この記事では2010年代のヒット曲10選を選出することを試みた。先に結果を示すと以下のとおりとなった。
- 2010年代の楽曲人気指標
- 選出方法
- 2010年 AKB48「ヘビーローテーション」
- 2011年 薫と友樹、たまにムック。「マル・マル・モリ・モリ!」
- 2012年 シェネル「ビリーヴ」
- 2013年 きゃりーぱみゅぱみゅ「にんじゃりばんばん」
- 2014年 松たか子「レット・イット・ゴー ~ありのままで~」
- 2015年 西野カナ「トリセツ」
- 2016年 RADWIMPS「前前前世 (movie ver.)」
- 2017年 星野源「恋」
- 2018年 米津玄師「Lemon」
- 2019年 あいみょん「マリーゴールド」
- まとめ
2010年代の楽曲人気指標
選出にあたって考慮した指標は以下のとおりである。
- Billboard JAPAN Hot 100
日本を代表する総合ヒットチャート。2016年まではCD偏重チャート設計のため楽曲人気動向と全く関係のない年間1位結果を出力した年もあるが、2017年以降はこれを改善させている。主な構成要素はCD売上、フル配信ダウンロード売上、MV再生回数、ストリーミング再生回数、ラジオエアプレイ数、カラオケ歌唱回数。
- 着うた売上
2000年代中盤の楽曲試聴方法の主流
- フル配信ダウンロード売上
2000年代後半~2010年代の楽曲視聴方法の主流。
- MV再生回数
2010年代以降の楽曲視聴方法の主流
- ストリーミング再生回数
2010年代後半以降の楽曲聴取方法の主流
上記内容は基本的に当ブログの以下記事に準拠している。
選出方法
基本的に各年の楽曲人気年間1位相当曲を選出するが、2010年から2016年までの期間においては、「日本音楽ヒットチャートのCD偏重問題」が発生していた。これは「国内に楽曲人気指標として使用可能な総合ヒットチャートが存在しない」という最悪の事態であった。詳細は以下記事で説明している。
このため当該期間においては楽曲人気年間1位相当曲を独自推定するほかない。当ブログではRIAJダウンロード認定に着目し、各年内に発売された楽曲の、当該年末までにRIAJより認定されたフル配信ダウンロード売上・着うた売上を「総合1得点=フル配信10万ダウンロード=着うた50万ダウンロード」として合算して推定した。2010年は年間シングルランキングで記録されたCD売上枚数も「総合1得点=CD10万枚」としてこれに加算しているが、2011年以降はCD売上が楽曲人気指標として一切使用不可能となったため集計対象外としている。
2017年以降はBillboard JAPANが楽曲人気指標として使用可能な総合ヒットチャートを復活させたため、Billboard JAPAN Hot 100の年間1位を参照している。2019年はHot 100の年間1位が2018年のそれと同一であるため、代わりに構成要素の中でも特に重要な楽曲人気指標であるストリーミング再生回数を集計したチャートBillboard JAPAN Streaming Songsの年間1位を参照している。
これらの結果と、その他の主な指標の年間1位結果を並べた「2010年代の主要楽曲人気指標 年間1位変遷表」は以下のとおりである。
2010年 AKB48「ヘビーローテーション」
「ヘビーローテーション」は2010年8月に発売されたAKB48の17thシングル。本曲は2010年選抜総選挙で番狂わせの1位を獲得した大島優子がセンターを務めたことや、ナポレオンジャケットやランジェリーに身を包んだMVが話題となった。
2010年内の売上だけでCD71万枚、フル配信60万ダウンロードを記録しており、当ブログが推定する楽曲人気年間1位となった。各指標の累計はフル配信150万ダウンロード、着うた75万ダウンロード、MV1億再生にまで伸びている。DAMカラオケランキングでは2011年から2012年にかけて2年連続年間1位を獲得している。
2011年 薫と友樹、たまにムック。「マル・マル・モリ・モリ!」
薫と友樹、たまにムック。「マル・マル・モリ・モリ!」は、人気子役の鈴木福と芦田愛菜が出演していたドラマ『マルモのおきて』内の役名で発売した楽曲である。その子供らしい素朴な歌唱や可愛らしい振り付けが話題となったことや、ドラマが最高視聴率23.9%を記録する右肩上がりの人気となったことなどから大ヒットした。
2011年内の売上だけでフル配信60万ダウンロード、着うた75万ダウンロードを記録しており、総合得点ではAKB48「Everyday、カチューシャ」と同点となったが、発売から当該得点到達までの速さから「マル・マル・モリ・モリ!」が当ブログが推定する楽曲人気年間1位となった。RIAJ有料音楽配信チャート(着うたフル)やレコチョク着うた売上ランキングでも年間1位を獲得している。累計ではフル配信ダウンロードミリオンに達している。
2012年 シェネル「ビリーヴ」
シェネル「ビリーヴ」は同名3rdオリジナルアルバムのリードトラックとして2012年6月に配信された楽曲で、映画『海猿』シリーズの第4作『BRAVE HEARTS 海猿』の主題歌に抜擢された壮大なバラードナンバー。持ち前の圧倒的な歌唱力に加え、外国人とは思えないほどの表現力で日本語詞も歌われており、映画が持つ力強さとも密接にリンクする楽曲になっている。映画が興行収入73億円の大ヒットを飛ばしたこともあり本曲の魅力も広く普及し大ヒットとなった。
2012年内の売上だけでフル配信50万ダウンロードを突破しており、これは2012年発売曲で唯一であることから、当ブログが推定する楽曲人気年間1位となった。iTunesダウンロード売上ランキングでも年間1位を獲得している。各指標の累計ではフル配信ダウンロードミリオンに達している。
2013年 きゃりーぱみゅぱみゅ「にんじゃりばんばん」
「にんじゃりばんばん」は3月に発売されたきゃりーぱみゅぱみゅの5thシングル。中田ヤスタカによるプロデュースのもと多くのヒット曲を輩出していたきゃりーぱみゅぱみゅだが、本曲は和風のテイストが効いたサウンドになっていることが特徴的であり、語感を重視した歌詞と相まって中毒性を有していた。auのCMソングに起用されたことも普及を後押しした。
2013年内の売上だけでフル配信60万ダウンロードを突破しており、これは2013年発売曲で唯一であることから、当ブログが推定する楽曲人気年間1位となった。iTunesダウンロード売上ランキング、レコチョク着うた売上ランキング、YouTube音楽動画ランキングでも年間1位を獲得している。
2014年 松たか子「レット・イット・ゴー ~ありのままで~」
松たか子「レット・イット・ゴー~ありのままで~」はディズニーアニメ映画『アナと雪の女王』の日本語版劇中歌である。映画が国内興行収入254億円を突破する歴史的ヒットとなったことから楽曲も大ヒットした。個性の解放を高らかに歌うこの曲は劇中展開に欠かせない重要な曲であったが、映画以外でも個性を認めることを励ます場面で使われ、社会現象となった。さらに松たか子の澄んだ歌声やあえて原曲より印象を柔らかくした訳詞が日本語版ならではの魅力を引き出していたことも大ヒットに繋がった。
2014年内の売上だけでフル配信ダウンロードミリオンを突破しており、ダウンロード市場が縮小している中にあって発売年内ミリオン認定は西野カナ「会いたくて 会いたくて」以来4年ぶりとなる快挙であった。当然2014年発売曲でも唯一の達成であり、当ブログが推定するまでもなく確実にこの年の楽曲人気年間1位である。iTunesダウンロード売上ランキング、レコチョクフル配信ダウンロード・着うた売上ランキング、YouTube音楽動画ランキング、DAMカラオケランキングでも年間1位を獲得しており、各指標を席巻した。
2015年 西野カナ「トリセツ」
「トリセツ」は2015年9月に発売された西野カナの27thシングル。興行収入24億を記録した人気映画『ヒロイン失格』の主題歌に起用された。歌詞が女性版「関白宣言」のようだと話題になるなど人気を集めたことなどから楽曲は大人気を博した。
2015年内の売上だけでフル配信50万ダウンロードを突破しており、これは2015年発売曲で唯一であることから、当ブログが推定する楽曲人気年間1位となった。各指標の累計ではフル配信ダウンロードミリオン、ストリーミング1億再生(RIAJ)に達している。西野カナはこの年Billboard JAPAN Artist of the Yearを前年に続き2年連続で受賞した。
2016年 RADWIMPS「前前前世 (movie ver.)」
RADWIMPS「前前前世 (movie ver.)」は新海誠が監督を務めたアニメ映画『君の名は。』の劇中歌で、映画公開1ヶ月前の2016年7月から配信のみで先行発売された。映画は興行収入250億円を記録するほどの社会現象となり、楽曲も勢いのあるキャッチーなメロディーや映画にリンクした歌詞が支持された。
2016年内の売上だけでフル配信75万ダウンロードを突破しており、これは2016年発売曲で唯一であることから、当ブログが推定する楽曲人気年間1位となった。ラジオエアプレイ数を集計したチャートBillboard JAPAN Radio Songsでも年間1位を獲得している。各指標の累計ではフル配信ダウンロードミリオン、MV3億再生に達している。
2017年 星野源「恋」
「恋」は2016年10月に発売された星野源の9thシングル。最高視聴率20.8%を記録した大人気ドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』の主題歌に起用された。前向きになれる明るい曲調や「恋ダンス」と呼ばれたキャッチーな振り付け、対象を限定しない普遍性の高い歌詞が支持され、一大ムーブメントを巻き起こした。
Billboard JAPAN Hot 100では当時の週間1位常連であった関ジャニ∞、Hey!Say!JUMP、NMB48、Mr.Childrenらを次々と2位止まりにする形で週間1位街道を驀進し、通算11週1位と年間1位を獲得した。レコチョクフル配信ダウンロード売上ランキングやDAMカラオケランキングでも2017年の年間1位を獲得している。各指標の累計はフル配信200万ダウンロード、MV2億再生、ストリーミング1億再生(RIAJ)を突破している。
2018年 米津玄師「Lemon」
「Lemon」は米津玄師の8thCDシングル表題曲として2018年2月に先行配信された楽曲で、最高視聴率13.3%を記録した人気ドラマ『アンナチュラル』主題歌に起用された。他界した祖父への想いをベースに「死」をテーマに作られた本曲はドラマの内容ともリンクし、とてつもない支持を獲得した。
Billboard JAPAN Hot 100では通算7週1位を獲得し、年間では2018年から2019年にかけて史上唯一となる2年連続年間1位を獲得した。レコチョクフル配信ダウンロード売上ランキングやDAMカラオケランキングでも2年連続年間1位を獲得しているほか、YouTube音楽動画ランキングでも2018年の年間1位を獲得している。各指標の累計はフル配信300万ダウンロード、MV9億再生、ストリーミング4億再生を突破している。特にMV再生回数は国内史上最多記録を樹立している。
2019年 あいみょん「マリーゴールド」
「マリーゴールド」は2018年8月に発売されたあいみょんの5thシングル。ノンタイアップでありながらも、音楽フェスでの披露を重ねながらストリーミングを中心に懐かしさを感じさせるサウンドが支持を広げていき、年末歌番組での連続的な披露を決定打に大ヒットに至った。そのため2018年よりも2019年に人気のピークを迎えることとなった。
Billboard JAPAN Hot 100では自身初の週間1位を獲得し、年間でも2019年の2位を獲得。Billboard JAPAN Streaming Songsでは2019年の1位を獲得した。なお本曲は国内アーティスト史上初めて累計ストリーミング再生回数1億突破を果たした楽曲として歴史に名を残している。各指標の累計はフル配信75万ダウンロード、MV3億再生、ストリーミング7億再生を突破している。
まとめ
以上が簡潔な2010年代のヒット曲総括となる。
2010年代は音楽ヒットチャートが混迷を極めていたため、「今年はヒット曲が1曲もなかった」というような論調が毎年蔓延していたが、こうしてデータを整理すれば、2010年代も毎年ヒット曲が生まれていたことがはっきりと確認できる。いつの時代も、音楽は身近にあり、ヒット曲は生まれていく。ヒットを映す鏡さえ見落とさなければ、音楽が終わることはない。2020年代はストリーミングサービスがますます普及し、ヒットの鏡として大きな機能を果たしている。引き続き多様な楽曲との出会いを楽しみにしながらヒットチャートを追い続けていきたい。