ロード・オブ・カオス

劇場公開日:

ロード・オブ・カオス

解説・あらすじ

ブラックメタル黎明期の中核的存在だったノルウェーのバンド「メイヘム」の狂乱の青春を鮮やかに描いた音楽映画。ノンフィクション「ブラック・メタルの血塗られた歴史」を原作に、ブラックメタル・バンド「バソリー」の元ドラマーで、「SPUN スパン」などで知られるヨナス・アカーランド監督がメガホンをとった。1987年、オスロ。19歳のギタリスト、ユーロニモスは悪魔崇拝主義を標榜するブラックメタルバンド「メイヘム」の活動に熱中していた。ボーカルのデッドはライブ中に自らの身体を切り刻むなど過激なパフォーマンスを繰り返し、彼らはメタルシーンで熱狂的な支持を集める。しかしある日、デッドがショットガンで頭を撃ち抜いて自殺してしまう。発見者のユーロニモスは脳漿が飛び散った遺体の写真を撮り、頭蓋骨の欠片を友人らに送付し、喧伝することでカリスマ化。「誰が一番邪悪か」を競い合うインナーサークルを作り、王として君臨するが、メンバーのヴァーグが起こした教会放火事件をきっかけに主導権争いが激化していく。ユーロニモス役に「スクリーム4 ネクスト・ジェネレーション」のローリー・カルキン。

2018年製作/117分/R18+/イギリス・スウェーデン・ノルウェー合作
原題または英題:Lords of Chaos
配給:AMGエンタテインメント、SPACE SHOWER FILMS
劇場公開日:2021年3月26日

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(C)2018 Fox Vice Films Holdings, LLC and VICE Media LLC

映画レビュー

4.0恐ろしくて悪魔的だが、魅せる。

2021年3月30日
PCから投稿

恐ろしく邪悪な作品だ。危険で痛くて悪魔的。R-18指定なので、事前にどのような描写が含まれるのか確かめてからご鑑賞されることをお勧めする。とはいえ、ノルウェーにおける90年代ブラックメタルの勃興期に起こったこの事件は、音楽ファンでなくとも多少は知るところのもの。事実をもとにしている強度や語り口の巧さゆえか、何度も顔を背けはしても、ことの顛末を見届けたいという思いだけは確実に高まっていく。登場人物は皆ぶっ飛んでいて、観客にとって共感可能な何かを秘めているわけでもない。ただ、主演のローリー・カルキンだけは別。時に常軌を逸しつつも、どこか透明感があり、暴走の中に怖れがあり、ふとした瞬間に夢から醒めたような瞳をする。そんな心の咆哮に寄り添いつつ、映画は徐々に彼を突き放して闇を深めていく。その熱さと冷たさの波状攻撃。悪魔的な情熱というある種のシュールさ。止められない狂気。強烈だが見応えはある作品だ。

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牛津厚信

5.0「マリリン・マンソンも所詮エンタメ」by大槻ケンヂ

2024年5月6日
スマートフォンから投稿
鑑賞方法:VOD

悲しい

怖い

MAYHEMもBURZUMも初期の楽曲は結構好きで聴いていましたし、ブラックメタル界隈では教会を燃やしたとか死んだ殺した殺されたなんて話があったのも知っていました。本作はその「事実」を再現しつつ、当事者達の内面に迫ろうという作品。狂った青春物語でもあり、問題提起でもあります。

いわゆる「マウント合戦」の成れの果てでもありますが、徐々に本物の狂気へと悪化していく様は現代社会に通ずるものがあり、他人事と思えません。ネット上でも「にわか」「もぐり」などの言葉で煽ったり、いかにバズるかを競い合ったり。

社会的な地位が不安定な若者は、時に自身の存在をアピールするために過激な行動に出たりします。是非この作品を観て冷静になって欲しいです。まぁ、流石にここまでやる人はいない…あ、いたからこの作品があるんだよな(怖)自分がおかしな方向へ向かってないか、有名になったりバズったりすることがそんなに大事なことなのか、別の方法があるんじゃないか…血にまみれたこの映画を観て考えてみましょう。

なんか真面目な話をしましたけど、本作の他の見どころもざっくり。

・登場人物がテレビで「死霊のはらわた」「ブレインデッド」を観ている!
・MAYHEMの代表曲、Funeral Fog、Freezing Moon等が聴ける!(一部のみ)
・かのマコーレー・カルキンの実弟ロリー・カルキンが主演!
・ナイフで人を刺すシーンや、自身の身体を切り刻むシーンが結構多いので要注意!

レコードを売りたいだけの「ポーザー」か、思想を実行に移す「本物」か。その間で揺れる若者達の純粋で狂気に満ちた悲しい物語です。

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吹雪まんじゅう

4.0悪魔になれない人間vs悪魔になった人間

2024年2月18日
iPhoneアプリから投稿

ノルウェーは自然豊かで国民の幸福度も高く、毎年多くの自殺者が出る。それは独裁者とキリスト教に支配された結果である。

本当の自分とそれを守るための自分のせめぎ合い。
正気でいると死にたくなるから、ハッタリをかまして強く見せたかった。そんな中途半端な悪魔の主人公。

誰しもが自己防衛のハッタリを行う。それは時が経てば、揺らいでしまうし、崩れてしまう。嘘なんてそんなもの。人間とはどこまでも中途半端な存在であることを感じさせてくれる作品!

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エレベーターガール

3.5すねかじりの筋金入り

2023年10月3日
PCから投稿
鑑賞方法:VOD

笑える

怖い

興奮

ノルウェーと言えば、民主主義ランキング一位、報道の自由度ランキング一位と、万年下位に甘んじている日本にとっては憧れの北欧の国。そんな国でもこんなバカな事件は起こるんだというお話。

元々この辺りでは北欧神話が人々の信仰の対象であり、異教徒であるキリスト教による侵略を受けた歴史は最近の映画「ノースマン」でも描かれていた。
だからこそ北欧では反キリスト教的な考えが根強いのかもしれない。アンチキリスト教としての悪魔崇拝。でも結局はその崇拝した悪魔によって身を亡ぼすというお話。

音楽にさほど興味がない自分としてはヘヴィメタルもブラックメタルも違いなんてわからない。とにかく頭振り回してロン毛を振り乱して激しい音で騒ぎ立ててるような。
音楽で有名になりたいんなら、純粋に音楽だけで勝負すればいいものを何かと目立つために過激なパフォーマンスを続けてそれに歯止めが利かなくなり、メンバーの死を招いてしまう。普通に考えたらデッドの死は止められたはず。それがライブで受けたもんだからリーダーのユーロニモスは危険な行為も容認してしまう。
それどころかバンドを売るためにデッドの死体を撮影してジャケット写真として利用する悪乗りっぷり。メンバーの一人はあきれて脱退する。
ただ、いくら悪魔崇拝者といってもすべては売れるためのハッタリだった。真の彼はデッドの遺体を前にして泣きじゃくる普通の青年だった。彼はこの時点でまだ引き返すことができた、悪魔の誘惑に飲み込まれずに。
だが、勢いでメンバー同士がどれだけ過激なことをやれるかとたきつけてしまったもんだから、魔に受けた、もとい真に受けたメンバーたちの行為は過激度を増して殺人まで犯してしまう。
ヴァーグなどは更に過激になり、有名な大聖堂に放火しようと言い出す。そんな状況でも権威ある音楽雑誌に取り上げられてしまったがためにユーロニモスはメンバーを利用しようとする。しかし自分たちばかりを利用し何もしない彼に反感を覚えたヴァーグは反旗を翻す。最終的にはユーロニモスはヴァーグに惨殺されてしまう。

彼らはノルウェーに住むごく普通の青年たちだった。悪魔だなんだと虚勢を張ってはいるが、親と同居するただのすねかじりだった。

所詮ハッタリとわかっていながらも集団内部で相乗効果が働き、とんでもないことを引き起こしてしまう。これはどこの国にでも起こりうる、条件さえそろえば。

米国議会襲撃事件を扇動した極右団体プラウドボーイズはその半分は最初からハッタリで襲撃する気なんかなかった。それが彼らに煽られた人間が実際に襲撃してしまい、五人もの犠牲者を出した。
日本ではオウム真理教によるテロ事件などもそうだ。信者一人一人はいたって普通の大人しいまじめな人間ばかりだ。それが教祖に扇動されて恐ろしいことを何の躊躇もなく実行してしまった。

個体では大人しいバッタやイナゴが群れになったとたん狂暴になり農作物を荒らしまわるように、人は群れると一人ではできなかった大胆な行為ができたりする。集団が生み出すそういった空気が人間の心の中の悪魔を降臨させるのかもしれない。

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レント

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