コンテンツにスキップ

とけい座

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
とけい座
Horologium
Horologium
属格 Horologii
略符 Hor
発音 英語発音: [ˌhɒrɵˈlɒdʒiəm]; 属格:/ˌhɒrɵˈlɒdʒiaɪ/
象徴 振り子時計
概略位置:赤経  02h 12m 48.6s -  04h 20m 18.3s[1]
概略位置:赤緯 −39.63° - −67.04°[1]
広さ 249平方度[2]58位
バイエル符号/
フラムスティード番号
を持つ恒星数
10
3.0等より明るい恒星数 0
最輝星 α Hor(3.86
メシエ天体 0
隣接する星座 エリダヌス座
みずへび座
レチクル座
かじき座
ちょうこくぐ座
テンプレートを表示

とけい座(とけいざ、Horologium)は、現代の88星座の1つ。18世紀半ばに考案された新しい星座で、振り子時計をモチーフとしている[1][3]。南天の星座で、日本最南端の有人島である波照間島からも星座の全域を見ることはできない。

主な天体

[編集]

恒星

[編集]

2022年4月現在、国際天文学連合 (IAU) が認証した固有名を持つ恒星は1つもない[4]

星団・星雲・銀河

[編集]
ハッブル宇宙望遠鏡による球状星団NGC1261の撮像。
NGC 1433 MIRI Image

由来と歴史

[編集]

とけい座は、18世紀中頃にフランスの天文学者ニコラ・ルイ・ド・ラカーユによって、振り子時計をモチーフとして考案された[3]。初出は、1756年に刊行された1752年版のフランス科学アカデミーの紀要『Histoire de l'Académie royale des sciences』に掲載されたラカーユの星図で、振り子時計の星座絵とフランス語で「時計」を意味する l’Horlogeという名称が描かれていた[3][10][11]。ラカーユの死後の1763年に刊行された『Coelum australe stelliferum』に掲載された第2版の星図では、ラテン語化された Horologiumと呼称が変更されている[3][12]

1801年にドイツの天文学者ヨハン・ボーデが刊行した『ウラノグラフィア』では Horologium Pendulum、1899年にアメリカのアマチュア博物学者リチャード・ヒンクリー・アレンが刊行した『Star Names: Their Lore and Meaning』では Horologium Oscillitorium[13]などの名称が使われることもあったが、ラカーユのオリジナルである Horologium に取って代わることはなかった[3]

1922年5月にローマで開催されたIAUの設立総会で現行の88星座が定められた際にそのうちの1つとして選定され、星座名は Horologium、略称はHor と正式に定められた[14]。新しい星座のため星座にまつわる神話や伝承はない。

呼称と方言

[編集]

日本では当初から「時計」という訳語が充てられていた。これは、1908年(明治41年)12月に刊行された日本天文学会の会誌『天文月報』の第1巻9号に掲載された星図で確認できる[15]。この訳名は、1925年(大正14年)に初版が刊行された『理科年表』にも「時計(とけい)」として引き継がれた[16]。戦後の1952年(昭和27年)7月に日本天文学会が「星座名はひらがなまたはカタカナで表記する」[17]とした際に、Horologium の日本語の学名は「とけい」と定まり[18]、これ以降は「とけい」という学名が継続して用いられている。

IAUが学名を Horologium と定めた後の1931年(昭和6年)3月に天文同好会[注 1]の編集により刊行された『天文年鑑』第4号では、星座名を Horologium Oscillitorium とした上で「振子時計」の訳名を充てており[19]、以降の号でもこの星座名と訳名を継続して用いていた[20]

脚注

[編集]

注釈

[編集]
  1. ^ 現在の東亜天文学会

出典

[編集]
  1. ^ a b c The Constellations”. 国際天文学連合. 2023年1月16日閲覧。
  2. ^ 星座名・星座略符一覧(面積順)”. 国立天文台(NAOJ). 2023年1月1日閲覧。
  3. ^ a b c d e Ridpath, Ian. “Horologium”. Star Tales. 2023年1月16日閲覧。
  4. ^ Mamajek, Eric E.. “IAU Catalog of Star Names”. 国際天文学連合. 2023年1月16日閲覧。
  5. ^ "alf Hor". SIMBAD. Centre de données astronomiques de Strasbourg. 2023年1月16日閲覧
  6. ^ "iot Hor". SIMBAD. Centre de données astronomiques de Strasbourg. 2023年1月16日閲覧
  7. ^ HR 810 b”. The Extrasolar Planet Encyclopaedia (2010年12月28日). 2023年1月16日閲覧。
  8. ^ "R Hor". SIMBAD. Centre de données astronomiques de Strasbourg. 2023年1月16日閲覧
  9. ^ "GJ 1061". SIMBAD. Centre de données astronomiques de Strasbourg. 2023年1月16日閲覧
  10. ^ Ridpath, Ian. “Lacaille’s southern planisphere of 1756”. Star Tales. 2023年1月7日閲覧。
  11. ^ Histoire de l'Académie royale des sciences” (フランス語). Gallica. 2023年1月7日閲覧。
  12. ^ Coelum australe stelliferum / N. L. de Lacaille”. e-rara. 2023年1月7日閲覧。
  13. ^ Allen, Richard H. (2013-2-28). Star Names: Their Lore and Meaning. Courier Corporation. p. 246. ISBN 978-0-486-13766-7. https://play.google.com/books/reader?id=vWDsybJzz7IC&pg=GBS.PA245 
  14. ^ Ridpath, Ian. “The IAU list of the 88 constellations and their abbreviations”. Star Tales. 2023年1月16日閲覧。
  15. ^ 十二月の天」『天文月報』第1巻第9号、1908年12月、12頁、ISSN 0374-2466 
  16. ^ 東京天文台 編『理科年表 第1冊丸善、1925年、61-64頁https://dl.ndl.go.jp/pid/977669/1/39 
  17. ^ 『文部省学術用語集天文学編(増訂版)』(第1刷)日本学術振興会、1994年11月15日、316頁。ISBN 4-8181-9404-2 
  18. ^ 星座名」『天文月報』第45巻第10号、1952年10月、13頁、ISSN 0374-2466 
  19. ^ 天文同好会 編『天文年鑑』4号、新光社、1931年3月30日、6頁。doi:10.11501/1138410https://dl.ndl.go.jp/pid/1138410/1/11 
  20. ^ 天文同好会 編『天文年鑑』10号、恒星社、1937年3月22日、4-9頁。doi:10.11501/1114748https://dl.ndl.go.jp/pid/1114748/1/12 
pFad - Phonifier reborn

Pfad - The Proxy pFad of © 2024 Garber Painting. All rights reserved.

Note: This service is not intended for secure transactions such as banking, social media, email, or purchasing. Use at your own risk. We assume no liability whatsoever for broken pages.


Alternative Proxies:

Alternative Proxy

pFad Proxy

pFad v3 Proxy

pFad v4 Proxy