こっちがズレた時計に合わせても、それでも更にズレ続けていく世界。

「常識を捏造している」というか、「世界を洗脳している」というか。

最終的にどこに連れて行かれるんだろう、大丈夫なのかなコレ。

 

 

★★★★★

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ラブコメ漫画は数あれど、WEB連載で既読にも関わらず新刊が一番楽しみな作品。

見た目は恋愛ラブコメ漫画ですけど、縦軸の要素としては作者のあとがきのとおり、挫折を抱えて「(自分が嫌いな)陰キャ」だった市川と山田の

「高嶺の花の彼女に(/彼に)ふさわしい自分になりたい」

「(相手に肯定・承認される前に)自分を肯定・承認できる自分になりたい」

の成長がメインで、「くっついた/くっつかない」はその結果論、とも見える描かれ方。

『僕の心のヤバイやつ』9巻より(桜井のりお/秋田書店)

恋仲の進展に注目しがちな読者が思っていた以上に、陰キャぼっちだった市川や、彼と山田の過去の挫折と「自分が嫌い」、その超克・成長って、作者にとってはより真摯に向き合うべきテーマだったんですね。

ラブコメ漫画の「くっついた後の世界」の描かれ方はまだ未発達というか、読んでる読者側にも「くっついた後の青春恋愛ラブコメ漫画に何を期待すれば良いのか」わかってないところが残されていて、イチャラブ日常以外にもまだ新機軸開拓の余地、フロンティアが多く残されているように思います。

私たちは世知辛い現実の再生産を求めて漫画を読んでいるわけではないはずで、イッチと山田の2人にはリアル(現実)とは違うリアリティ(説得力)を伴った、甘い夢をまだまだ見せて欲しいなと思います。

なんでこんな甘々でラブラブの絶頂みたいな多幸感に溢れる巻を読んで、反対にこんなブルーな予感に走ってしまうんだろう。人は幸福の絶頂でかえって不安になってしまうものなのか、ある種のマリッジブルーなのか(違います)、初恋が実らなかったかつての子どもの僻みなのか。

 

 

★★★★★

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「だがしかし」作者の吸血鬼ファンタジーな青春ラブコメ。作品全体を通じてアンニュイとそのアンニュイからの解放が夜を舞台に描かれる。

吸血鬼・キクと眷属志望の少年・マヒルの顛末は、恋の成就と、それに伴う二人の死だった。

コウとナズナの関係は、「眷属」と「両想い」を両立した瞬間に、終わりを迎える宿命にあった…

『よふかしのうた』18巻より(コトヤマ/小学館)

「マヒルとキク」、「コウとナズナ」、表裏であるとしたら、おそらく「表」だったのは「マヒルとキク」だったんじゃないかと思います。『人魚姫』とかそうですけど、人間と人外の恋が悲恋で終わるのは、古典のスタンダードですよね。

優しい、でもコウの願いもナズナの願いも叶わない結末を、予感してしまいます。

自分の想像上の「コウとナズナ」の結末と、「マヒルとキク」の結末、自分だったらどっちが幸せだと感じるだろうかと、ちょっと考えてしまう。

20巻で完結とのことです。

永遠の夜を生きる吸血鬼と、永遠ならざる人の子の恋の物語を、永遠に読んでいたい、でもそれは叶わない、なんて、なんだかメタな話ですね。

 

 

★★★★★

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学年に1人しか児童がいないド田舎の小学校で育った運動神経抜群で天真爛漫な美少女・明日小路(あけび こみち)が、田舎の私立の名門中学に入学して友達を少しずつ増やしながら過ごす日常をキュートに、フェティッシュに。

漫画の文法やお約束を逸脱しているというか無視しているというか、自由気ままに可愛い女の子を描きたいだけの人だと思っていたんですけど。

両親を喪って生き残ってしまった子どもと、彼女とどう向き合ったら良いかわからない子ども、拙く幼く絞り出されるように描かれた、この漫画で初めてかもしれない「哀」と「怒」。

どこか作り物めいた、「天真爛漫で素直な美少女」というよりは蛮勇ゆえに人の心にズカズカ入り込むブリキの人形みたいだった小路が、「哀」と「怒」によって他人を傷つけることへの怖れと同時に、人間の心を手に入れたかのような。

『明日ちゃんのセーラー服』11巻より(博/集英社)

なんつーセリフだよ。

「可愛い女の子をポエミーに描きたいだけの漫画(?)」だったはずなのに、いったい何を読まされているんだ。

 

 

★★★★★

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魔王を打ち倒し平和をもたらした伝説のパーティ。

王都に凱旋した彼らには、世界を救った功績に対する歓待と、その後の長く平和な人生が待っていた。

80年が経ち、勇者も僧侶も寿命で世を去り、戦士のドワーフも老いた中、長命種エルフの魔法使いフリーレンだけがひとり変わることなく魔法を求めて彷徨いながら、かつての仲間の死と追憶に触れていく異色のファンタジーもの。

ヒロインからしたら一瞬にすぎない間しか同じ時間を過ごせない、エルフと人間の寿命と時間感覚のギャップの哀愁を淡々と。

『葬送のフリーレン』11巻より(山田鐘人/アベツカサ/小学館)

「相手を理解したい」「相手と深く関わりたい」という一見ポジティブな目的は、その過程で「相手を傷つける」「相手の生命や尊厳を損なう」ネガティブな手段を(人間の価値観上)正当化しない。

本作はたまたま「人間と魔族」として描かれていますけど、「人間同士で在りさえすれば傷つけ合わずに理解し合える」とするのは、いささか楽観的というか、よく考えたら「人間同士でも傷つけあわずには理解し合えない」作品ばかりのような気がしますね。

TVアニメも素晴らしい出来で、毎話楽しみに観ています。

「この作品が完結する頃には、既にいい歳のおじさんである私は寿命で死んでるかもしれないな」

などと考えると、いつものように暗澹とするより先に、

「実にこの作品らしい話で、ヒンメルの気持ちを追体験できるかもしれないな」

などと、益体もないことを思ってちょっと可笑しくなります。

 

 

★★★★★

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『ブラック・ラグーン』で著名な広江礼威の新作は、架空の大陸の架空の国家同士の戦争を舞台にした架空戦記もの。

エンタメとしてソフトな美女を主役に据えないと売れないというのなら、その代わりに彼女に戦場のハードな悲惨さを忖度なく叩き込んで、そのギャップを利用させてもらう。

という、ヒロインに対するある種のサディズムを伴った「戦争わからせコンテンツ」ではあると思います。

『341戦闘団』1巻より(広江礼威/小学館)

美女を主人公にした娯楽作品ですが、少なくとも戦争の罪や人を殺し殺されることの怖れをあまりヒロイズムで脱臭し過ぎず(むしろ誇張するように)描いていて、「戦争をスポーツのように楽しむ後ろめたさ」とは距離を置いた作品。

ヒロインが初陣の戦場で恐怖に震える姿、気力を振り絞って立ち上がる姿、生き残って安堵して腰が抜けて号泣する姿、どうしようもなく無様で人間らしく、それが不謹慎なことにとてもチャーミングに映ります。

何を受け取るかはまあ、我々読者次第でしょう。

 

 

21本目

★★★★★

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「足を洗った殺し屋が一般人として生活」と雑に括ると、「カタギになったアウトロー」は能力がある漫画家が真面目に描けば面白くなるに決まっている建て付けで、昔からハードボイルド小説などでも定番の設定。

本作は俺TUEEEEEな、ある意味「戦場から日本に異世界転移」的なハードボイルドエンタメよりも、「戦場帰りが平和な日本で何を語るのか」の方に重点が置かれているように見え、『ペリリュー』寄りと言っていいかもしれません。

『平和の国の島崎へ』4巻より(濱田轟天/瀬下猛/講談社)

作者の、主人公に対する、あるいは「人を殺す罪」に対する、ある種の諦観を感じます。

「人を殺した罪」を赦す資格を持つのは、いったい誰なのか。

数十人・数百人を殺した殺し屋が、「暴力の連鎖」から逃れて幸せになることは可能なのか。

多くの作家が「元・殺し屋」の主人公に対して、正当防衛と不殺と贖罪を通じて「赦し」「やり直し」「救い」を与えようとする中、本作は島崎に対して

「赦されない」

「やり直せない」

「救われない」

「元・殺し屋に、春は来ない」

と、何の留保もなく、ただ告げているかのような。

 

 

★★★★★

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高校の「映画を語る若人の部」に入部したプレゼン下手の映子が、毎回好きな邦画を1本トンデモ説明でプレゼンして部長がツッコむ話。

ネタはほぼ無限に供給され続ける上に、パッションよりも計算で回す作風で面白さも安定して高止まりしてるし、アニメ化・実写化がクッソやりづらいというかほぼ不可能なこと以外は本当に良い漫画作品。

マンネリが許され、「続きが気になる」類の漫画ではない、といういわば『こち亀』型で、延々やれる反面、

「作者も読者もいつでも降りられる漫画」

ということでもあるので、意外と近々終わってしまうのではないか、とファンとして少し心配してたんですが、あとがきによると長く続けたい意向とのことで少し安心しました。

『邦画プレゼン女子高生 邦キチ! 映子さん Season10』より(服部昇大/集英社)

あとはもう、楽しそうに踊ってるヤンヤンが可愛いが過ぎる。

ヤンヤンの担当は「アジア映画」なので、彼女の出番を増やすためにも、アジア映画、特に踊りと強く紐づいているインド映画には、来年・再来年もがんばっていただきたいと思います。

 

 

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オノ・ナツメの現作、煙草が超高級品な「ACCA」世界観、首都・バードンが作品タイトルで舞台。

「二度と悪事にもサツにも関わらない人生」

を夢見る男たちの商売繁盛記にはならず、良かれ悪しかれ罪を犯した過去がつきまとうハードボイルド風味。

社会の「表」と「裏」があるとして、プリミエラはその境界線上に浮かんでいます。

『BADON』7巻より(オノ・ナツメ/スクウェア・エニックス)

彼らが賢く「裏」と一切の関わりを拒絶すれば、平穏に暮らせる代わりに漫画にならないので、作者があの手この手で、それでも彼らが「裏」に関わらないわけにはいかない理由を創る、そのことがドラマを生んでいる作品。

ことあるごとに彼らは境界線上から裏に向かって、ある時は足を一歩踏み出し、ある時は手を差し伸べます。

自分の失敗や後悔を踏まえて、若者に向かって

「お前は俺のようになるな」

とお約束のセリフで背中を押してやるのは、「表」とか「裏」とか立場とかを問わず、強く優しく在るべき大人の、ハードボイルドの美学なのか。

そろそろ自分も、そういう感じのことを言いたいんですけどね…

反省

雑談で若手と雀魂の話してるうちに「えっ課金してんスか!?雀魂に!?」とドン引きされたので、ウマ娘に100万課金した話もしてやった上で「お前たちは俺みたいになるな」ってちょっとかっこいい感じになった

2023/02/15 17:22

b.hatena.ne.jp

 

 

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いま現在の地球文明も、その後の宇宙進出時代も、遠い昔の神話になってしまったぐらいの遥か未来。

犬顔種族のメリッサは、小さな銀河配送屋「スターライトエクスプレス」の配達員として、海洋人(魚人族?)のリナリアとバディを組んで銀河中を股にかけて荷物を届けている。

母船・拠点となる集荷移動惑星ルッカで社員一同で共同生活をしつつ、荷物を届けるために銀河アウトバーンを宇宙カブに乗って銀河系を西へ東へ。

『銀河配送スターライトエクスプレス』1巻より(ユウキレイ/少年画報社)

SF考証的にもわんぱくな箱庭的で楽しい世界観。

明るくコミカルなんですけど、『銀河鉄道の夜』のようにどこか切なく寂しい郷愁と詩情を感じさせる、広大な宇宙、夜の優しい闇、星の光。

作品冒頭、銀河ラジオでかかった曲は『スターライト』という曲でしたが、他作品のテーマ曲で恐縮ですが、自分は『夢光年』が頭の中のラジオでかかっています。

夢光年

夢光年

  • 影山ヒロノブ
  • アニメ
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

 

 

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なろう小説のコミカライズ。古代中国の華やかな後宮を舞台に、美女ありイケメンありミステリーあり。

勧善懲悪というよりはヒロインが謎を解いて自分の利害(主に好奇心)を満たしたらそこで終わり(逮捕・検挙が目的ではない)という感じで、「犯人(たち)がその後どうなったのか」は描かれないことが多く、人によってはモヤモヤが残るというか、「大人な幕引き」のエピソードが多めですけど、自分はこれ系のモヤモヤは結構好きです。

『薬屋のひとりごと』12巻より(日向夏/ねこクラゲ/七緒一綺/しのとうこ/スクウェア・エニックス)

11〜12巻は壬氏の正体バレに絡んでラブコメ展開に大きく踏み込みます。

起こってる事件は割りと深刻ではありながら、避暑地でのアバンチュール、暗殺者からの手を取り合っての逃亡、人工呼吸イベント、濡れた服を脱いで乾かすイベントなど、ラブコメど定番というか少女漫画というかレディコミというかハーレクインロマンスというか乙女ゲーというか、ややもすると『ToLoveる』並みのラッキースケベ展開もあるよ!

しかもラッキースケベの対象がヒロインの猫猫じゃなくて壬氏だっていうw

「面白い」「興味深い」に加えて、急に「キャラ萌え祭り」「関係性萌え祭り」が始まって、楽しくなってきやがったぜ!

 

 

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第二次世界大戦・独ソ戦における「戦争と女」をテーマにした作品で、原作はベラルーシ(旧ソ連)の女性ジャーナリスト、スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチのノンフィクション。独ソ戦で赤軍に従軍した女性500人を1978年から1984年にかけて取材、ペレストロイカ後の1986年に出版(日本語訳は2008年)、作者は2015年にノーベル文学賞を受賞。

『戦争は女の顔をしていない』4巻より(スヴェトラーナ・アレクシエーヴィチ/小梅けいと/速水螺旋人/KADOKAWA)

本作のインタビューに登場する女性たちには、「ソ連赤軍に従軍した」の他にもう一つ共通点があって、それは「独ソ戦を生き残った」ということです。

戦争で死んじまったら戦後にアレクシエーヴィチがインタビューすることは不可能なので、とても当たり前のことなんですが、当たり前と理解っていても読後に「それでも、生き残ったんだな」と思ったエピソード群。

およそ、彼女たちに

「純粋で無垢で高潔で可哀想な、戦争の聖なる被害者」

であって欲しい人々が目を逸らして無視しそうな、私と同じく、あまりに「普通」で人間くさい女たちのエピソード。

『エヴァ』TV主題歌の名曲『残酷な天使のテーゼ』の二番の歌詞に

「女神なんて なれないまま 私は生きる」

という一節がありますが、なんだかまるで本作今巻のために書かれたような歌詞だな、と。

 

 

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黒髪おさげで八重歯で面倒くさがりで何でも麺つゆで食う女・面堂 露(めんどう つゆ・26歳独身)、略して"めんつゆ"がヒロインの、お料理・グルメ4コマ。

その他、社長秘書で味噌も自家製の料理上手で料理警察な人妻の十越さん、カツサンドをおかずに白飯を食う主任の元イケメンのデブ、元イケメンのデブに片想いのヘルシー派のストーカー後輩OL、なぜか単語でしか喋れず秘書の通訳なしでは社員と会話が成り立たない女社長など。

大丈夫かこの会社。

『めんつゆひとり飯』6巻より(瀬戸口みづき/竹書房)

「めんつゆの職場」「めんつゆの実家」「お姉ちゃんの職場」「十越さんの家庭」「十越さんの弟」がそれぞれ島のように「人間関係の舞台」として浮いていて、中心キャラであるめんつゆと十越さんがいくつかの島を行きつ戻りつする構造。

なんですが、今巻はこれまで分断されていた島を越えてクロスオーバーするように「お姉ちゃん×十越さん」の新しい組み合わせも発生。

日常ものでこの「見たことがない組み合わせ」展開が始まると、ここまで育ててきた実りの「収穫期」というか、一気に作品が豊かになるように感じますねw

王道ネタも面白いのと、最近めっきり女子高生に占拠された4コマ界において、キュートでチャーミングな社会人女性たちを描き続ける漫画家さん。

王道4コマとして楽しみつつ、(いわゆる「きらら系」ではないんですが)キャラ萌えも楽しめるという、一粒で二度美味しいタイプの作風。

 

 

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4コマの匠・OYSTER先生の、再会した幼馴染同士が恋人すっ飛ばして結婚した可愛らしい新婚さん4コマ漫画。

奥さんが一歳お姉さんで天然系のボケ役、旦那は漫画家で温和なツッコミ役。

面白い漫画を描きたいのか可愛い漫画を描きたいのかハッキリしていただきたい。両方か。欲張りさんか。

一冊ごとに春・夏・秋・冬と季節が巡り、7巻は2年目の秋のお話。

『新婚のいろはさん』7巻より(OYSTER/双葉社)

4コマ漫画(当然一般向け)というメディアに対する遠慮があったのか、作品初期には性的なスキンシップな描写がまったくといっていいほどなかったんですが、近刊は「ちょっとエッチ」な匂わせ描写が増えてきました。

もともと「ちょっとエッチ」な作風の先生ですし、作品序盤の二人は成人の割りにピュアに描かれすぎてて、読んでて正直、

「この人たちセックスの概念を知らないんじゃないかな」

と心配していたので。(余計なお世話

「濡れ場ド本番を見せろ」とは思いませんが、イチャラブ見たいなら「ちょっとエッチ」は良いスパイスですよね。

まあ、可愛らしいんですけど、独身の自分は余計に新婚さんが羨ましくなって目の毒っちゃ目の毒なんですがw

 

 

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元ヤンキーな青春を送り、SNSで漫画クラスタに入り浸る漫画好きの真白悠(♀)は中小企業の虹原印刷(株)に就職。

企画デザイン課に配属され、印刷物のデザイン、データ作成・出力、校正を担当。担当する仕事は選挙のチラシからエロ同人誌までなんでもあり。

という印刷会社のお仕事日常漫画。

人の生き死にに関わらない、世界も救わない、地味で実直ですけど、ウェルメイドなお仕事もの。

『刷ったもんだ!』9巻より(染谷みのる/講談社)

失敗しかけている仕事のシチュエーション、携わっている人間の悔しい気持ち、その解決の仕方、すべてにおいて真に迫ったディティールの具体性と、「製品・サービスを提供する」仕事の内と外で起こることの普遍性を備えています。

「特殊なお仕事の表面」をなぞって見せるだけではなく、「何が嬉しいのか」「何に怒るのか」「何に悩むのか」そこで働く人間の心の動きや成長を描いた、非常に優れた「お仕事漫画」。

元ヤン・姉御肌・武闘派の不器用女子なヒロインの未満恋愛もとてもチャーミングです。

 

 

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現役時代を不完全燃焼で終えた新米コーチ・明浦路 司(あけうらじ つかさ)(26歳♂)が、高い身体能力を持ち競技への情熱を燃やす小学5年生の少女・結束(ゆいづか) いのりと出会う、フィギュアスケートもの。

基本シリアス進行ながらこまめにコメディで空気を抜いてくれて、エモくて泣けるのと同時に読んでて楽しく、読みやすい。

いよいよヒロインのいのりの滑走、全国デビュー。いのりは狼嵜光を超えられるのか。

『メダリスト』9巻(つるまいかだ/講談社)

ホントだよ、なんなんだこのスポーツ。全員優勝でいいだろ!

重圧から早く解放されたくて、「時間の流れ」を歪めて途中をすっ飛ばして、結末のページに飛ぶ誘惑を抑えるのが大変でした。

自分の手がページをめくっているのに、「ちょっと待ってくれ」「心の準備をさせてくれ」「頼むいのり、転けないでくれ」と祈りながら読みました。

すごかったねえ、いのり、かっこよかったねえ。

熱いセリフ、鬼気迫る表情、胸に迫るモノローグ、美しく躍動感のある競技描写、涙、その懸命さ。

「全員優勝でいいだろ!」は、真剣勝負に人生を懸ける彼女たちに対する、「観てるだけの大人」による侮辱になってしまうかもしれませんね。

 

31本目

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転校先の高校の隣の席は、登校中に出会った半人半鹿で大柄なケモノ美少女・ハルヒノさんだった。

神の眷属の鹿であるハルヒノさんは、人類の社会事情を知り学ぶために人間に擬態して高校に通っていたが、主人公にだけはなぜか、ハルヒノさんの神鹿としての正体がケモノ美少女として見えてしまっていた…

正体を隠して人界で暮らす神鹿のハルヒノさんと、唯一彼女の正体を知る歴史好きの少年ちあきの、奈良の歴史・旧跡探訪の日々が始まった。

『まほろば小町ハルヒノさん』1巻より(ユウキレイ/芳文社)

ケモナー作家による強力なフェチズム漫画のようなルックスで、事実「ケモナー作家」「フェチズム」であることは間違ってはいないと思うんですが、掲載誌「まんがタイム」らしいのんびりほのぼの健全な日常ラブコメ。

ちょうど犬の『名探偵ホームズ』ぐらいの匙加減。ハドソン夫人、好きだったわー。

近年、再流行中の「寿命ギャップの恋」をも内包するテーマ。

『ローカル女子の遠吠え』のために定期購読している「まんがタイム」を、読む楽しみが一つ増えたなあ、とちょっと嬉しくなっちゃいますね。

 

 

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ジャンプ得意の能力バトルもの。大量の個性的な登場人物に付与された能力を、チームで組み合わせたタクティカルなバトル展開が売り。

富士山を登ることが目的の話で、延々と五合目の夜にカレーを作る話をやってるような展開で、一向に山頂を拝める気配はありませんが、「カレーの作り方」の語り口が面白い上に、みんなでカレーを作るために役割分担したり作業したりする過程で、大量のキャラのそれぞれの能力、性格、強み、欠点、伸び代や、ワールドトリガーにおける戦場の戦術と指揮命令系統の重要性みたいなものが、より解像度高く見えてきます。

『ワールドトリガー』 26巻より(葦原大介/集英社)

サッカーやバスケで「コートの中の監督」「ピッチの中の司令塔」という形容をされる選手がたまにいますが、アレを育てよう、なんだったら全員にその意識を植え付けて、トラブル時に臨機応変に自律的に対応できる「駒」を育てよう、という意図が見えます。チーム論・リーダー論に加えて労働問題も絡んでくるため大変イメージ悪いですが、サラリーマン社会でいう「経営者視点を持った社員になれ」というアレ。

それらを大量のキャラの言動をメンタルを含めて制御しつつエキサイティングにスリリングに、面白い漫画に仕立てる手腕は相変わらず流石の一言。

ちゃんとエネルギーと休息を摂ることが登山のセオリーであるように、ストーリーの進展に対して読者からせっつかれても、作者は「今これを描く必要性」「その面白さ」を確信を持って描いてる、そんな感じがしますね。

 

 

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aqm.hatenablog.jp大戦を止め災厄を退けた7人の大魔術師のうちの1人が「過ちを繰り返さぬよう」と大陸の中心に図書館を建立した、中世ファンタジー世界。

ボーイ・ミーツ・ディスティニー、まるで1本の映画のような1巻から始まった超正統派・超本格派ファンタジー。書物を守るために魔法と技術を駆使して戦う司書たち。

『図書館の大魔術師』7巻より(泉光/講談社)

市中では『マリガド』と題された、アナーキズムとテロリズムをまとった主人公の物語が流行し、規制派と反規制派の間で激論が交わされていた。

過激表現と、それに対する規制運動、検閲の是非、善し悪しを判断するのは誰か。

最悪の事態を引き起こし作中世界で表現規制が誕生する原因となった、歴史上最悪の本『黒の書』の存在。本の検閲権と出版(印刷)権を独占管理する図書館が降す結論は。

この作品世界観の中で図書を管理する強い権限を持つ「図書館司書」から見た過激表現、そしてかつて発禁・回収となった「歴史上最悪の書物」のその内容。

いわば表現を「規制する側」からの視点、と言えるかもしれません。

冷静さ・慎重さ・公平さを求められ、より大きな責任を求められるべきは果たして、「創る側」か、「規制する側」か。

同じく重要なステークホルダーであるはずの「読む側」は、いつまでもその埒外のような顔をしていて、良いはずがあるのか。

 

 

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aqm.hatenablog.jp全寮制のお嬢様学園の高等部に入学してしまった、お嬢様の皮を被った2人の格闘ゲームオタクが出会ってしまったガール・ミーツ・ガール。

格ゲーの3セットマッチを1試合、頭から終わりまでやるだけの内容で、およそ構成やバランスを普通に考えたら、まだ6巻しかない漫画作品で丸一冊かけてやるような内容ではありません。

読者が読みたいと思ってたものはコレではないでしょう。

『対ありでした。 ~お嬢さまは格闘ゲームなんてしない~』6巻より(江島絵理/KADOKAWA)

しかし、「読みたかった以上のものを読まされた」と思わされてしまいます。

モニターを介して交わされる、格ゲーの3セットマッチ1試合に込められた、濃密な「肉体言語」。孤独だった二人のヒロインが、暗闇のような人生の中で初めて「同族」に、同じステージで遊び合える「敵」に出会えた狂喜。「洗練された暴力」を競技化した格闘技、それをゲーム化した格ゲーに捧げる人生、下品で暴力的な言葉の応酬。

それに相応しく暴力的な、漫画というよりは「名場面」と「名ゼリフ」「名ポエム」をただ交互に叩きつけてるだけのような、禍々しく美しい誌面。

作者の「描きたいシーンがある」「描きたいセリフがある」「描きたい人生がある」が強烈に伝わってきます。熱い。

 

 

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園田れみ(39♀)は夫と死別して実家の一軒家で母と中学生の娘と3人暮らし。

仲の良いお隣の、同い年の幼馴染・松宮季(とき)(39♂)が離婚で婿養子先から出戻ってくる。

不本意な離婚で傷心の季。そんな彼を、再開したご近所づきあいと昔からの腐れ縁で見守るれみ。回想される幼少期から青春期の思い出。

今巻は一冊通して、狂言回しというのかな、れみの中学生の娘・るりの視点で。

娘・るりの目から見た、母親・れみ、という人間について。

過去だけではなく、現在を生きる一人の女、一人の人間として。

『1日2回』4巻より(いくえみ綾/集英社)

同じく夫を早くに亡くした母親と娘二人の母子家庭を描いた、岡崎京子の20代前半の作『セカンドバージン』を思い出します。

Wikipediaによると岡崎京子といくえみ綾は一学年しか違わない同世代なんですが、円熟の域に達したいくえみ綾とどこか共通する構図と読み味の母娘ものを若干22歳で既に描いていた岡崎京子、22歳の頃の岡崎京子とどこか共通する感性を円熟の域に達してなお保ち続けているいくえみ綾、双方、尋常じゃないな、と思います。

なにが、ってわけでもないのに、美しくて無性に泣けてきてしまう。

 

 

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aqm.hatenablog.jp高校入学でのガール&ガール・ミーツ・ガールで立ち上げた映像研を舞台にしたクリエイター青春グラフィティ。

基本的に「自分(たち)の内心」と闘うクリエイターものとして描かれてきた印象がある作品ですが、今巻は珍しく外部との「あるべき表現」をめぐる闘争。

行き着くところは「外圧に折れるか、折れないか」の、要するに「自分の内心」との闘争に帰着はするんですけど、形として外部との争いが描写される分、いつにも増してエキサイティングな展開、描写。

『映像研には手を出すな!』8巻より(大童澄瞳/小学館)

マスコミが「第4の権力」と呼ばれるように、我々大衆の「ただの感想」もバズや炎上で数が集まれば「第5の権力」となり得る、無条件に免罪されるものではない、ということにも、大衆の一人として自覚的でありたいな、と思います。

金森氏が作中で言うとおり、相手に「隙があった」のも確かですが、怒りを原動力にしたエキサイティングなエピソードで、また着地が単純な勧善懲悪的な展開に陥らなかったことも含めて、今巻も大変面白かったです。

 

 

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aqm.hatenablog.jp王国最強の女騎士が仕事と酒とオナニーに明け暮れるサイテーな日常もの。エロ話しかしないけどエロ展開はなし、という下ネタショートギャグコメディ。エロ漫画誌に毎月2ページ?4ページ?掲載のギャグ枠をコツコツ続けてようやく3巻。

あとがき漫画によると1冊出すのに30ヶ月かかるそうです。

新刊に数年かかったり女騎士がたくさん出てきたりという意味では、『FSS』の仲間ですね(※ちがいます

全編に渡って身も蓋もなく体育会系的なオナニーの話が5割、セックスの話が3割、その他の下ネタが1割。

『33歳独身女騎士隊長。』3巻より(天原/KATTS)

「三大欲求」の定義は諸説あるそうですが、代表的な「食欲・性欲・睡眠欲」に貪欲で、かつ情勢がどう変わってもマクロで国が豊かになっても、そのミクロな欲求が満たされない彼女たち。

まあ満たされてしまったら漫画が終わってしまうんですけど、幸せってなんだろう、豊かさってなんだろう、という作者の皮肉な問いについて少し考えてしまいますね。

メインはあくまで国際情勢下における、パンチの効いた下ネタです。

知的で痴的とでもいうのかなw

 

 

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表紙のメガネ美女、「地政学リスクコンサルタント」の八田百合がクライアントの依頼を受けて世界を股にかけて紛争地帯を渡り歩き、地政学の知識と思考と調査能力と護身術で解決していく、美女!メガネ!インテリ!ハードボイルド!ワールドワイド!な、かっけーお仕事もの。

差別や不和、対立に満ちた社会の縮図で苦悩する依頼主たちを、「たったひとつの冴えたやり方」で少しだけビターなハッピーエンド、イバラの道ながらも融和と協調と成長に導く、シビアな現実で始まりながらも人間の善性を信じた希望に満ちたあっ軽いラスト。というスタイルで作劇はほぼ一貫してますが、ここ2冊は

「社会システムの旧弊でも止められない情熱を持つ若者を応援するヒロイン」

というスタイルが、一気にツボにハマってきた感。

『紛争でしたら八田まで』14巻より(田素弘/講談社)

「夢」「野望」「希望」というよりは、「憧れを止められない」「何かに衝き動かされて、止まっていられない」と形容したくなる若者の情熱の描写と、舞台となる社会と国情に対する願いを込めた提案の混然。

現実は漫画で描かれるほどご都合主義ではなく、よりシビアなのかもしれませんが、「ご都合主義」願望の根底にあるのは一体何かを考えると、そもそも間違っているのは「ご都合主義」なのか、それとも「現実」なのか、考えてしまいます。

「こんなに上手くいくわけがない」と口にするのは簡単ですが、「こんな風に上手くいって欲しい」というビジョンを熱を込めて世界に示すこともまた、漫画の重要な役割の一つだなあ、と。

 

 

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4コマ漫画家・いしいひさいちの、朝日新聞朝刊に長期に渡って連載された4コマ漫画『となりのやまだくん』、途中改題して『ののちゃん』の登場人物の、スピンオフ同人誌として2022年に発刊され話題になった作品。

2023年7月31日に電子書籍(kindle)化されました。

夢を持つ少女のビルドゥングスロマンと、離れても彼女を応援し続ける親友との友情のお話。

4コマのギャグコメディを重ねながら、物語が進んでいき、彼女たちを取り巻く環境の変化が少しづつ語られていきます。

全てが説明されない、巨大な余白を抱えた、すごい終わり方をします。

『ROCA: 吉川ロカ ストーリーライブ』より(いしいひさいち)

読後しばらくの間、何があったのか想像しないわけにはいかず、また彼女たちそれぞれの心情に思いを馳せないわけにはいきません。

切ないだけでない、儚いだけでない、故郷どころか前世まで、「越し方」の記憶をすべて思い出してしまって、その「戻れなさ」に泣きたくなるような…

そうか、「サウダージ」とは、こういう気持ちのことをいうのか。

Coimbra

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本当に、昔話のような、寓話のような、「サウダージ」な物語。

 

 

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地方の高校の古典部の1年生の男女4人が、学校を舞台に数々の謎を解明する探偵もの風の青春もの。平凡な成績の省エネやれやれ野郎ながら推理力だけなんでか突出してるイケメン高校生・折木奉太郎が主人公。

ビジュアルはアニメ設定準拠の、原作小説のコミカライズですが、前々巻から大きな変化がありまして、アニメ最終回「遠まわりする雛」編を消化、アニメ化されていない2年生編に突入しています。あの最終回のその先、私の知らない物語。

『氷菓』15巻より(米澤穂信/タスクオーナ/KADOKAWA)

アニメ視聴時からずっと「伊原があんな漫研にいる」のは、喉に刺さった骨みたいにちょっと納得いってなかったんですが、ようやく刺さってた骨が抜けたような痛快さを伴ったエピソード。

もう一編は、奉太郎が中学時代に書いた読書感増文をみんなで読む会。拷問か?

奉太郎が用意したダミーから興味深い批評議論が展開されて、日常的に漫画感想ブログやってる身として、感想・批評の考え方・書き方がいろいろ参考になったり身につまされたりする上に、奉太郎の読書感想文の中に隠された謎を解き明かす過程が、ミステリーとしてとてもスリリングでエキサイティングでした。

いつか2期がアニメ化されるに越したことはないんですが、「ないならないでもこのコミカライズが在れば平気かなあ」という、出来物コミカライズ。

 

41本目

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アニメ化済みのラブコメ4コマ。高校生にして連載持ち少女漫画家の野崎くんに片想いする千代ちゃんの話。少女漫画出身らしい華やかな絵柄で、可愛い女の子たちと可愛い男の子たちがたくさん出てきて楽しくわちゃわちゃしてる、眼福な作品。

修学旅行に行ったりと学園もの定番イベントもこなし、時間が流れていく「非サザエさん時空」っぽいんですけど、堀ちゃん先輩が卒業していなくなったりとかそういうことは特に起こりません。

『月刊少女野崎くん』15巻より(椿いづみ/スクウェア・エニックス)

1巻からずっとキャラたちは進級せず学年固定。嬉しい。

ここ数巻、男女がカップルになったり、キャラ間で知らなかった秘密(?)を知ってしまったりと、ちょっとずつですが人間関係が進展しています。

畳みにいっているというよりは、人間関係が微妙に変化したことでその変化が新たなネタを生んでいる感もあります。

だいぶネタも貯まったし、もっかい続きをアニメ化してくんねーかなコレ。

 

 

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名作『ご飯は私を裏切らない』のheisoku先生による、定時制夜間部を舞台にした学校日常もの。

春あかね高校定時制夜間部には、コミュ症、中学での不登校、元ホスト、精神病治療中、など、それぞれの生きづらさを抱えていたり、生きづらさを抱えていないように見えたりする、いろんな生徒がいて、割りと楽しく仲良く過ごしている。

『春あかね高校定時制夜間部』より(heisoku/KADOKAWA)

それぞれの生徒が抱えたコンプレックスや将来への漠然とした不安が表裏一体でのしかかりつつ、その不安な将来に対するモラトリアム空間にもなっています。

程度の差こそあれ、コンプレックスや将来への漠然とした不安は大人になっても誰にでもあることなんですけど、作中の生徒たちはそれぞれ、作中の言葉を借りれば「中央値から外れた」事情を抱えていて、本作で彼女たちの生きづらさが劇的に解決されることもなく、「明日」に続いて作品は終わります。

劇的な何かが起こることがない代わりに、彼女達に対する作者の視線がとても優しくて、読んでいてなんだか泣きそうになります。

 

 

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史実に基づいたあらすじとフィクションによるディティールで、一昨年に最終巻が出て完結した『ペリリュー ─楽園のゲルニカ─ 』の外伝短編集の2巻。

相変わらず、「何のための戦争だったのか」「誰のせいだったのか」「どうすれば避けることができたのか」、何かに責を帰したり教訓めいたりしたことは描かれません。

「結果」としての戦争の更に「ただの結果」として起こった、あるいは起こったであろう、救いのない話、救いしかない話、救いのなさの中のほんの僅かな救いの話。

『ペリリュー ―外伝― 2 ペリリュー ─楽園のゲルニカ─』より(武田一義/平塚柾緒/白泉社)

戦記としての連続性が求められた本編と比較すると、散文的な取材録の中からワンイシューずつが、おそらく本編とは違う意味で作家の創作や演出も交えてそれぞれエピソード化されていて、より叙情的に表現されています。

ある意味、実在した戦争をモチーフにエンターテインメントとして描いて許される、作者の取材姿勢の真摯さを鑑みたギリギリの線だろうと思います。

「続きが気になる」で引っ張る面があった本編よりも、前後の文脈を気にせずに戦争の断片を切り取ったこの外伝の短編集の方が、よりこの作品にとって本質的というのか。

前々巻にあたる本編最終巻・前巻・今巻に続き、次巻も来年の終戦記念日の少し前、7月末に発売予定とのことです。

 

 

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変化球ファンタジーもののお仕事漫画。

冒険者 兼 ダンジョン新米スタッフであるクレイの「職場見学」を通じてダンジョンの仕組み・うんちくが語られつつ、余暇を利用して本来の冒険者としてダンジョン攻略を進め、特異な設定を転がして常識人の主人公がツッコむ、基本的にコメディ進行。

レギュラーで登場する主要キャラも3人と少なく、舞台も一つのダンジョン内に基本的に閉じていて、決して壮大な世界観ではないですが、箱庭的というのか、作者の想像力がよく働いた設定で、うんちく読んでるだけでも楽しい。

『ダンジョンの中のひと』4巻より(双見酔/双葉社)

今巻は基本進行を逸脱して縦軸が動きました。クレイが積年、追い求めていた邂逅、そして対峙。胸熱展開。

クレイとベル、二人とも可愛くて仲も良いのに、そうまでしていつかベルに勝とうとしなくてもいいじゃない、ずっといちゃいちゃしてなさいよう、と読者感情としては思ってしまいますが、クレイからしたら

「そこにダンジョンが在り、最後にダンジョンマスターが居るから」

という探索者・冒険者のサガでしかないですしね。

TVアニメ化決定とのことです。これは楽しみ。

 

 

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全身全霊を賭けた勝ちと負けしか無い孤独な世界でのたうち回るような棋士としての心情と、人情味溢れる優しい人間関係の狭間で、その両方に対してどこか借り物の意識が拭えない、ルーツを失った少年の心象風景が描かれる。

緩と急、幸と不幸、日常と戦場、人としての優しさと棋士としての厳しさ、在ったかもしれない幸福だったかもしれない人生と、強さと勝ち負けに一点賭けした人生。

『3月のライオン』17巻より(羽海野チカ/白泉社)

二階堂のエピソードとあかりさんのエピソードが、自分への厳しさと他者への慈しみが同居するこの作品の二面性を象徴するかのように、まるで別々の二つの漫画が一冊の中で展開されているかのようにバラバラな話なんですけど、あるページをめくるとその二面が表裏一体であることが鮮烈に示されます。

三者三様、決して順風満帆なばかりではなかった道程を経た、二階堂の負けてなお燃えるような、あかりさんのたくましくしなやかな、島田の少し苦くて芯の硬い、自分と戦う強さと他人に対する優しさ。

彼らのように、強く優しくなりたい、優しく強く在りたい。

 

 

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小学5年生の少年・綾瀬川次郎は、人格はただのスポーツ好きの遊びたい盛りの子どもだったが、素質が災いしスポーツ競技を習い始める度に先に始めた子ども達を一瞬で抜き去って傷つけて逆恨みを買い、コーチたちからはより上位のクラブへの転籍を勧められ、漠然と罪悪感と疎外感を感じていた。

「今度こそ、野球をこそを一生のスポーツにしよう」

と決意していたものの、次郎の才能に目が眩んだコーチが本人の意向を無視してU-12日本代表チームに勝手に応募したことで、次郎のゆるふわ野球人生計画は壊されていく…

『ダイヤモンドの功罪』2巻より(平井大橋/集英社)

チームスポーツにおける「フォア・ザ・チーム」の重要性も、蹴落とされたライバルの無念も、日本代表の価値も、まったく理解できていない次郎に試練を与えて悟らせようとするも、次郎の素質は与えられた試練をブルドーザーのようにぶっ壊し、コーチやチームメイトの野球観・人生観をへし折り、そしてまったく空気の読めない発言でトドメを刺していく。

本人は相変わらず「スポーツ好きの遊びたい盛りの子ども」のままで、空気読めない発言も本人なりの過去のトラウマに基づく一種の逃避なので、もはや読んでて誰に同情すれば良いのかよくわかりません。

もうなんか全員が可哀想。

この作品、6月に1巻が出て以来、12月までの7ヶ月間に4冊という狂ったようなハイペースで新刊が出ているのは一体なんなんでしょうか…連載開始前に準備していた貯金が大きかったのか、ただ単に筆が早いのか。

作者こそどこか生き急いでいるんじゃないか、と余計なお世話な心配を。

 

 

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位置原光Zによるオムニバス短編集。『小悪魔淫魔サキュバスちゃん』の人、と言うと通りが良いかと思います。

アダルト向け漫画誌「快楽天」(ワニマガジン社)に連載されたショート漫画をまとめた単行本がKADOKAWAから。

作者自ら「一般向け単行本」とおっしゃってますし、実際Amazonでの扱いも一般向け扱いです。

『青春リビドー山』より(位置原光Z/KADOKAWA)

それぞれの単語はもとから知っていても、「そんな組み合わせ見たことない」という日本語が量産されます。

この漫画にも、このページにも、写植や校閲の担当さんがいると思うと「どんな感情でこの仕事したのかな」と考えるとちょっとツボですねw

ツッコミの焦点がどんどんディティールのニッチで狭いこだわりにハマっていって深掘りしていく感じ、エロと似ているというか共通しているというか、そもそもスタートはエロの定番シチュなのに換骨奪胎してエロに行かずにギャグに跳ねてるというのか。

萌え絵じゃないけど三白眼気味の女の子たちが、可愛いというか色っぽいというか艶っぽいというか。ムラムラ感の表現が生々しくて良いよね。

 

 

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自ら『大砲とスタンプ』などの戦記もの漫画作品を手がける他、そのミリタリーと旧ソ連に関する造詣の深さから『戦争は女の顔をしていない』などの監修も務める速水螺旋人の新作は、1942年、ドイツとの戦争真っ最中の旧ソ連・スターリングラードなどを舞台に、巨大なシステム同士の戦争の狭間でその両方の体制に背を向けて逃れ敵対して生きるアウトローたちの話。

『スターリングラードの凶賊』1巻より(速水螺旋人/白泉社)

戦争ものは主人公が軍人や政治家である限り「システムの一部」「システムに取り込まれた個人」ですが、本作は「ソ連 vs ナチスドイツ」とシステム同士の戦争の外側に位置するアウトローたちが、生身の個人のまま戦争と対峙するお話。

作中「もう戦争から縁を切れるのに、戦争に戻っていく個人」が描かれています。

多くのキャラクターたちが、戦争で傷つき、深く戦争を嫌悪しながらも、自らの意志で戦場に舞い戻っていく。

戦争と平和、システムと個人、人類社会と人間の宿業。

 

 

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突如発生し人と社会に害をなし損害を与える怪異を、退治するサービスが「魔法少女」と称され、複数の企業が魔法少女サービスを提供する社会。

就職活動中の女子学生・桜木カナは怪異退治「業務」を手伝った縁で、魔法少女ベンチャー企業「株式会社マジルミエ」にスカウトされ、魔法少女として就職することになった…という、ジャンプ+の魔法少女お仕事漫画。

『パトレイバー』の「レイバー」のように、現実社会に「魔法少女」という大きな「嘘」を一つ放り込んで、魔法少女を企業サービスとして現代社会ナイズ。

嘘の周辺を現実的な描写・展開で固めることで、ファンタジー世界観のリアリティラインを部分的に押し上げてシミュレーションして、お仕事漫画のテイに。

『株式会社マジルミエ』9巻より(岩田雪花/青木裕/集英社)

9巻で「第一章 完」、10巻で「第二章 開幕」、「そして〜年後」の章跨ぎ。

ライトスタッフの陣容をフル活用した総力戦!熱血!クール無表情ダークヒロインなライバルの心の氷を溶かした熱い友情!という王道熱血展開の果てに、突然訪れたカタストロフ。

「1年間の空白」をフルに利用したエキサイティングな第二章の開幕、環境の大きな変化、それぞれのキャラの足跡・成長・イメチェン・立場の変化、新戦力となる新キャラも登場。

なにより新卒ツインテの悩める新入社員だったカナちが、若干20代前半にしてメンバーたちを社長として束ねるリーダーに頼もしく成長しました。

カタストロフからの章跨ぎはとてもエキサイティングで、戦記ものの華ですね。戦記もの?

 

 

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Amazonの商品紹介には

「アニメ化、実写映画化された大ヒット青春物語、ついにハッピーエンド。」

と盛大にネタバレが書かれています。

「バッドエンドだったら最終巻を読みたくない」

と思っていた私のような読者がたくさんいたせいかもしれません。

『君は放課後インソムニア』14巻より(オジロマコト/小学館)

卒業おめでとう。

『世界の中心で愛を叫ぶ』と同じような話で、同じような結末だったら意味がない、とずっと思いながら読んできた作品ですが、読み終えてみると「ハッピーエンドかどうか」の天秤がどちらに傾くかは、それほど重要ではなかったんだよな、という気がしています。

という余裕のコメントできるのも、ハッピーエンドを読み終えた後ゆえでしょうか。

この先、自分が「死」について考える時間がより増えた時に、この漫画でイサキとガンタが死と理不尽に距離が近い生を強制される中で、それでも「生きよう」「一緒にいよう」ともがいた姿が、あるいは自分の人生の杖のようなものに、なってくれるのかもしれません。

 

51本目

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『ハコヅメ~交番女子の逆襲~』作者・泰三子の新作。

動乱の時代の重要人物として徐々に頭角を表し、幕府や他藩からも警戒される存在となりつつあった西郷の、そのサポート役として白羽の矢が立ったのは、西郷と同じく賢君・斉彬公に心酔し、目端が効いて空気も読めて、悪いことも考えられちゃうツッコミ役の便利マン藩士・川路正之進。

後の明治政府下における初代の大警視(警視総監)、川路利良その人だった。

『だんドーン』1巻より(泰三子/講談社)

薩摩藩士から幕末を経て明治初期に維新政府の要職を務め、「近代警察の父」「日本警察の父」と渾名され、その語録が未だ警察官のバイブルとして読み継がれる、史実の人物・川路利良の伝記フィクション。

(おそらく作者と)鹿児島出身の自分と作品テーマが同郷である贔屓目や『ハコヅメ』信者としての贔屓目も入ってしまっているでしょうが、舞台が幕末に変わっても相変わらずシリアス要素とコメディ要素、ご陽気さとダークネスが高速で混じり合って飽きさせない、期待の新作として申し分のない、文句のつけようのない出足の1巻。

ただ「司馬史観」ならぬ「泰三子史観」を引き起こしかねないだけの質を伴った作品であるということは、注意が必要だな、と思います。

特に鹿児島の戦前に教育を受けた世代は、本作登場人物の一人一人に対して「推し」感情だったり「アンチ」感情だったりを個別に持っていて、結構めんどくさいしね。大河ドラマにでもならない限りは、その世代がそうそうこの漫画を読むことはないとは思いますが。

新撰組の登場が楽しみですね。

 

 

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よもぎ町では、様々な動物スタッフが、店員として働いている…

「店員さんが動物で可愛い」というだけの、幼稚園児向けの絵本みたいなコンセプトのちょっとファンタジー日常漫画。

コンプレックスとストレスと運動不足の塊のようなヒロインが動物の接客に癒されて、特に日本語を喋るでもない動物たちが、一生懸命働いてて可愛くて親切でほっこりする、というただそれだけです。

『夜子とおつとめどうぶつ』3巻より(石田万/講談社)

人見知りで引っ込み思案「だったはず」が、もう独りではなくなったヒロインは、人前で「仲間たち」とのパフォーマンスを楽しめるぐらい強くなっていた…

最終巻だと知らずに読んでいながらも、ほのぼのしながらも盛り上がっていく謎の感動で、ちょっと涙目になりながら、

「まるで最終回みたいなエピソードだな」

と思いながら読みましたw

最後の最後まで、可愛くて楽しい、動物好きな空想に溢れた漫画でした。

 

 

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自分は『シグルイ』を読みませんでした。

表紙の絵のエグ味が強くて全然好みな漫画の予感がしなかったというか、平たくいうと気持ち悪かったので、金を払って気持ち悪い体験をする気になれませんでした。

「面白いらしい」と聞いて、『シグルイ』の作者の作品と知りつつ、「タイトルからして『ガラスの仮面』みたいな演劇ものかな」という馬鹿みたいな勘違いも手伝って、うっかり1巻を読んでしまいました、

あまりの癖の強さに「なんだこりゃ」「俺は一体何を読まされているんだ」と思いながら半分我慢しながら読みました。

ヒキが強い終わりだったのと、作風の癖の強さやエグ味が少し癖になってしまって2巻を読みました。

3巻・4巻は中毒になってしまって貪るように読み進めました。

『劇光仮面』4巻より(山口貴由/小学館)

偽物が本物への憧れや情熱や狂気によって、偽物で居るままに本物を超えていくところを目撃させられているかのような、どこか本末転倒で居心地の悪い熱量や興奮。

まるで「悪を倒すためにヒーローが居る」のではなく、「ヒーローになりたい」という自己中心的で独善的で幼稚な願望が、倒すための悪を呼び寄せ顕現させてしまったかのような。

気持ち悪くて敬遠していた漫画をうっかり手に取って読んでしまって引き摺り込まれてハマる体験は、憶えている限りでは人生で二度目です。一度目は『寄生獣』でした。

本作4巻のオビの推薦文を『寄生獣』作者の岩明均が書いていて、「さもありなん」と少し笑ってしまいました。

今度、『シグルイ』も読んでみようかな。

 

 

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勤勉ながらデザイナーの仕事に適性を見出せず、東京から地元の静岡にUターン転職した有野りん子(27)をメインヒロインに、東京と地方の価値観のギャップと「しぞーかあるある」を面白おかしく描写する、なんだか可愛い静岡ご当地社会人4コマ。

4コマの名門「まんがタイム」のエースとして作者キャリアハイの二桁巻数到達、円熟の10巻。

『ローカル女子の遠吠え』10巻より(瀬戸口みづき/芳文社)

なんだこれ可愛いというか愛おしいな。

「ネタ強」と「キャラ萌え・関係性萌え」を高次元で両立させ、オーソドックスながらフリからボケてツッコむラインがスムーズな会話芸、群像劇のチャーミングなヒロインたち一人一人がそれぞれ単独作品の主役を張れそうな強力な個性と魅力。

「BLっぽさ」「百合っぽさ」のフレーバーだけをおそらく意図的に香らせて、ネタで笑わせキャラと関係性で萌えさせるハイブリッドなスタイル。

ネタがシュール・ナンセンス寄りでないオーソドックス・スタイルな分、「シュール酔い」「ナンセンス疲れ」を起こさず無限に読める読み味なのも良いですね。

なお、令和の年の瀬の恒例となっております、

「AQM Award 2023『ローカル女子』で好きなキャラ部門」、

 通称「LOTY(ローカル女子・オブ・ザ・イヤー)」

については、審査員がヒロイン全員LOVEで「順番なんかつけられない」と審査不能となったため、中止にします。

 

 

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実録ガチ系の下ネタ・風俗ネタ・ドMネタ、お下劣でやたら面白い怪作 、「エムさん。」の作者。

無駄に女の子が可愛く「ヒロイン立ててストーリーもの描いてくんないかな」と思ってたら、カースト「下の中」の漫画オタクの男子中学生と、カースト上位でスカート短い美少女ギャルの、王道の隣の席ラブコメ。やったぜ!

陰キャな青春を過ごした作者が陰キャな少年を主人公に飛び切りの美少女との恋愛未満を妄想で付け加えて描くという、外形的に『僕やば』と共通する大きな特徴があるんですけど、それ以上に「あー、青春時代の後悔をずっと大切に抱えている作者なんだな」と強く感じて、だからこそ同じように後悔を抱えている自分はこの作品にも惹かれるんだろうなー、と思います。

陰キャな青春に妄想上のヒロインを放り込んでもフィクションでやり直しても、後悔は形を変えただけで結局存在していることは変わらない、苦い何か。

「修学旅行編」といえば、学園ラブコメの華。ネタバレですが、今巻でついに告白イベント発生。

という外形的にはラブコメのテンプレを踏襲しているように見せかけていますが、中身はもうめちゃくちゃですw

『わざと見せてる? 加茂井さん。』10巻より(エム。/双葉社)

青春の混沌、恋愛感情の混沌、創作論の混沌、混沌なまま一緒に鍋にぶち込んでよくかきまぜずに高温で煮込んで熱いうちにハイどうぞ、という感じ。

一旦、10巻到達と、二人の想いが成就したこと、おめでとうございます。

1巻以来追いかけてこの巻に出会えて、読んでて本当に良かったです。

 

 

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ラジオや映画、自動小銃はあるけど、TVやネットはなく、空軍はプロペラ機ぐらいの時代設定、島国アリストリアが舞台の架空戦記。

大陸政府の支配下で体制側である中央合議会とその正規軍の「島軍」、これに反旗を翻した「解放市民軍」による内戦。都市防衛を第一義とするも島軍に従属する「自警団」。

ヒロインは、島軍と解放市民軍の間で武器商の夫を殺され子を失い、復讐を誓う隻眼の未亡人。秘蔵の狙撃銃で自警団に参加し開花した天才狙撃手。

民族間の断絶から終結が見えない内戦の中で、状況に流されながら生き残るために戦うヒロインたち。

『GROUNDLESS : 11-勝利の女神-』より(影待蛍太/双葉社)

両軍のトップレベルのスナイパーチーム同士の、「後の先」、「迂闊に先に撃った方が負け」、の狙撃戦を、メタで単行本一冊、劇中で2週間かけてじっくりと。

終盤の決着からエピローグまでの、ラリってるというか、同じ漫画の同じ巻のたった数ページ差の誌面とは思えないテンションの乱高下、情緒不安定なメンタルの落差、画面の陰陽。

この戦いで敗れたスナイパーが背負っていた生き様と死に様が丁寧に描かれていました。スポットが当たると魅力的なキャラで、狂気に染まっていく心理描写の絵の表現も真に迫った見事なものでしたが、いずれにせよ死んで、もう登場しません。

エンディングのページがとても綺麗でした。一人も人間が出てこなかったので。

 

 

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久しぶりに『らーめん再遊記』らしく面白かったです。

本作途中から登場させた「便利な聴き手」若手のYouTuberグルタくんを逆に講師役に置いて、いつもは蘊蓄を語る側のハゲと有栖川を完全に聴き手の生徒役に、「インスタントラーメン最前線編」。

店舗ラーメンの最前線から降りたハゲが業界周辺を放浪し最終目標に向けて知見を拡げる、本作のコンセプトにうってつけのテーマ。

役割を逆転させることで作劇が「味変」されキャラの新たな一面も覗かせ、読者は好きなラーメンに関わる文化的な雑学も増える、といういいことづくめ。

最近は「またラーメン対決か…」ってなることが多かった自分にとって、読んでてとても楽しく、勉強になったエピソードでした。

ややもすれば「不味いラーメンをどうやって売るか」みたいな話にもなりがちなんですけど、今巻で登場したインスタントラーメンはどれも美味しそうにプレゼンされていて、ラーメンが美味そうじゃないとこの漫画やっぱダメだよな、とw

『らーめん再遊記』9巻より(久部緑郎/河合単/石神秀幸/小学館)

わかるけど、言い方と顔www

 

 

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人類が自ら開発した機械生命体に霊長の座を奪われた後、そのデウス・エクス・マキナ「超人機械」が忽然と姿を消してしまった。腐鉄菌の蔓延により科学文明は滅び、入れ替わるように超人機械が残した遺産、魔法・魔人・魔竜・怪蟲・樹海、そして不死者が遺された。

旧人・魔人はそれぞれに国家群を形成し、300年の永きに渡って戦争に明け暮れる、未来の地球。

旧人国家の兵器として利用される無限の人生に飽きた不死者アンダーは、戦場で心が触れ合いながらその死を傍観した魔人の少女・レコベルの消息と、世界を見下ろす「星形の星」を巡る真実を求めて、戦乱に満ちた世界を放浪する…

『堕天作戦』7巻より(山本章一)

一般論として、独自すぎる世界観・独特すぎる用語・多すぎるキャラと勢力・残酷な暴力描写が彩るこの作品は、楽しまれるにあたって読者の熟読による理解と記憶に依存していて、営利を求められる大手商業出版の編集者のテクニカルな創作メソッドからすると「面白いけど売れなさそうな、キャッチーじゃない漫画」に映っただろうな、と憶測してしまいます。

でもこの作品、この設定、この展開、このキャラでしか語れない人生・悲しみ・怒り・喜び・ドラマを、キャラの一人一人が背負っているように思います。

一読者としては、「売れるかどうか」より「面白いかどうか」を優先したのであろう作者の決断は英断だったと、小学館との円満契約解消・個人出版による継続に対する根拠のない憶測と仮定の上で、思います。

全然違う理由での契約解消だったらごめんなさい。

 

 

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2023年の3月10日に17巻が発売されたんですが、連載について毎号分、毎月割りと一生懸命書いているもんで、単行本が出ても特に新たに書くことがありまへん。

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なので毎回、FSSの単行本の感想記事は書くことに困ってます。

今年は幸い書くネタがあったんですが、3月以来「年末までに書けばいいや」と思ってるうちに、気がついたら年末になってしまいました。びっくりしちゃう。

自分は来年で50歳になりますが、うち37〜38年ぐらいFSSと永野護の読者でファンで信者です。

が、一度もまもるに会ったことがない!

ということで、自分が生きてるうちに永野護(写真右)に会いに(観に)行きました。

「喋るマイクぐらい自分で持て」

と思いました。

自分が生きてるうちにナマのまもるに会えたので、もういつ死んでも悔いは…

いやいや、『FSS』完結を見届けるまではAQMちゃんは死なへんでー!

17巻の中身は自分が唯一、漫画の連載の毎号ごとの感想を書いてしまうぐらい、面白かったです。

 

 

その他

★★★★

なんかいっぱいあるんでここから勝手に見てください。★5★4もたいして変わらず面白かったです。

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「なんで●●が入ってないんだ」と言われそうな漫画で言えば『望郷太郎』とか『海が走るエンドロール』とか『カノジョも彼女』とか『天幕のジャードゥーガル』とか『マズルカちゃん』とか『ジョニー・ライデンの帰還』とか『幼女戦記』とか『東京入星管理局』とか『売国機関』とか『気になってる人が男じゃなかった』とか『カナカナ』とか『ファブル』とか『化物語』とか『ふらいんぐうぃっち』とか『ヴァンピアーズ』とか『ブルーピリオド』とか『ヤニねこ』とか『くノ一ツバキの胸の内』とか『J⇔M』とか『空挺ドラゴンズ』とか『それでも歩は寄せてくる』とか『ブラック・ラグーン』とか『プラネットガール』とか『ハイスコアガール DASH』とか

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とかが自分は迷った末に★4でした。

理由は自分の好みでなんとなくと、「面白かった漫画400選」だとちょっと多すぎてブログ書くのも読むのも大変すぎるからです。「59選」も正直ちょっと多いね。

 

その他、漫画を読んでて印象に残ったことは

・漫画に限った話ではないですが、良くも悪くも「アイドル」「推し」という看板に注目が集まった年だったな、と思いました

アイドル

アイドル

  • YOASOBI
  • J-Pop
  • ¥255
  • provided courtesy of iTunes

・「(元)殺し屋もの」の作品が猛烈に増えてるような気がしました

・『図書館の大魔術師』『映像研には手を出すな!』で、表現規制をテーマにしたエピソードが、それぞれ規制する側・規制される側の視点で描かれました

・『GROUNDLESS』(双葉社 編集担当なし)に続いて『堕天作戦』(小学館→kindle個人)も編集担当者なしの体制で執筆されることになったようです

・今年も『王家の紋章』の新刊が出た一方で、今年も『ガラスの仮面』の新刊が出ませんでした

 

定期記録。

 

ちなみに、出版月報が季刊になってしまったので2022年11月時点のデータで恐縮ですが、

『出版月報』2022年12月号(全国出版協会/出版科学研究所 )

日本では漫画の新刊が2022年11月時点で「書籍扱い」「雑誌扱い」合計で11ヶ月で12,838点。

月に1000点以上、年間14,000冊のペースで発売されているんだそうです。

2023年も似たようなペースだとすれば、なるべく面白そうな漫画を選んで読んでるつもりの自分が読んだのはせいぜい全体の2〜3%ぐらい、この記事で取り上げた作品数は0.2〜0.3%ぐらいでしょうか。

 

今年もブログ更新いっぱいサボりましたが、日付を遡ってブログ更新できるはてなブログの謎の仕様を利用して未だに「毎日更新のふり」継続中です。

こういう励み?縛り?イキり?がないと全然ブログ書かなくなりそうよね。

来年は面白そうなのに未だ未読の↓のどれかを全巻読みたいなと思います。

乗り遅れ・読み損ねてた漫画で言うと今年は遅ればせながら『スキップとローファー』、『劇光仮面』、『ハイパーインフレーション』あたりは追いついたんですが、やっぱ巻数が多いと心理的に手を出しにくいし、自分のような暇人をもってしても物理的に時間が足りません。

 

じゃあ、おわりです。

来年も面白い漫画に恵まれますように。

 

よければ、あなたが読んで面白かった漫画の話も聞かせてください。

 

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