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インタビュー
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アメリカの民間企業Firefly Aerospace(ファイアフライ・エアロスペース)は2025年3月2日、同社の月着陸機「Blue Ghost(ブルーゴースト)」が月面への軟着陸に成功したと発表しました。 Firefly Aerospaceによると、Blue Ghostは日本時間2025年3月2日17時34分に月面へ軟着陸することに成功しました。民間企業の月着陸機による軟着陸成功は2024年2月にアメリカのIntuitive Machinesが行った月着陸機「Odysseus」による着陸以来2回目です。 【▲ 月面着陸に向けて動力降下を開始した月着陸機「Blue Ghost(ブルーゴースト)」のシミュレーション映像とオペレーションセンターの様子。Firefly Aerospaceのライブ配信から(Credit: Firefly Aerospace)】 【▲ 月面着陸直後の月着陸機「Blu
著者注: 本記事の内容は、2025年2月25日時点での情報をもとに構成しています。 【▲ 図1: ESO(ヨーロッパ南天天文台)の超大型望遠鏡(VLT)にて赤外線領域で撮影された2024 YR4。(Credit: ESO & O. Hainaut)】 2025年1月末頃から、「2024 YR4」という小惑星が2032年に衝突するかもしれないと話題になりました。大きめの小惑星としては衝突確率が比較的高く、小惑星衝突のリスクに関する指標である「トリノスケール」にて19年ぶりにレベル2以上の評価を受けたことから、かなり多くのメディアが取り上げたことも関係しています。 しかしながら、小惑星の衝突リスク評価を行うアメリカ航空宇宙局(NASA)や欧州宇宙機関(ESA)は、当初から「多くの場合、小惑星の衝突確率はやがて事実上ゼロになる」と説明してきました。そしてその言葉通り、本記事の執筆時点で、2032
地球に落下する天体は、大気で発光する火球が撮影されることがあり、また屋根や車などの人工物に隕石が衝突したことが記録されています。しかし、隕石が衝突する瞬間の映像と音声が両方とも同時に記録された事例はこれまでありませんでした。 2024年7月25日17時を少し過ぎたころ(※1)、カナダのプリンスエドワード島に天体が落下しました。この時、個人宅の玄関先に小粒の隕石が衝突する様子が、玄関に設置されたドアカメラに偶然記録されていました。「シャーロットタウン隕石」と名付けられたこの隕石は、衝突の瞬間の映像と音声が両方同時に撮影された世界初の事例であると見られています。 ※1…以下断りの無い限り、日時は落下地点の現地時間である大西洋夏時間で記述します。世界時への変換はプラス3時間、日本時間への変換はプラス12時間となります。 【▲ 図1: 玄関タイルに放射状に広がる塵の跡が隕石によるものであると分かっ
誕生直後の宇宙では、質量の小さい「原始ブラックホール」が多数生じたのではないか?という説があります。誕生直後の宇宙で銀河が誕生・成長する “種” となる可能性や、「暗黒物質(ダークマター)」の正体かもしれないと注目されていますが、今のところ原始ブラックホールは1個も見つかっておらず、そもそも存在しないのではないか?とする意見もあり、現状では賛否両論の状態です。仮に原始ブラックホールが存在したとしても、その小ささや数の少なさから、直接見つけるのは困難ではないかとも予測されています。 そこで、台湾の国立東華大学およびケース・ウェスタン・リザーブ大学のDe-Chang Dai氏と、ニューヨーク州立大学バッファロー校のDejan Stojkovic氏の研究チームは、天体や物体に原始ブラックホールが衝突した痕跡を見つける方法を提案しました。提案はいくつかありますが、中には「古い建物の建材を調べてみる
小惑星から直接採集したサンプルは、地球の生物に汚染されていないこと、大量に採集できないことから、最も貴重な科学サンプルです。このためサンプルの取り扱い時には、汚染に対して細心の注意が図られます。 インペリアル・カレッジ・ロンドンのMatthew J. Genge氏を筆頭著者とする国際研究チームは、宇宙航空研究開発機構(JAXA)の小惑星探査機「はやぶさ2」が採集した小惑星「リュウグウ」のサンプルを観察したところ、生物の細胞が付着していることを確認しました。 もちろんこれは地球外生物ではなく、地球のどこにでもいるありふれた細菌であることがすぐに明らかとなっています。また、細菌の成長度合いからすると、研究を行ったインペリアル・カレッジ・ロンドンでの取り扱い中に細菌が付着した可能性が高いと考えられます。 今回の結果は、小惑星のサンプルのような貴重品を取り扱う際には、普段している以上の汚染対策を行
アメリカ航空宇宙局(NASA)は惑星探査機「ボイジャー1号(Voyager 1)」に搭載されている送信機の1つが停止していた問題について2024年11月26日付で情報を更新し、送信機の再作動と通常運用の再開を発表しました。 停止していたXバンド送信機の再作動に成功 再作動したのは8.4GHz帯の電波を使用するXバンド送信機です。ボイジャー1号では2024年10月にXバンド送信機が停止してしまう問題が発生し、2.3GHz帯の電波を使用するSバンド送信機に切り替わっていました。Sバンド送信機はXバンド送信機と比べて消費電力が少ない代わりに信号が弱く、1981年以降は使われていなかった装置です。 NASAによると、ボイジャーの運用チームは2024年11月初旬にXバンド送信機を再作動させることに成功。11月18日の週(今回の発表があった11月26日の前週)からは、現在も稼働している4つの科学機器に
あなたがこの記事を開いてここにたどり着いた段階で、その星では数千 “日” が経過している……。宇宙には驚くべきことに、このような天体が存在します。 デンマーク工科大学のGaurava K. Jaisawal氏などの研究チームは、国際宇宙ステーション(ISS)に設置されたX線望遠鏡「中性子星内部組成観測装置(Neutron Star Interior Composition Explorer; NICER)」によって観測された中性子星の1つである「4U 1820-30」のデータ分析を行いました。その結果、4U 1820-30は1秒間に716回転という、極めて高速な自転をしていることが明らかにされました。この極端に高速な自転に匹敵する天体は他に1個しか見つかっておらず、知られている中で最も高速で自転する天体の1つとなります。 物質の究極の状態「中性子星」 宇宙には多種多様なタイプの天体がありま
アメリカ航空宇宙局(NASA)のジェット推進研究所(JPL)は2024年11月11日付で、NASAの惑星探査機「ボイジャー2号(Voyager 2)」による天王星の観測データを再検討した、JPLのJamie Jasinskiさんを筆頭とする研究チームの取り組みを紹介しています。研究チームの成果をまとめた論文は「Nature Astronomy」に掲載されています。 “横倒し”の惑星・天王星は磁場も特徴的 【▲ アメリカ航空宇宙局(NASA)の惑星探査機「ボイジャー2号(voyager 2)」が撮影した天王星(Credit: NASA/JPL-Caltech)】 ボイジャー2号は1986年1月に天王星のフライバイ観測を行いました。2024年11月現在、天王星に接近して観測を行った探査機はボイジャー2号だけ。その観測データは貴重なものであり、フライバイから39年近くが経った現在も研究の対象とな
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は日本時間2024年11月14日に観測ロケット「S-520」34号機(S-520-34)の打ち上げを実施しました。ロケットは正常に飛行し、鹿児島県の内之浦宇宙空間観測所の南東海上に落下したことをJAXAが発表しています。 打ち上げに関する情報は以下の通りです。 打ち上げ情報:S-520-34 ロケット:観測ロケットS-520-34 打ち上げ日時:日本時間2024年11月14日11時30分 発射場:内之浦宇宙空間観測所(日本) ペイロード:液体推進デトネーションエンジンシステム(DES2) 今回の観測ロケットS-520-34には液体推進剤を使用する回転(旋回型)デトネーションエンジンの宇宙空間での燃焼と推進性能のデータ取得を目的として、液体推進デトネーションエンジンシステム「DES2」が搭載されました。 JAXAによると、日本時間2024年11月14日11時3
「藤原道長」が詠んだと伝わる「この世をば 我が世とぞ思ふ 望月の 欠けたることも 無しと思へば」という著名な和歌、通称『望月の歌』は、寛仁2年10月16日(ユリウス暦1018年11月26日)に詠まれたとされています。歌の解釈は様々ですが、天文学的に言えば、道長が見たのは満月(望月)から少し欠けた月であったことは間違いありません。 旧暦10月16日に当たる(グレゴリオ暦)2024年11月16日、道長が見上げたであろう月とほぼ同じ形の月が夜空に昇ります。平塚市博物館は、「#道長と同じ月を見上げよう」と題するキャンペーンで、道長が見たであろうものとほぼ同じ月を観察し、SNSなどで共有することを呼び掛けています。奇しくも、翌日の11月17日に放送されるNHKの大河ドラマ『光る君へ』にて、この望月の歌が詠みあげられるとのことです。 1000年以上前に詠まれた『望月の歌』 【▲ 図1: 寛仁2年冬に書
「天文学的数字」とは、巨大な数に対する比喩表現としてよく使われますが、全く天文学と関係のない分野で、天文学の範疇に収まる巨大な数が出てくることは珍しいです。 ロシアの裁判所は2024年10月末、アメリカのインターネット企業「Google」に対し、動画配信サービスを提供する子会社「YouTube」がロシアの17の放送局チャンネルをブロックしているとして2澗ルーブル(約200溝ドル・約3澗円)の罰金を支払うよう命じました。 むろん、時価総額が約2兆ドルのGoogleが200溝ドルの罰金を支払うには長い年月がかかり事実上不可能ですが、では実際にそれほどの金額を一括払いできたらどうなるのでしょうか?本記事では実際に200溝ドルを1ドル紙幣で支払おうとした場合にどうなるのかを考察します(貨幣を1ドル紙幣とした理由は記事末尾の注釈※1を参照)。 天文学的な罰金はなぜ現れたかこの記事にたどり着いた人は、
ワシントン大学のJoshua Krissansen-Tottonさんを筆頭とする研究チームは、赤色矮星を公転する岩石質の太陽系外惑星が生命を支えられる安定した大気を保持できる可能性を示した研究成果を発表しました。研究チームの成果をまとめた論文は「Nature Communications」に掲載されています。 赤色矮星は太陽系外惑星を見つけやすいが活動性が高い 赤色矮星(M型星)は太陽よりも小さくて暗い低温の恒星で、天の川銀河ではありふれた存在です。太陽系外惑星の多くはトランジット法や視線速度法といった手法を用いて発見されていますが、恒星に対する惑星の半径や質量の比率が赤色矮星では大きくなる傾向にあるため、より大きな恒星と比べて惑星を見つけやすいという特徴があります。トランジット法と視線速度法については以下の関連記事の解説をご覧下さい。 関連記事 ・6光年先のバーナード星で太陽系外惑星が見
アメリカ航空宇宙局(NASA)は2024年10月28日付で、惑星探査機「ボイジャー1号(Voyager 1)」に搭載されている送信機の1つが停止していることを明らかにしました。発表時点ではしばらく使われていなかった別の送信機を経由して通信が再確立されており、通常の運用に戻すための作業が進められています。 【▲ アメリカ航空宇宙局(NASA)の惑星探査機「ボイジャー(Voyager)」の想像図(Credit: NASA/JPL-Caltech)】 1981年以降使われていなかったSバンド送信機経由で通信中 NASAによると、停止したのは8.4GHz帯の電波を使用するXバンド送信機です。2024年10月18日にNASAのディープスペースネットワーク(DSN、深宇宙通信網)がボイジャー1号からの信号を捉えられなかったことで問題が発覚。2日前の10月16日にはボイジャー1号のヒーターの1つをオンに
オリオン座の1等星「ベテルギウス(オリオン座α(アルファ)星)」は、恒星の寿命の末期に当たる「赤色超巨星」であり、もう間もなく超新星爆発(II型超新星)を起こすと考えられています。しかし、それがいつであるかについては議論があり、議論の決着には、ベテルギウスにある2種類の変光周期(明るさの変化)の理由を解明する必要があります。 【▲ 図1: ベテルギウス(黄色の円盤)の周りを周回する伴星 “ベテルバディ” (白色の点)の想像図。 “ベテルバディ” からの放射は塵を押しのけるため、部分的に薄くなった箇所ではベテルギウスからの光が多く通るようになります。(Credit: Lucy Reading-Ikkanda(Simons Foundation))】 サイモンズ財団フラットアイアン研究所のJared A. Goldberg氏、ワイオミング大学のMeridith Joyce氏、そしてコンコリー天
アメリカの民間宇宙企業SpaceX(スペースX)は日本時間2024年10月13日、同社が開発中の新型ロケット「Starship(スターシップ)」による第5回飛行試験を実施しました。Starship宇宙船は宇宙空間を飛行後に大気圏へ再突入し、発射から1時間ほど後に予定通りインド洋への着水を行って飛行を終えています。 Starshipとは? Starshipは1段目の大型ロケット「Super Heavy(スーパーヘビー)」と2段目の大型宇宙船「Starship」からなる全長121mの再利用型ロケットで、打ち上げシステムとしてもStarshipの名称で呼ばれています。今回の飛行試験は2024年6月に続く5回目の無人飛行試験で、計画ではSuper Heavyブースターは発射約7分後に発射台へ帰還し、Starship宇宙船は発射約1時間5分後にインド洋の目標地点へ着水することになっていました。 関連
こちらはハワイのマウナケア山で撮影された「紫金山(ツーチンシャン、ツチンシャン)・アトラス彗星」(Tsuchinshan-ATLAS、C/2023 A3)です。国立天文台(NAOJ)ハワイ観測所のサポートアストロノマー、ベラ・マリア・パッセガー(Vera Maria Passegger)さんが、2024年9月27日と2024年10月2日の朝5時頃に撮影しました。 【▲ マウナケア山の中腹で2024年9月27日の日の出1時間ほど前に撮影された紫金山・アトラス彗星。左上に写っているのは月(Credit: Dr. Vera Maria Passegger/NAOJ)】 【▲ マウナケア山の山頂で2024年10月2日の日の出45時間ほど前に撮影された紫金山・アトラス彗星(Credit: Dr. Vera Maria Passegger/NAOJ)】 日の出前の空に長く尾を伸ばした紫金山・アトラス彗
宇宙航空研究開発機構(JAXA)は2024年10月8日付で、初期機能確認運用中の先進レーダ衛星「だいち4号(ALOS-4)」が、静止軌道上の「光データ中継衛星」との間で波長1.5μmのレーザー光を用いた通信速度1.8Gbpsの光衛星間通信に成功したと発表しました。 「だいち4号」は2014年5月に打ち上げられた陸域観測技術衛星2号「だいち2号(ALOS-2)」の後継機として開発されたJAXAの地球観測衛星で、2024年7月1日に「H3」ロケット3号機で打ち上げられました。「だいち4号」には「だいち2号」から能力が向上したLバンド合成開口レーダー(SAR)「PALSAR-3」と、船舶自動識別装置(AIS)の信号を受信して船舶情報を取得する船舶自動識別信号受信器「SPAISE3」の他に、静止軌道上の衛星と光衛星間通信を行うための低軌道衛星用光ターミナル「OLLCT」が搭載されています。 光ター
太陽系のいくつかの天体は「環」を持っています。また、現在は消えているものの、過去には環を持っていたと推定される天体もいくつかあります。では、私たちが住む「地球」には、現在では消えてしまった環があったことはあるのでしょうか? モナシュ大学のAndrew G. Tomkins氏、Erin L. Martin氏、Peter A. Cawood氏の研究チームは、「オルドビス紀」の中期から約4000万年の間に形成された21個のクレーターの分布が赤道付近に偏っていることから、今から約4億6600万年前の地球には環があったのではないかとする推定を発表しました。 また3氏は、当時の地球で起きた大規模な気候変動の原因は、環の影響による日射量の変化であるとも推定しています。オルドビス紀には気候変動に伴う生物の多様化と、その末期に地球史上2番目に大規模な大量絶滅が起きたと考えられています。生物の進化と絶滅に、環
こちらは「ろ座(炉座)」の一角にある「ハッブル・ウルトラ・ディープ・フィールド(Hubble Ultra Deep Field: HUDF)」で観測された銀河のペアを拡大した画像です。 【▲ ハッブル・ウルトラ・ディープ・フィールド(HUDF)で活動銀河核(AGN)が見つかった約104億年前の銀河を示した図。活動銀河核は超大質量ブラックホールの存在を示唆する(Credit: NASA, ESA, M. Hayes (Stockholm University), J. DePasquale (STScI))】注目は、拡大画像の注釈で示されている活動銀河核(Active Galactic Nucleus: AGN)の輝きです。これは質量が太陽の数百万~数十億倍以上に達する超大質量(超巨大)ブラックホールの存在を示唆しています。活動銀河核とは強い電磁波が放射されている銀河中心部の狭い領域のことで
【▲ 図1: 地球を固定して見た場合の、2024 PT5の位置の変化。黄線になっている範囲が、地球を重力的中心とする “第2の月” である期間となり、1周する前に地球周回軌道を離脱します。(Credit: Tony Dunn / 日本語の追加は筆者(彩恵りり)による)】 地球の近くを通過する小惑星は、時々地球の重力で捕獲されて周回軌道に乗る、一時的な “第2の月” となることがあります。ただし、大半はあまりにも小さいために観測されておらず、たまに見つかっても、その多くはロケットなどの人工物を誤認しているケースです。地球を周回する小惑星が真に天然の天体であった事例は稀であり、確実なものはこれまでに4例しかありません。 マドリード・コンプルテンセ大学のCarlos de la Fuente Marcos氏とRaúl de la Fuente Marcos氏の研究チームは、2024年8月に見つか
アメリカ航空宇宙局(NASA)のジェット推進研究所(JPL)は2024年9月10日付で、惑星探査機「Vayager 1(ボイジャー1号)」の姿勢をコントロールするために欠かせないスラスターの切り替えに成功したと発表しました。 1977年9月に打ち上げられたボイジャー1号は、2024年9月12日時点で地球から約246億km(約164天文単位)離れたところを飛行しています。JPLによると、ボイジャーに搭載されている2セットの姿勢制御スラスターと1セットの軌道制御スラスターは、推進剤タンクで使用されているゴム製ダイヤフラム(ダイアフラム)の経年劣化で生じる二酸化ケイ素によって配管が徐々に詰まり、推進効率が低下しているといいます。 姿勢制御スラスターを再び使用するための切り替えボイジャー1号では2002年にそれまで使用されていた姿勢制御スラスターのセットが詰まり始めたことから別のセットへの切り替え
【▲ Polaris Dawn(ポラリス・ドーン)ミッションのCrew Dragon(クルードラゴン)宇宙船を搭載したFalcon 9(ファルコン9)ロケットの打ち上げ。SpaceXのライブ配信から(Credit: SpaceX)】 アメリカの民間宇宙企業SpaceX(スペースX)は日本時間2024年9月10日、民間主導の有人宇宙飛行ミッション「Polaris Dawn(ポラリス・ドーン)」の打ち上げを実施しました。Crew Dragon(クルードラゴン)宇宙船「Resilience(レジリエンス)」は無事にロケットから分離されたことを、SpaceXがSNSを通じて発表しています。 打ち上げに関する情報は以下の通りです。 ■打ち上げ情報:ファルコン9(Polaris Dawn)ロケット:ファルコン9 ブロック5 打ち上げ日時:日本時間2024年9月10日18時23分【成功】 発射場:ケネデ
現代は人工知能(AI)によって作成された画像が広く流通し、一般の人々でも入手や使用が可能な時代を迎えています。そのためフェイク画像を見分ける方法は喫緊の課題となっています。特に人物のディープフェイク画像を検出する方法は重要性が増しています。 2024年7月にイギリスのハル大学(University of Hull)で開催された王立天文学会の全国天文学会議で興味深い研究成果が発表されました。それは画像に映された人物の目を見るだけでフェイク画像かどうか見分けることができるというものです。 【▲ 左側の人物が本物の画像で、右側の人物はAIによって作成されたディープフェイク画像。顔の下に示されている眼球の反射は、本物の人物の場合は一致しているが、偽物の人物の場合は(物理学の観点から)不正確である(Credit:Adejumoke Owolabi)】ハル大学大学院の修士課程に在籍するAdejumok
【▲ 図1: 今回アオと命名された697402番小惑星「2017 BX232」の、すばる望遠鏡における撮影画像。(Credit: COIAS & NAOJ)】 太陽系に無数に存在する「小惑星」は、一定の条件を満たすことで名前を付けることができます。命名に関するルールは比較的緩いため、フィクション作品に登場する架空の人物に由来する名称も多数あります。 国際天文学連合(IAU)の小天体命名作業部会(WGSBN)は、提案された小惑星の名称が適切かどうかを審査する作業部会です。このWGSBNが2024年9月2日付で発行した速報にて、697402番小惑星「2017 BX232」の名称として提案された「アオ(Ao)」が承認され、正式に命名されたことが公表されました(※1)。これは漫画作品『恋する小惑星(アステロイド)』の2人の主人公が交わしたある “約束” に由来しています。その理由は、同漫画の略称に
スペースワン株式会社は2024年8月25日、同社の「カイロス(KAIROS)」ロケット初号機の打ち上げ結果と2号機に関する記者会見を開催しました。 カイロスはスペースワンが開発した全長約18mの3段式固体燃料ロケットで、ペイロード(搭載物)の軌道投入制度を高めるための液体推進系キックステージを備えています。内閣衛星情報センターの「短期打上型小型衛星」を搭載した初号機は2024年3月13日に和歌山県のスペースポート紀伊から打ち上げられましたが、発射約5秒後にロケットの自律飛行安全システムによる飛行中断措置が自律的に行われて射場直上で爆発し、衛星の軌道投入には至りませんでした。 スペースワンによると、カイロスに使用される推進薬の燃焼速度を予測するプロセスに問題があり、実際の性能よりも高めの推力が出ると予測してしまったことが、初号機の飛行中断の原因だと判明しました。初号機の飛行計画はこの高めの予
【▲ SpaceXのCrew Dragon(クルードラゴン)宇宙船の窓越しに撮影されたBoeingのStarliner(スターライナー)宇宙船。2024年7月3日撮影(Credit: NASA)】 アメリカ航空宇宙局(NASA)はアメリカ東部夏時間2024年8月24日13時に記者会見を開き、Boeing(ボーイング)の新型宇宙船「Starliner(スターライナー)」による有人宇宙飛行ミッション「Crew Flight Test(CFT)」の一環として国際宇宙ステーション(ISS)に滞在しているNASAの宇宙飛行士2名について、Starlinerでは地球に帰還させないことを決定したと発表しました。 StarlinerはSpaceX(スペースX)の宇宙船「Crew Dragon(クルードラゴン)」とともにNASAのCommercial Crew Program(コマーシャルクループログラム、
【▲ 図3: 今回の研究により、深さ5kmより浅い地殻上部は乾燥している一方で、深さ11.5~20kmの地殻中部は岩石の隙間を液体の水が満たしている可能性が高いことが判明しました。(Credit: James Tuttle Keane and Aaron Rodriquez, courtesy of Scripps Institution of Oceanography)】 数十億年前の「火星」の表面には豊富な液体の水が存在していたと考えられています。この大量の水は、少なくない量が地下に染み込んで現在でも存在する、という説もありますが、どの深さにどのような状態で存在するのかは大きな謎でした。 カリフォルニア大学サンディエゴ校のVashan Wright氏とMatthias Morzfeld氏、およびバークレー校のMichael Manga氏の研究チームは、アメリカ航空宇宙局(NASA)の火
【▲ 図1: “マクスウェルの悪魔二重冷却トラップ”の全体像。1セントユーロ硬貨(直径約1.6cm)と比較するとそのコンパクトさが分かります。(Credit: BASE Collaboration)】 私たちの宇宙には「反物質」はほとんどありませんが、その理由はよく分かっていません。この謎を解決するために、反物質の性質を測定し、物質と比較する実験が行われていますが、精密な測定をするには課題がいくつもあります。 欧州原子核研究機構(CERN)の国際研究チーム「BASEコラボレーション」は、これまでで最も効率的な反陽子冷却装置“マクスウェルの悪魔二重冷却トラップ(Maxwell’s daemon cooling double trap)”を開発しました(※1)。この装置は、従来の100分の1以下の時間で反陽子を冷却することができるため、反陽子の性質の測定回数を増やすことができます。これにより、
「重力」はごく身近な力のひとつです。われわれ人間は地球上をふわふわ浮いているわけではなく、重力によって地上につなぎ止められていますし、どれほど高くジャンプしてもすぐに着地します。テーブルが大きく傾けば、その上に置いてあるものは床に向かってなだれ落ちます。 こうした現象はわれわれにとって“自然”なことであるため、ふだんから重力の存在を意識する人はあまりいません。しかし、重力は宇宙を形作る上で本質的に重要な役割を果たしてきました。重力が存在しなければ、太陽や地球はもちろん人間も誕生せず、「重力とは何か」などと頭を悩ませる者も存在しなかったはずです。 では、重力とはいったいどんな力で、ほかの力とは何が違うのでしょうか? 重力についての理解は時代によって変遷し、現在では重力の存在そのものに疑問を投げかける研究者もいます。後半となる本稿ではアインシュタインの重力理論から量子重力理論までの現代的な重力
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