本しゃぶり

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人付き合いって大事かなと思ったら読みたい3冊

人付き合いは大切だと言われるが、実際どれくらい大切なのか。
俺みたいなタイプは知識として教えて欲しい。

人脈と成功の本はこれを読め。

やっぱり人脈か

学生時代に触れた言葉で印象に残っているものがある。それは「人・本・旅」だ。ライフネット生命の出口治明の言葉で、彼は人間が学ぶ方法はこの3つだと常々言っている*1。俺はこれを読んだ時に思った。

「俺は人に会うのは好きじゃないから、代わりに本を倍読もう」

それで積極的に本を読み、年に一回は旅に出るということを続けてきた*2。だが、色々と本を読み続けたことで、あることに気がつく。人と会い、繋がりを作ることは重要ではないか、と。

もしかしたら「学び」だけなら「本」と「旅」だけでもそれなりに得られるかもしれない。だが「成功」を求めるならば、「人」の比重が多いようだ。俺が読んできた様々な本で、「人脈」や「人的ネットワーク」の重要性が語られていた。また、社会人として仕事をしていく中でも、繋がりによって問題が解決したことが何度もある。年々、知識としても経験としても、人の重要性が俺の中で高まっているわけだ。

そんなわけで最近、人脈に関する本を読み返したり、新たに読んだりしている。その中から学生時代の俺におすすめしたい本を3冊紹介しよう。

『ネットワーク科学が解明した成功者の法則』

タイトルはダメそうな感じがプンプンするが、中身はガチ。ネットワーク科学の専門家が、ネットワークの構造やダイナミクスを分析することで、成功の法則を明らかにする本だ。著者は本書を「セルフヘルプ (自己啓発) 本」ではなく「サイエンスヘルプ本」であると述べているだけあって、様々な研究を引用しながら成功を分析していく。今回紹介する中でどれか1冊と言われたら、俺はこの本を推す。

そんな本書を読むと何が言えるのか。しばらく前に読んだこれをネタに説明しよう。

もしあなたが成功したい場合、大谷翔平のように飲み会よりもスキルアップを優先すべきなのか、それともおとなしく先輩に付き合うべきなのか。その答えはあなたのパフォーマンスではなく、活動する分野で決まる。

本書はまず「パフォーマンス」「成功」を分けて考える。パフォーマンスとは、達成した行為だ。製品を完成する、論文を発表する、試合に勝利する。これらは全てパフォーマンスだ。対して成功とは、「属する社会から受け取る報酬」と定義している。製品の売上、論文の引用回数、スポンサーの数。これらが成功である。

プレイヤー パフォーマンス 成功
メーカー 製品の完成 製品の売上
科学者 論文の発表 論文が引用される
アスリート 試合の勝利 スポンサーの数

どんなに優れたパフォーマンスを発揮しても、それを社会が認識しなければ成功ではない。成功は社会がパフォーマンスをどう捉えるかで決まるのだ。そしてパフォーマンスがどのように捉えられるかは、分野によって異なる。

著者らが最初にパフォーマンスと成功の関係を調べたのは男子プロテニスであった。男子プロテニス教会は全試合を正確に記録して、試合結果を元に各プレイヤーにポイントを与える。これによって個人のパフォーマンスを正確に測定できるというわけだ。成功については、スポンサー契約による収入が適しているのだが、直接的なデータが無い。そこでスポンサー契約とファン数は相関しているという前提から、どれくらい注目されているか定量的に分かる指標としてWikipediaのアクセス数を採用した。一定期間における選手のWikipediaページのPVが多ければ、その選手は成功しているとしたわけだ。

ではパフォーマンスと成功はどのような関係があったか、その答えは以下のサイトで自由に確認・分析できる。

とはいえ自分で確かめる人はほとんどいないだろうから、結論だけ教えよう。男子プロテニスにおいては、パフォーマンスが成功と直結している。

ランクとPVの相関 / untangling tennis visualization

あまりにも直結しているので、著者らは選手の試合結果に応じて、選手のWikipediaページのPVを正確に予測できたという。ゆえに、成功したければ飲み会なんかに時間を使わず、自身のパフォーマンス向上に専念すべきというわけだ。

だがこれはあくまでも「男子プロテニスの話」である。先程も述べた通り、これはパフォーマンスを正確に測定できる分野だ。ではパフォーマンスの測定が難しい分野なら? 著者らが選んだのはアートだった。

アートのパフォーマンス (品質) を測定するのは難しい。あの『モナ・リザ』でさえ、1911年に盗み出されるまで地味な扱いを受けていた*3。逆に工業製品でさえもアートとして評価されたら、レプリカでさえ法外な金額で取引される*4

Marcel Duchamp, Public domain, via Wikimedia Commons, Link

アートはキュレーターなどの専門家によって評価されるので、著者らは名画検索アプリ「Magnus」*5のデータを活用することにした。このデータにはアートの価格だけでなく、アートがどのように美術館やギャラリーを渡り歩いてきたかなども調べることができる。もちろんアーティストの経歴も分かる。これによってアーティストの成功指標であるアートの取引価格が、何によって決まるのかを調べたわけだ。

結果、重要なのはネットワークのハブであることが判明した。アートが美術館やギャラリー間を移動する様子をマッピングすると、膨大なノードと接続されたハブが現れる。アメリカならばニューヨーク近代美術館グッゲンハイム美術館などがそれにあたり、これらのハブは欧州の美術館と密接につながっていた。

美術館のネットワーク / Quantifying reputation and success in art. Fig. 1. Coexhibition network.

そのようなハブに作品が展示されると、そのアーティストは成功へのルートを歩み始めたことを意味する。名だたる美術館やギャラリーに展示されることで「この作品は素晴らしい」と保証され、それを描いたアーティストの評判は高まる。他の絵画も売れ始め、価格は急騰していく。まぎれもない成功者の一員となるわけだ。

だが困ったことに、ハブから遠い美術館で展示されることは、成功に繋がらない。ここで言う「遠い」とは物理的な距離ではない。ネットワークとしての距離である。上のネットワーク図は、美術館のある国で色が決まり、固有ベクトル中心性で大きさが決まっている。同じ色だからといってネットワーク上では近いとは限らず、大きいノードは大きいノードで固まっている。つまりどのクラスタに所属するかで、どれだけ成功するかが決まるというわけだ。

このようにパフォーマンスを測定できない分野では、成功はネットワークで決まる。この場合、認められる程度には技術が必要だが、キーマンとの繋がりがなければ話にならない。間違いなくパーティーや飲み会のような場の重要度は高いだろう。

ここで最初の疑問に戻る。成功したい場合、飲み会には出るべきか否か。それはあなたが活動する分野が、どれだけパフォーマンスを測定しやすいかで決まる。テニスや野球のようにパフォーマンスが測定しやすい分野ならば、スキルアップに専念しよう。だがアートのように測定できないのであれば、人脈作りに投資すべきだ。そしてだいたいの人は俺も含め、この中間にいる。ゆえにバランスをとることが肝心となる。

長々と紹介してきたが、以上は本書で紹介される「成功の第一の法則」をかいつまんで取り上げたに過ぎない。成功の法則は全部で5つある。そして読み進めるほどに、人脈の重要性が身にしみて分かる。人付き合いを避けるのは自由だが、それによって何を失うのかを知るために本書を読んでおきたい。

『人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている』

はてなでお馴染みid:fromdusktildawnの単著。人脈が成功する上で重要なのは分かったが、まずどのような方針で動けばいいのか。そう考えた時に一番参考になると思ったのが本書だ。特にこの記事のテーマが「学生時代の俺におすすめしたい」であることを考えると、読みやすい本書を選ばない手はなかった。

本書は著者のブログで5章まで無料公開されているし、発売してから時間も経っているから説明は最低限にしておこう*6

タイトルの「人生」とは、先に紹介した『成功者の法則』における「成功」のことだと思えば良い。「なぜあんな人が評価されるんだ?」とか「仕事上での価値を高めたい」と考えている人に対し、「錯覚資産」という切り口で成功の秘訣を説明していく。

「錯覚資産」とは、自分に対する他人の認知バイアスの内、自分にとって都合よいものをまとめて指した、本書独自の概念だ。錯覚資産の例としては「ハロー効果」が挙げられる。あることに秀でていると認識させると、他のことでも秀でていると勘違いしてもらえる。すると全体として評価が上がるし、チャンスを与えられやすくなる。まさしく相手の「勘違い」が資産のように働くわけだ。

本書はこのような形で、認知心理学やネットワーク科学の要素を上手くパッケージングしている点が肝である。正直なところ、本書でも紹介されている『ファスト&スロー』*7などの行動経済学の本や成功本などを読んでいる俺にとって、個々の要素に目新しいものは本書が出版された2018年の時点でも無かった。紹介されている心理学の研究も、定番の手堅いものばかりであるし*8

だが知識を「知っている」「使える」は別の話である。最初に書いた通り、俺は人付き合いや人脈を軽視していたわけだ。それは本書を読んだ頃は昔に比べたらマシになっていたけれども*9、まだ積極的に行動に移せていなかった。本書は仕事において認知バイアスなどの知識をどう活用すべきかを教えてくれる点で価値がある*10

付け加えると、俺の中で本書の評価は先に紹介した『成功者の法則』を読んでさらに上がった。というのも、錯覚資産の有効性が『成功者の法則』でデータと理論で示されたからだ。錯覚資産が重要なのはそれで「成功のループ」が回るからなのだが、そこの根拠が弱いと感じていた。それが『成功者の法則』で報酬には「転移性」があると述べ、成功においてもマタイ効果はあると知る。ならば成功の一歩を踏み出すために、錯覚資産を活用するべき。そう思ったわけだ。

そして次に紹介する本も、本書と合わせて読みたい。

『GIVE & TAKE「与える人」こそ成功する時代』

錯覚資産について知った人の中には、こう思う人も出てくるだろう。「よし、何でもかんでも自分の成果にしてやるぞ」と。少なくともBingはそう思っている。

このモンスター・ブロガー、なんてひどい主張をするんだ

ならば方針は決まったも同然。労力と失敗を他人に押し付け、成果は全て自分のものにする。そんな収奪者を目指すべきだ。『成功者の法則』にも「実作業に汗を流した者と栄誉を授かる者とは別」とか「功績を認められるのはひとりだけだ」と書いてあった。成功はこの手で他人から奪い取るもの!

そんな先走る人に本書『GIVE & TAKE』は待ったをかける。テイカー (奪う人) ではなくギバー (与える人) こそが成功者となれるのだ、と。

なぜギバーが成功するのか。結局はここでも人脈が大きなカギを握る。ギバーは相手に対して親切に振る舞うので、人脈は時間が経つに連れて広がっていく。誰だって自分に対して優しい人と付き合いたいものだし、自分から奪うような人とは付き合いたくない。当然、人脈は広いほうがその分チャンスがやってくる可能性は大きい。

また、ギバーは好感を持たれるため、何をしてもプラスに働きやすい。成功したら尊敬され、弱みを見せたら親近感を持たれるという感じに。これがテイカーだと、印象が逆に働いてしまう。成功したら嫉妬弱みを見せたら付け込む機会とみなされるわけだ。つまりギバーは成功のマタイ効果が働きやすいが、テイカーだと逆になってしまうわけである。この違いが長期的に見た時に大きな差となる。

もちろんギバーだからといって成功が保証されているわけではない。本書によれば、ギバーは成績が上位と下位の両極端に分布しているという。下位に位置するギバーは、搾取されてしまったタイプだ。親切であることに付け込まれて、美味しいところを奪われてしまう。そうなると成功からは遠ざかる。ゆえに親切に気前よく振る舞うことは大事だが、搾取してくる相手に対しては毅然として立ち向かう。それが正しい振る舞い方だ。

今回紹介した中で、本書だけは本しゃぶりで何度か取り上げている。

本書を読んでから、俺は付き合いよくなることはできなくても、せめて親切に振る舞おうと意識するようになった。愛想の無い俺が問題なく社会人生活を送れていくのは、本書のおかげであるかもしれない。

終わりに

人脈と成功を結びつけて語る本はそれなりに読んできたが、とりあえず基本方針については今回紹介した3冊を読めば十分ではないかと思う。後は細かいテクニックについて学ぶのもいいけれど、それより実践の方が重要だろう。読んでも行動に移さなくては意味がない。そのことは俺が保証する。

なので俺も、そろそろ本格的に人付き合いを意識して増やそうかと考えている。既に先日実行したばかりであり、この勢いを失いたくない。ということで興味ある人いたら声かけて。このGWに関東なら都合つきやすい。

だいたい予定が埋まったので、今回のGWの募集は停止します。今回は無理でもいつか会いたいという人は、次の機会に。

春に読みたい本を紹介するタイプの記事

*1:代表例:賢くなるために大切なのは人・本・旅……出口治明 | ライフネットジャーナル オンライン

*2:旅に関してはコロナで中断したが。

*3:これについて詳しく知りたい人は右の記事を参照。『鬼滅の刃』大ヒットの理由が見つかることは無い - 本しゃぶり

*4:デュシャン「泉」のレプリカの一つは、2002年に約2億円でオークションにて落札された。

*5:Magnus – Scan and Discover Art by Artace Inc.

*6:それに長々と書くとボロが出て、著者から容赦ないツッコミが来そうだし。

*7:『ファスト&スロー』と聞くと、「あれって再現性が微妙な研究も多かったのでは」と思う人もいるだろう。そのことは著者も把握しており、ブコメで言及している。本書で紹介されている研究は、註の通り他でも確認されていると考えてよさそうだ。

*8:これは面白みという観点ではマイナスかもしれないが、再現性の観点ではプラスである。実際、巻末で「あえてそうした」と書いている。人生は、運よりも実力よりも「勘違いさせる力」で決まっている - 註 - ふろむだANNEX

*9:それこそ『残酷すぎる成功法則』などを読んで、人脈が重要であるという知識を仕入れていたので。

*10:あと俺の場合は、記事を書く上でも参考になった。

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