琥珀色の戯言

【読書感想】と【映画感想】のブログです。

『琥珀色の戯言』 の「2021年に読んだ本ベスト5」


「今年の振り返り」で、新型コロナウイルスの話を2021年もすることになるとは……
 歴史上も、感染症の大流行は数年単位で再燃を繰り返しながら収束していっているので、「こういうもの」ではあるのでしょうけど。
 

 恒例の「今年、このブログで紹介した本のベスト10」です。
 ……と言いたいところではあるのですが、今年は「セルフ働きかた改革(まあ仕事じゃないんですが)」「ネット活動ダイエット」の一環として、長年毎日更新していたこのブログを、基本週3回更新に変更したため、紹介した本の数も少なく、「ベスト5」とさせていただきました。


「ベスト5」ということで順位はつけていますが、どれも「本当に多くの人に読んでみていただきたい本」です。


<第5位>2016年の週刊文春

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 この本、花田紀凱さんと新谷学さんという、『週刊文春』の黄金時代をつくった2人の名編集長を軸に、「雑誌界の銀河系軍団」と称される『週刊文春』の編集者、外部記者たちの活動と、『文藝春秋』という組織の盛衰が描かれています。
 花田紀凱さんに対しては、僕自身は「西原理恵子さんにマンガでさんざんネタにされていた人」「ナチスユダヤ人虐殺はなかった、という記事を載せて、『マルコ・ポーロ』を廃刊に追い込んでしまった人」というのが主なイメージだったのですが、この本を読むと、本当に雑誌が好きで、編集者が天職の魅力的な人だったことが伝わってきます。

週刊文春』は、日本に残された、唯一の「メジャーであり続けているジャーナリスト集団」なのかもしれません。
 「親しき仲にもスキャンダル」を貫くのって、キツイことですよね。
 書く側も「人間」であることが、あらためて伝わってくる本でした。

 取材する側も、「さすが!」と褒められたり、「取材される側の気持ちも考えろ!」と罵倒されたり、けっこうきつい仕事だよなあ。
 「ネットで人々に褒められるような政治家の不祥事よりも、怒られる芸能スキャンダルのほうが売れる」のも事実なのです。



<第4位>グリーン・ジャイアント 脱炭素ビジネスが世界経済を動かす

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 脱炭素、地球温暖化対策のため、というのは「人類にとって良いこと」だという大義名分があるのですが、実際にこれだけ推進されてきているのは、「人類の未来を守る」ためだけではないのです。
「脱炭素」は「これからの世界経済の柱となる新しいビジネス」であり、「お金になるから、環境対策競争が世界中で行われている」のです。「人類にとって良いことかもしれないけれど、コスト面ではマイナスだからな……」というのは、時代遅れなんですね。

 綺麗事ではない「環境ビジネスの現在」が一冊にまとまっている、良質の新書だと思います。
 「やっぱり金目かよ……」みたいな気分にもなりますが、人間を動かすのは「利益」とか「欲望」なんだよなあ。



<第3位>禍いの科学 正義が愚行に変わるとき

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 著者は、この本のなかで、7つの「世界最悪の発明」を紹介しています。
 アヘン、マーガリン、化学肥料(の研究から生まれた化学兵器)、優生学ロボトミー手術、『沈黙の春』によって使われなくなったDDTノーベル賞受賞者による「ビタミン過剰摂取健康法」。

 これらの7つの「発明」は、すべて、人々の「善意」から生まれたものなのです。
 苦痛を緩和したい、飢餓をなくしたい、地球を環境破壊から守りたい……
 ところが、こうした、善意からつくられたものたちが、「兵器」よりも、多くの人の命を奪ってきた、というのが「科学の歴史」の一面なのです。

 後世からみれば「なんであんなことをやったんだ……」というような事例も、当時の人々は、本気で「それが正しいと信じていた」。たぶん、われわれがいま「科学的に正しい」と思ってやっていることだって、未来の人類(ではないかもしれないけれど)からすれば、「未知であるがゆえの愚かさ」だったと見なされることになるものが少なからずあるはずです。

 「科学的」であるということは、「正しく疑うこと」でもあるということを考えさせられる本です。



<第2位>同志少女よ、敵を撃て

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 先日(12月27日付)感想を書いたばかりなので手短に。
 胸が締め付けられるような緊張感に浸りながら、ひたすら戦場を「読む」ことで、「戦争とはどういうものか」を考えずにはいられなくなる。それでいて、極上のエンターテインメントでもある小説だと思います。



<第1位>嫌われた監督 落合博満は中日をどう変えたのか

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 カープファンの僕にとっては「何を考えているのかよくわからない人」であり、「日本シリーズ完全試合目前だった山井投手を9回に替えた」落合博満監督。あれだけの実績を残しながら、中日の監督を退いてから、「現場」で采配を振るうことがない人。
 結果を残す監督とは、リーダーとは、こんなことを考えていて、ここまで孤独なものなのか、と圧倒されました。
 それと同時に、「落合流」が正しいのか、この人だからこそできたことではないのか、とも考えてしまうのです。
 野球ファンだけでなく、誰かを指導する立場であれば、読んでみてほしい一冊です。


というわけで、『琥珀色の戯言』の2021年のベスト5でした。

 今年は紹介した本もこれまでより少なかったし、僕自身の読書量も減っていて(老眼、というのはけっこうつらいものですね。10代の頃は、本の字なんて小さければ小さいほど得した気分になれたものだけれど)、毎年やっているこの企画も「もういいかな」と思いつつ、未練もあってやりました。人が何かをはじめることは難しいけれど、はじめたことがそれなりに軌道に乗ってからやめるのもなかなか難しい。


 ちなみに、今年いちばん読まれたのは、この本の紹介でした。


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 あと、今年は「書評」「批評」についても考えさせられました。
 「本の感想」「本を誰かに薦める」のもいろんなスタイルがあって良いのです。
 ただ、僕はクラシカルな「先人の『文脈』を踏まえての批評」に敬意を抱いていますし、そういう書評は(あまり読まれなくても)世の中に必要だと考えています。
 僕は「老害」と言われるのを恐れて沈黙したり、自分を曲げてしまったりするよりも、それなりに生きてきた経験に基づいて、リングに立ち続けるつもりです。「老害」は存在するかもしれないけれど、「老」=「害」じゃない。ネットは、「老害」だけじゃなくて、「内容も吟味せずに、ただ、『老害だ』と繰り返し、揚げ足を取るだけの若い人たち」による『若害』も生み出している。これもまた「若」=「害」のはずもないのですが。


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 とりあえず、来年は遠近両用メガネをつくらなくては。
 
 それでは皆様、よいお年を!


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