自分の時代を大切にしたいなと思った

古い本なのだけど、この本を読んでる。

ほぼ日刊イトイ新聞の本 (講談社文庫)

ほぼ日刊イトイ新聞の本 (講談社文庫)


クリスマスシーズンになるとバブルの頃を思い出す。
一年中浮かれていた時代だけれど、そのピークは忘年会、クリスマスの連なる12月にあった。


有名どころのレストランで、客は全員が同じコース料理を食べ(全席カップル、メニューはコース料理一本のみ、開始時間も 2本立てで入れ替え制、時にはワインさえ“この3つから選んでください”などと言われ)、その後は一流ホテルのロビーで、長蛇の列に並んでチェックイン。もちろん、前後左右みんなカップル。

ティファニーを始めとする宝飾店は、バレンタイン前のチョコレート屋みたいな混み具合で、カップルに混じり、同じネックレスを「コレ10個下さい」みたいに購入してる男性もいた。

今ならすぐに「なんと滑稽な!」とわかるけど、当時はみんな必死にまじめだった。



バブルの頃、最もイケイケに景気が良かったのは、金融業界、不動産業界、そして広告業界だった。糸井重里さんは、当時“コピーライター”として絶頂期にあって、個人としては数少ない、バブルの峰の頂点を歩いてる人だった。

そういう人が、バブルの終焉とその後の時代をどう生きてきたかについて追体験した気になれるのが、冒頭に上げた『ほぼ日刊イトイ新聞の本』です。


今や一日のPVが150万以上の“ほぼ日”、そのトップページにあるように、1998年6月6日に立ち上げられたこのサイトは、これまで15年弱、一日も休まず毎日更新されている。


本の中では、糸井さんらしいナイスな言葉で時代の変化が語られる。

ぼくが94年の末くらいから釣りに凝りだしたのは、そのときはそう思わないようにしていたけれど、広告の世界に嫌気がさしたからだと思う。逃避と言ってもいいだろう。
僕が釣りにはまっている間に、広告の世界の感じ悪い変化は、さらに激しくなった。

ただ、他人の思惑に自分の人生が左右されていくという予感は、どうにも耐えられないものだった。

自分でイニシアティブを握って行う仕事には、真の喜びや楽しさがある。実現するための労力を惜しまないだけ、これ以上はないというくらいの達成感が味わえる。

ぼくは「アイデアこそが、人間の英知だ」と思って生きてきた。
それなのに、そのアイデアを活かしてクリエィティブの仕事をして生きていくには、ぼくくらいの歳になってくると、引退するか、威張るかの道しか残されていないのだ。

ぼくは11月10日、49歳の誕生日をきっかけにして、東京・秋葉原の電気街へパソコンを買いに行った。
(中略)
「メールとインターネットだけ使えればいいんだよ」
とぼくは遠慮がちに言ったと思う。


こうして“ほぼ日”は始まった。



こんな提灯記事を書くなんて、ちきりんも“ほぼ日”に出たいんだな、って?


・・・そういう発想自体が、まさにあの時代のものだよね。

「有名な人、一流のメディアに取り上げて欲しい!」と切望すること自体が、あまりにもかっこわるい。

あたしが目指すとしたら、それは自分が“ほぼ日”に“出して貰う”ことじゃなく、「Chikirinの日記」に糸井さんに出て貰うことだよん! と言えたりするのが今の時代であり、「そもそも有名人でアクセス数を稼ごうとかいう発想自体が、どうなのよ」な時代にすらなっている。



年末のホリデーシーズンを迎えると、いつもバブルの頃を思い出す。

時代は変わる。必ず変わる。すべての人は、時代と共に生きていくしかない。不景気に生まれたからって、嘆いていても仕方ない。いい時代に生まれたからって、それにしがみついてても仕方ない。

すべての人は時代から逃れられない。だからこそ、自分の出会った時代を大切にすべきなんだなと、この本を読んで、思った。



49歳で、初めてパソコン(マックですが)を買った人が、一日150万PVのサイトを作り上げた。

過去を懐かしんでいるだけの人と、時代と共に前に進もうとする人は、見える地平が全く異なってくる。
そんな気がした本だったよ。


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そんじゃーね!

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