結社
結社(けっしゃ、英語:association)は、共通の目的のために組織される継続的な団体のこと。なお、associationは協会と訳されることが多いが、協会は結社の一形態である。
概要
編集人類の社会形成の歴史の中で血縁と地縁が2大紐帯原理であるが、約束に基づく紐帯原理も原始農耕に前後する時代まで遡れる[1]。一定の約束のもとに個人で形成される約縁集団を利益集団、または結社と呼ぶ。個を重視する結社の仕組みは近代思想への足掛かりとなり、人々の流動性が高まった近世以降の都市社会の発達とともに、多くの人々がなんらかの組織に帰属するようになった。結社は自己実現を目的とした集団として、アイデンティティの拠り所となっていった。
綾部恒雄は結社について次のように定義している。
結社は共通の目的のもと、人為的に結成する、継続的な団体である。自然発生的な共同体・地域社会とは結成の経緯で、集会とは継続性の有無で区別する。
日本では、日本国憲法に定められている「結社の自由」によって、政治的なものだけでなく、さまざまな結社を組織することが保証されている。憲法上では、自然発生的なものを含め、団体の総称が結社である。
しかし、民法上は個人か法人しかなく、法人は民法第三十三条「法人は、この法律その他の法律の規定によらなければ、成立しない。」により、それぞれの法律上の要件を満たさないといけない。民法第三十三条二項「学術、技芸、慈善、祭祀、宗教その他の公益を目的とする法人、営利事業を営むことを目的とする法人その他の法人の設立、組織、運営及び管理については、この法律その他の法律の定めるところによる。 」とある。
組織名は、民法上の法人と誤解を与えることは好ましくない。法人格を有する組織は、「結社」という用語を使用するのではなく法人格を示す用語を使う。法人格を取得していない場合は、俳句・短歌・川柳の団体で用いることがある。左翼団体、右翼団体では、「政治結社」、秘密結社と呼ぶことがある。
結社は「党」「派」「組」「流」「会」「社」など、どのような組織名を名乗っても自由である。しかし、法人格がない場合には、法人と誤解される組織名を名乗ることはできない。たとえば、政党内の派閥が「組」を名乗るなどはあまりなされない。また、日本における「赤十字社」のように、法律によって組織名を規定している団体名は、関係がない者は名乗れない。
結社の歴史
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民俗学的視点からは、未開社会においては一定の年齢・年齢階級に従い、極めて呪術宗教的な各種のイニシエーション=加入儀礼を行う[2]。こうした共同体・地域社会では、結社・秘密結社は宗教儀式と密接に関わる[3]。一例としては、後述の「結社#ズニ族の例」も参照。
文学における結社
編集小説、映画などには「秘密結社」がよく登場するが、現代社会において「結社」の語をよく用いるのは主に歌壇や俳壇や柳壇である。
歌人、俳人、柳人は短歌作品、俳句作品の発表の場として、短歌結社、俳句結社、川柳結社に所属し、その結社の発行する雑誌に投稿するのである。これは明治期に短歌、俳句がそれまでの芸事から、近代的な文学芸術へと改革されて以来の伝統である。
また、漢詩においては中国の北宋の頃から詩人の集まりである「詩社」が結成され、前記の短歌などの結社同様の活動を行っていた。
短歌結社の例
編集- 一般社団法人
- 法人以外の組織
俳句結社の例
編集川柳結社の例
編集- 番傘「番傘川柳」
ズニ族の例
編集アメリカ(メキシコ)先住民のズニ族の場合、呪医結社が存在することを、ルース・ベネディクトが紹介している[4]。それによれば、秘伝の知識を、生涯を通して少しずつ学ばせていくとされ、上位の階級に進むごとに、その入会式の際に教えられる。また、この呪医に治療され、回復した患者も、その医師の集団(結社)の正式な成員にならねばならないという決まりがある(治療した患者が多ければ、会員も増えることになる)。
ズニ族の考え方では、「戦闘儀礼の結社」「狩猟儀礼の結社」「道化儀礼の結社」といったこれら諸々の結社は、呪医結社と一緒であると定義されている。ただ、R・ベネディクトは異なる点も指摘しており、例えば、戦闘結社に入るためには、「誰かを殺した人のみ」と定められており、この時、殺害した事情は全く問題としていない。そこには、血を流した人達は誰でも「自分の生命を救う」ため、生命を奪われる危険から逃れるために加わるという考えに基づき、この戦闘結社に入った者は、村の治安を維持する義務が課せられる。狩猟結社の成員も男だけの会員であり、医師ではなく、道化結社も呪医とは異なるとしている。しかし、著しい相違が確認できるにもかかわらず、ズニ族はこれら諸々の結社を呪医結社と一つのものと考えている。
関連項目
編集文学に関するもの
編集短歌結社、俳句結社、川柳結社については#短歌結社の例、#俳句結社の例、#川柳結社の例、を参照
歴史上の用語
編集歴史上の事件・結社(日本)
編集歴史上の事件・結社(世界)
編集結社への規制
編集その他
編集脚注
編集参考文献
編集- 綾部恒雄、福田アジオ(編)、2006、「刊行にあたって」、『結衆・結社の日本史』1、山川出版社〈結社の世界史〉 ISBN 4634444100