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「SX銘柄」選定企業が語る“SXの定義”──無形資産が重視されるからこそデータ化の仕組み整備を

すべてのコアとなるデータを経営に昇華させていく「SX by DX」

 経済産業省と東京証券取引所は2024年4月、SX(サステナビリティ・トランスフォーメーション)を通じて企業価値向上を実現する企業群を「SX銘柄」として初めて選定・表彰した。あらためてSXとは何か、SX銘柄として選定する背景には何があるのか。選定企業の一つである日立製作所でサステナビリティ推進に携わり、同時にESG情報開示研究会 共同代表理事を務める増田典生氏に話をうかがった。

2024年「SX銘柄」が初選定 DX、SX、GX……違いは?

 DX銘柄に続いてSX銘柄とはいかに。用語を確認しながら話を進めていこう。SXとはサステナビリティ(持続可能性・持続性)・トランスフォーメーション(変革)の略だ。経済産業省はSXを「社会のサステナビリティと企業のサステナビリティを同期化させ、そのために必要な経営・事業変革を行い、長期的かつ持続的な企業価値向上を図っていくための取組」と説明している。

 DXが技術やデータを通じて事業を変革していくものだったのに対し、SXは企業と社会の持続性に向けて経営や事業を変革していくものとなる。ポイントは、企業が持続させていくのは企業(自社)だけではなく社会も含まれ、それらを同期化させるところにあるという点だ。

 企業にとって自社の持続性は最重要テーマであり、経営者としては死守したいところ。ただし自社の持続性しか目を向けず、社会や環境に悪影響を及ぼしてしまう企業も過去にはあった。それに現代は地球環境や地政学などあらゆる変化が急速に進む時代でもある。そうした教訓や背景があり、企業が企業と社会の持続性を同期化することの重要性が高まっているのだ。

 ちなみに、SXと混同しやすい用語として「GX(グリーン・トランスフォーメーション)」を耳にしたことがないだろうか。こちらはグリーン(環境)に配慮した持続可能な社会に向けた変革を指し、具体的には温室効果ガス排出削減や再生可能エネルギー導入などが該当する。地球環境保護と経済発展を両立させるコンセプトを表している。

 企業と社会の持続性を同期させることの重要性は今に始まったことではない。様々な社会問題や課題を通じて、教訓が語り継がれ、意識が醸成されてきた。しかし、実はそれだけではなさそうだ。

 日立製作所でサステナビリティ推進に携わり、同時にESG情報開示研究会で共同代表理事を務める増田典生氏は「企業価値(時価総額)における無形資産の割合が増えている」と指摘する。

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日立製作所 サステナビリティ推進本部 主管
一般社団法人ESG情報開示研究会 共同代表理事 増田典生氏

 S&P500を対象としたある調査結果によると、かつては企業価値のほとんどが有形資産(土地・建物、機械・設備、在庫など)で占められていた。現在では逆転し、無形資産(知的財産権、ブランド価値、ノウハウ、ソフトウェアやデータなど)が大半を占めている。SXに取り組むことで無形資産を伸ばし、すなわち企業価値が高まり、投資家の目にとまりやすくなるのだ。

 そうした背景があり経済産業省は「SX銘柄」を公表し、先進的なSXの取り組みが日本企業に普及すること、国内外との投資家とのつながりが広がること、ひいては資本市場における日本企業の評価が向上していくことを期待している。

 増田氏は過去を振り返り「世界最大の資産額を持つGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)がPRI(責任投資原則)に署名したことがエポックメイキングでした」と話す。これがSXやESG投資への注目が高まる契機になったという。なお、PRIはESG(環境・社会・企業統治)に関する要因を考慮した投資を促進するための国際的な枠組みとなる。

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ESGを1つの“ストーリー”にして発信していくことが重要

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この記事の著者

加山 恵美(カヤマ エミ)

EnterpriseZine/Security Online キュレーターフリーランスライター。茨城大学理学部卒。金融機関のシステム子会社でシステムエンジニアを経験した後にIT系のライターとして独立。エンジニア視点で記事を提供していきたい。EnterpriseZine/DB Online の取材・記事も担当しています。Webサイト:https://emiekayama.net

※プロフィールは、執筆時点、または直近の記事の寄稿時点での内容です

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