原子力消極的賛成派の方々へ その1
原発反対論に思う
発生以来1ヶ月が経過したのに、福島第一原発の事故は一向に収まりそうにない。発電所自体の事故収束はいつなのか、放射能の拡散はどのくらいなのか関連地域の住民の不安、不信は大きくなる一方である。
当然予想されたように、原発反対の意見が勢いを増している。ここで注意したいのは、原発をこれまで容認していた人たちも、決して手放しで全面的に賛成していたわけではない、ということだ。つまり、我々の日常生活に必要な電力需要確保のために原発なしではエネルギー政策は成立しないと考え、多くの人たちは原発に消極的に賛同していたのだ。
この視点で考えると、原発反対論に欠けているのは、次の2点である。
第1に、仮に原発を認めないとして、代替の電力エネルギーをどうするかの議論である。皆が期待する太陽光、風力などはまだ安定した電力供給とは成りえない。
水力も頭打ちである。となると石油、石炭などの化石燃料に依存するしかない。これに依存した時生じる地球温暖化はどうなるのかに、まともな返事は聞こえてこない。
第2に、となると電力需要をどう抑制するのかの視点が欠かせない。しかしながら原発反対の論者には全くと言っていいほど、具体的提案がない。
おそらく便利になりすぎた日常生活を、30〜40年ほど前に戻すぐらいの覚悟がないと原発反対に現実味がないのだ。さらに、国民に対してこれらの課題をどう実行させるかの具体策も必要だ。
以上、2点についての国民的な検討は不可欠である。単に原発は嫌だからという感情論だけでは、議論は進まない。(安曇野)
(経済気象台 朝日新聞 2011,4,22朝刊)http://www.asahi.com/business/topics/column/TKY201104230279.html
いやあ、馬鹿な文章ですね。この経済気象台は「この欄は、第一線で活躍している経済人、学者など社外筆者の執筆によるものです」
とありますが、いつも“第一線で活躍している経済人、学者”なる連中のくだらなさが引き立つ晒し者企画として読んでますが、それにしても原発厨のテンプレみたいな文章に笑い転げてしまいました。ついでに云っておけば、この(安曇野)なる人物のコラムはいつもこんな文章ばかりです。
まず、日本におけるエネルギー政策がまったく理解できていません。原発は繋ぎのエネルギーだが、無くすなら代替エネルギーが必要、というのは、TMIでもチェルノブイリでも言われていた言葉だというのは既に前回エントリーで示したとおりですが、その後、エネルギー需要を抑制していこう、という政策は取られなかったわけです。むしろ、あのバブリー全盛の80年、90年代と比べても1.6倍以上の電力消費。原発ももちろん増加したわけです。原発消極的賛同者、はそうした状況をどう判断します?消極的容認、というなら、電力需要抑制には積極的賛成するべきだったと思いますけどね。実際には、電力需要も原子力も、消極的容認=やむをえない選択、繋ぎの手段だ、などという考えなどせせら笑うように拡大されてきたわけです。
ですから、本当に消極的賛成なら、原発廃止にコミットしたって大丈夫ですよ。原子力はそれこそ政財官学全部が総動員で進んできたんですから。
地域独占企業の電力会社が広告をマスコミに出すのも、文科省が副読本に原子力を教えるのも、地域に電源三法交付金をばらまくのも、反原発活動に公安調査庁や公安警察が監視を強めるのも、芸能人に原発の宣伝させ、拒否すると締め出すのも、電力事業に参入すると買電価格を低く抑えるのも、自民党議員に献金を行い選挙に関連企業社員を動員するのも、全部原子力を進めるためなんです。
あなたが少々反対を唱えたところで簡単に止まるようなものではありません。むしろ、皆が原発反対を叫んで、ようやく増設が止まる程度のものでしょう。それくらい、原子力推進の慣性は大きいものなのです。
でも、代替エネルギーが問題じゃないか、ですって?そりゃ、誤解です。代替できるだけの技術はあります。単に、実行に繋げようとしないだけの問題です。むしろ、「代替エネルギーは役立たない」と宣伝し続けたのが問題。まあ、かつて散々騒いでいた「原子力は安価」というヨタ話は、今回の事故で誰から見ても化けの皮が剥げましたから、そちらはいいでしょう。莫大な公的関与なしには原子力は進まなかった。アメリカでは冷戦時には原発建設が進みましたが、電力自由化が進むと割に合わなくなります。
東電・東芝参加の米原発増設断念へ 操業見通し立たず
http://www.asahi.com/business/update/0420/TKY201104200151.html
(参考)それでも…オバマ大統領は原発推進路線を堅持
http://www.yomiuri.co.jp/world/news/20110331-OYT1T00407.htm
不思議なことに、何かにつけて「民営化」が大好きな方々が原子力賛成なのが面白いですね。公的関与なしには建設も宣伝も維持管理もリスク管理も出来ないのが原子力なのに。
でも、目端の利く人々は、すでに代替エネルギーに注目し、投資しています。
今回、孫さんの意見表明に注目が集まりましたが、
「脱原発」財団設立へ ソフトバンク・孫社長が10億円
http://www.asahi.com/business/update/0420/TKY201104200522.html
Google社なんかも、すでに自然エネルギーへ投資しています。
参考:Why all the questions?
http://www.google.com/green/
IBM、ソーラーファーム技術の飛躍的な前進を発表
http://www-06.ibm.com/jp/press/2008/05/1603.html
IBM社もコツコツ研究を進めていますが、面白いのは、上記サイトの技術は元々は原子力関係技術の一種だったのです。原子力ではなく太陽光へ応用をシフトした、その意味を考えてみるべきですね。
また、以前説明したように、原子力自体持続しようがありません。可採年数は最大で2桁。気張って使えば、すぐに尽きます。リスクと勘案した場合、最初から利用に適していなかったのです。ですから原子力を続けても先はありません。ウランが尽きたらどうするんでしょうね?消極的賛成派からは、そのへんが伝わってきたことがありません。
高速増殖炉?すでに説明済みですが、代替エネルギーとは比較にならないほど先の見通しが立っていません。というか、
高速炉もんじゅに出た『生殺し』死亡宣告
http://blog.dandoweb.com/?eid=108141
実証炉段階で、再稼働してすぐに死亡宣告。税金垂れ流し状態。こうしてみると、原発推進派はお花畑野郎としか言いようがないですね。しかも、福島第一原発の陰に隠れてますが、六ヶ所村の再処理工場もにっちもさっちもいってません。
六ヶ所村の再処理工場完成延期、2千億円コスト増
http://www.asahi.com/business/update/0221/TKY201102210397.html
日本原燃の川井吉彦社長は21日の原子力委員会の会合で、青森県六ケ所村の使用済み核燃料再処理工場の完成を2年延期したことに伴い、事業費のコストが2千億円強増えることを明らかにした。各電力会社などに4千億円の増資を募っており、自己資金でまかなうという。
再処理工場は、各地の原発で燃やした核燃料から、再利用可能なプルトニウムなどを取り出す施設。昨年9月、それまでより2年遅い2012年10月に完成を延期した。完成前の試運転で、トラブルが出たことなどが原因だ。
追加のコストは、完成延期でかかる追加工事や人件費の増加によるもの。直接電気料金に反映されるわけではないが、再処理の経済性を疑問視する専門家もいる。
原燃が再処理事業を国に申請した89年当時、完成は97年12月、建設費用は7600億円で済む予定だったが、計画はこれまでトラブルなどで18回も延期され、建設費も現在まで2兆1930億円に膨らんでいる。(小堀龍之)
六ヶ所 : 六ヶ所再処理工場竣工を2年延期―むつ中間貯蔵施設着工、脱再処理への議論を!
http://www.cnic.jp/modules/news/article.php?storyid=953
こうした状況を無視して「原発は現実的」というのはやめません?次回は想定される疑問に応えていきます。
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