コンテンツにスキップ

シンビン

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

シンビンsin bin または sin-bin)は、ラグビーにおいて、危険なプレーなどにより、一時的に試合から離れることを命じるルールのことである。レフリーは、当該選手にイエローカードを示して10分間の退場を命じる(7人制ラグビーの場合は2分間)。

フィールドのデッドボールライン

解説

[編集]

「シンビン」は「Sin=罪、違反」と「Bin=入れ物、置き場」を合わせた造語であり、ラグビーにおいては競技区域から一時的に退出させられることを指す。アイスホッケーの「ペナルティーボックス(一時退場者が出場停止時間中入るベンチ)」とほぼ同じものである。

適用となるケースとしては、危険なプレーや反則を繰り返した場合であり、審判団の裁量により一時的に退出を命ずるか、あるいはその試合そのものから退場を命ずることができる。一時的な退出を命じられた選手は相手側のデッドボールライン後方にいなければならず、レフェリーが許可するまでフィールド・オブ・プレーから離れなければならない。その際、衣服を着たり身体を動かすことは可能だが、決められた位置から動くことや、コーチらとの接触は禁止される。一時退出時間は、ラグビーユニオン(15人制)、ラグビーリーグ(13人制)など一般的な方式では10分間、1試合当たりの試合時間が少ないセブンズ(7人制)は2分(いずれもハーフタイムの時間を含む)で、ノーサイドになれば自動的に終了する。

同一試合で2度、ないしは同一シーズンの公式戦で累計3度のシンビンを課せられた選手は退場(を命じられた選手の処置 サッカーイエローカード<警告>、レッドカード<退場>にほぼ同義)とみなす。

なお、一時的退出は退場の代わりではなく、退場させるのが正当だと判断される反則があった場合は、レフェリーはその選手を退場させなければならない。また、一時的退場の警告を受けた後に、類似の反則を犯した選手は退場させなければならない。レフェリーはシンビンを適用した選手名を、主催する団体(日本においては日本ラグビーフットボール協会や開催地の地域ラグビー協会)に報告しなければならない。

日本ラグビーフットボール協会は、1996年(平成8年)9月14日からの導入を通達した[1][2]

オフ・フィールド・レビュー

[編集]

2023年7月29日から、ワールドラグビーTMO(ビデオ判定)による「ファウルプレーレビューオフィシャル(the Foul Play Review Official)」を導入した。少なくとも10分間のシンビン(フィールド外に隔離)を与えるが、その後の詳しいビデオ判断を経て、危険性の度合いにより、20分レッドカード(反則選手は退場だが、20分後に反則選手の代わりに他の選手を出場させる)、または、完全なるレッドカード(20分後に他の選手を出場させることはできない)の判断が行われる。

反則選手にイエローカードを出したレフリーが顔の前で両腕をクロスさせると[3][4]、シンビン(10分間の退場)中に、TMOが8分間以内で担当審判員が別室でそのプレイ映像を詳しく分析する(この間を「Under Review」「Review In Progress」という)。この時に提示されたカードは「Minimum Yellow(=少なくともイエロー判定)」とも呼ばれる。担当審判員による分析により、反則プレイの危険性によってはレッドカード(退場)へ判定が変更され(これをupgradedなどという[5])、レフリーはチームキャプテンにレッドカードを示し通告する。

レビュー中、中継放送においては、黄色と赤色を半々にしたマーク、または、黄色いマークに「R」(レビュー中の意味)の表示などが行われる。

このように試合を長く中断することなく、裏で独立して分析を行うことから「Bunker(地下壕=戦闘から身を守るための地中の強固な建造物)」の名称がついた[6][7]。これは「TMOバンカー」(the TMO Bunker)または「バンカーシステム」とも呼ばれる。これにより試合中断の時間が短縮され、頭部などに対する危険なプレイへの的確な判定が行える[8]。「オフィシャル」は審判員(団)のこと。

このルールの名称は、「ファウルプレーレビューオフィシャル」がワールドカップ2023において正式名称だったが、リーグワン2023-24シーズン以後、「オフ・フィールド・レビュー」へと名称が変更された[9]。その担当審判員を「ファール・プレー・レビュー・オフィサー」と言う[9]

2023年春のU20チャンピオンシップで試験運用され[10]、同年夏のヨーロッパ各地を会場とした各国テストマッチ(ワールドカップ前哨戦)「サマーネーションズシリーズ2023」[11]から本格導入された。同年秋に開催のワールドカップ2023においても運用された[12]。日本では2023-24シーズンから、リーグワンでビデオ判定(TMO)を導入している1部リーグ(DIVISION1)と2部リーグ(DIVISION2)で導入した[9]

脚注

[編集]
  1. ^ ルール改正&シン・ ビン制度”. 関東ラグビーフットボール協会. 2023年4月24日閲覧。
  2. ^ 機関誌「RUGBY FOOTBALL」第46巻2号(1996年9月号)p.6”. JRFU. 2023年4月24日閲覧。
  3. ^ Explained: What is rugby's TMO bunker?” (英語). Rugby World (2023年8月15日). 2023年8月24日閲覧。
  4. ^ 『W杯でも採用される?新レフリング・システム「TMOバンカー」』”. 映画、ラグビー、時々読書. 2023年8月24日閲覧。
  5. ^ Japan keep quarter-final hopes alive with win over Samoa” (英語). www.rugbypass.com (2023年9月28日). 2023年9月29日閲覧。
  6. ^ Explained: What is rugby's TMO bunker?” (英語). Rugby World (2023年8月15日). 2023年8月17日閲覧。
  7. ^ Freddie Steward's takes on the new ‘Bunker’ review system” (英語). www.rugbypass.com (2023年8月5日). 2023年8月17日閲覧。
  8. ^ 田中浩 (2023年8月14日). “【ベテラン記者コラム(488)】イングランドSOファレル主将をレッドカードに〝格上げ〟した「TMOバンカー」”. サンスポ. 2023年8月24日閲覧。
  9. ^ a b c 一般社団法人ジャパンラグビーリーグワン. “NTTジャパンラグビー リーグワン2023-24 試験的実施ルール 名称および20分レッドカードの対象について | 【公式】ジャパンラグビー リーグワン”. 【公式】NTTジャパンラグビー リーグワン. 2023年12月12日閲覧。
  10. ^ worldrugby.org. “World Rugby to further explore the Television Match Official Bunker concept | ワールドラグビー”. www.world.rugby. 2023年8月24日閲覧。
  11. ^ author (2023年8月5日). “【2023年】「サマーネーションズシリーズ」日程・結果・TV放送”. リードラグビー. 2023年8月24日閲覧。
  12. ^ TMO Bunker confirmed for Rugby World Cup 2023” (英語). www.rugbypass.com (2023年8月21日). 2023年8月22日閲覧。

関連項目

[編集]

外部リンク

[編集]
pFad - Phonifier reborn

Pfad - The Proxy pFad of © 2024 Garber Painting. All rights reserved.

Note: This service is not intended for secure transactions such as banking, social media, email, or purchasing. Use at your own risk. We assume no liability whatsoever for broken pages.


Alternative Proxies:

Alternative Proxy

pFad Proxy

pFad v3 Proxy

pFad v4 Proxy