クラウド型コンテンツとはなにか?(完全版)

※3/9に後半大幅に加筆修正しました。

以前のエントリでコンテンツはクラウド型へ移行するべきだと書いた。その際に、クラウド側のコンテンツはユーザに所有感を与えられるとも付け加えたが、どうしてなのかは十分な説明をしなかった。


ブックマークについたコメントをみていても、そのあたりの解釈にいろいろ個人差があるようで、あらためて、僕が考えるクラウド型のコンテンツサービスのモデルについて説明をしたい。


まず、最初に誤解されていると思ういくつかの点について、僕の考えを述べさせて欲しい。


・ クラウド型のコンテンツサービスは別に全部ストリームでやれといっているわけではない。
・ ユーザに不便を強いるだけのDRMが無意味といっているだけで、DRM自体を否定しているわけではない。クラウド型のコンテンツサービスはむしろDRMと組み合わせたほうが相性がいい。


以下にまとめて説明する。


クラウド型のコンテンツサービスというとローカルにデータを持たずに、すべてストリームでやればコピーされなくていいよね、みたいなかんじに理解するひとが多い。しかし、これは将来的なゴールのひとつである可能性はあるが、現在あるパッケージコンテンツのクラウド化には向かない。なぜなら、現状のパッケージコンテンツを再生するデバイスがローカルデータを利用することが前提のものが多数を占める状況では、ストリーム前提のサービスをつくると、利用できる状況やデバイスが制限されてしまい、いまより不便な形でしかコンテンツを利用できないものになってしまうからだ。


現実的なのは一度購入すれば何回でもどのデバイスにダウンロードできるようなサービスだろう。前回のエントリとは違いダウンロードするデータにはDRMがかかっていてもかまわない。なぜならDRMがかかっていても、何回でもどのデバイスにもダウンロードできるなら同じだからだ。DRMがかかっていなくても、それをデバイス間でいちいちディレクトリなどを確認したりツールつかったりしてコピーするのは面倒くさい。それよりも、DRMがかかっていてもダウンロードしなおすほうが簡単であれば、ユーザはそちらを選ぶ。また、あとで説明するようにクラウド型コンテンツの所有感をユーザに味わってもらうためにはローカルでコピーできることよりもサーバからダウンロードさせたほうがいい。


さて、この説明で納得できないひともいるだろう。今回のエントリは、クラウド型コンテンツとはそもそもなんなのか、なぜ、クラウド型だとコンテンツの所有感をユーザに与えることが可能なのか?その上でパッケージ型コンテンツをクラウド型に変更するにはどのようにすればいいかを順番に議論していきたい。


クラウド型のコンテンツはユーザに所有感を与えることが可能だと前回のエントリで書いた。


クラウド型のコンテンツというのはつまりコンテンツがユーザの手元ではなく、どっかのサーバに保存されているということだ。直感的にサーバにおいてあるものを、自分が所有していると感じさせることができるのだろうかと疑問に思う人もいるかもしれない。なので、まず、最初に既にクラウド型のコンテンツでユーザに所有感を与えてることに成功しているものを例示しよう。既にクラウド型のコンテンツは存在しているのだ。


まず、最初の例としてあげたいのは、ちょっとコンテンツとしては極端にシンプルすぎる例であるが、銀行預金だ。みなさんの通帳に記入してある数字、もしくはキャッシュカードで残高照会すると表示される数字。これは銀行のサーバに記録されているたんなる数字だ。にもかかわらず、ほとんどのひとはその数字、預金残高の金額をリアルなものだと感じている。通帳の数字を増やすことに生き甲斐をかんじているひとも多い。銀行預金の数字をみんなが自分の所有しているものだとなぜ感じられるかはとてもいいテーマであって、クラウド型コンテンツの所有感をどうやって設計すればいいかの重要なヒントを与えてくれる。これについてはあとで議論する。


つぎの例はもうちょっとコンテンツぽいものだ。仮想空間上のアイテムだ。アバターの服や大規模ネットワークRPGのアイテムなどだ。仮想空間上で自分の操作するキャラクターが着る服やモンスターと戦うための武器などにユーザはお金を払う。それもかなりのお金を払うというのは古くは10年以上前のウルティマオンラインにはじまり単独のゲームとしてはおそらくゲーム業界史上最大のコンテンツとなっているWOW(ワールドオフウォークラフト:日本ではあまり流行っていないが世界最大ぶっちぎりのMMORPG)が証明しており、日本でもグリーやDeNAソーシャルゲームの大成功は現在進行形の出来事だ。仮想空間というとセカンドライフの失敗が記憶に新しいが、あれはセカンドライフが失敗したのであって仮想空間上のビジネスというのはゲームの世界ではここんところ最大の成長分野となっているのだ。


もう5年以上前になるがワールドオブウォークラフトに関して聞いた面白い話を紹介すると、中国にはワールドウォークラフト専用の工場があるそうだ。その工場にはちょっと型遅れの古いPCが大量に並んでおり、工場周辺の住民の中でもちょっと能力の高そうな若者が集められPCの前に1日中座っているのだという。そして、ひたすらワールドウォークラフトをプレイして、モンスターを倒してゴールドを集めているそうだ。それを先進国のプレイヤーが買うことでこの工場は成り立っている。もともとこれは韓国ではじまったビジネスらしいが、中国でも同じビジネスがはじまると、韓国は中国の安い労働力の前に競争に負けたらしい。そしてこの仕事は工場周辺の若者では知的な職業として憧れの的だったという。


いまもそういった工場やビジネスが成立しているかは分からないが、ぼくが話をきいた当時は、ワールドウォークラフトという仮想空間で売買されるアイテムやゴールドの市場はGNPに換算すると世界70位だか80位の国家に相当するといわれていた。仮想空間上のアイテムをプレイヤーが自分の財産として欲しがり、それがビジネスになるということが理解されはじめると、やがてMMO RPGでは基本無料でサービスを提供し、ゲーム内でプレイヤーが欲しがる特別なアイテムを有料で販売するというビジネスモデルが生まれた。その手法はFacebookAPI開放をきっかけにSNSと組み合わせたソーシャルゲームに引き継がれ、世界的な大ブームとなったのはご存じの通りだ。


クラウド型のコンテンツというのが既に存在して、コンテンツがコピーされてビジネスが成り立たないといわれるインターネット時代においても成長を続けている、いや、むしろインターネット時代だからこそ成立する有望なモデルであることは理解いただけたと思う。


長い前置きになったが、ここからが今回のテーマの本命だ。クラウド型コンテンツがコンテンツビジネスにとって有望なモデルであることがわかったとする。じゃあ、現在、危機にあるCD、書籍、DVDなどのパッケージコンテンツをクラウド型コンテンツに移行させることは果たして可能なのか、可能であるとしたらどうやって移行させるかである。


コピーがあたりまえのインターネット時代においてクラウド型コンテンツが有望なモデルなのは、クラウド型コンテンツが本質的にコピーできないからである。サーバーに格納されているデータを書き換えることはもはやコピーではなくハッキングの世界だ。実質的に不可能であるといっていい。じゃあ、パッケージ型コンテンツもデータをサーバに置いたらいいかというと問題はそんなには簡単ではない。


なぜかというと、クラウド型コンテンツでコピーが不可能なデータはサーバにおいてあり、なおかつサーバ側のプログラムで解釈し実行するデータに限られるからだ。パッケージ型コンテンツの場合は音楽データにせよ、動画データにせよ、いったんクライアントの端末にデータをダウンロードし、実行する必要がある。そしてダウンロードされるデータは原理的にコピーを防ぐことができないのだ。クライアント端末でダウンロードできるデータについてはクラウド型コンテンツでもコピーは防げない。例をあげると、銀行預金を勝手にコピーして2倍にすることはできないけど、残高を印刷した通帳はコピー機をつかえばコピー用紙に印刷できる。アバターの服や武器にしてもサーバのデータはいじれなくても、端末画面に表示された画像であればスクリーンショットとして保存可能だ。クラウド型コンテンツがコピーできないというのは言い換えると、サーバに保存されているデータの書き換えはできないということにすぎない。さらに具体的に説明するとサーバに保存されているデータを解釈して実行されるサービスはコピーできないということでもある。


「サービスはコピーできない」というのが、ここで重要な概念だ。どういうことか。銀行預金でいえば、残高に応じて、現金を引き出せるというサービスを銀行のかわりにユーザが真似することができないということだ。アバターの服でいえば、仮想空間ソフトを実行中に自分のキャラクターにサーバに保存している自分の服を着せたり武器を持たせて表示するというシステム自体をユーザはコピーできないということだ。つまりクラウド型コンテンツではサービスがクライアントに提供するデータはコピーできてもクライアントに提供するサービスそのものはコピーできない。


この結論をクラウド化されたパッケージコンテンツで考えてみよう。パッケージ型コンテンツをクラウド化したときにコピーが防げるのはサービス部分だけであり、コンテンツデータそのものはコピーされてしまうということだ。


さあ、ここまでくるとパッケージコンテンツのクラウド化が成功するかどうかのポイントがどこにあるかが明確になる。パッケージ型コンテンツのデータがコピーがされるのはしょうがない。コピーできないサービス部分をいかにユーザにとって重要なものに設計できるかどうかが成功の鍵になるのだ。


※3/9 ここから書き直し&補足


コピーできないサービス部分をどういうように設計すればいいかは、パッケージ型のコンテンツホルダーの未来にとっては本当は今後の死活問題になるが、コンテンツホルダー自身がそのことをあまりよくわかっていない。そしてコンテンツプラットホームホルダーの立場からすると別にどうでもいい事柄に属する。


このままいくとどうなるかだが、違法コピーの問題に根本的な解決がされないという状況が価格の下方圧力として働き、コピー原価は0円なのに金をとるの?とユーザから罵られながら、データを販売していくことになる。そんな未来を避けるためにはコンテンツホルダーはパッケージ型コンテンツをクラウド型に変換することが必要で、そのためになにがキーポイントであり、なにをプラットホームホルダーへ要求すべきかということを真剣に考えなければならない。


ひとつコンテンツホルダーが認識しないといけないことがある。クラウド型コンテンツになるためには、いままでやってきた売り切り型ビジネスを捨てる覚悟が必要だ。パッケージを手離れよく売っておしまいというのはとても楽なビジネスモデルだが、クラウド型コンテンツの時代には通用しない。これまで述べてきたようにパッケージ型コンテンツをクラウド化する際にはコピーできないサービス部分をいかに設計するかが重要だ。そのためには大前提として顧客データをコンテンツホルダーが直接把握することが根本的に重要になる。あたりまえで、売ったあとに顧客にサービスを提供するためには、だれがコンテンツを購入したのかを判別できないと話にならないからだ。


つぎに顧客データをコンテンツホルダーが把握したとして、どんなサービスを提供すればクラウド型コンテンツの価値が高まるのかを議論しよう。価値が高まれば購入したいと思うユーザの数も増えるはずだ。


ということで、ここでもういっぺんもっとも単純なクラウド型コンテンツのモデルとして銀行預金によるアナロジーを利用してみよう。


銀行預金がなぜ価値を持つのか、それは基本的には現金と交換できるからだ。でも、なぜひとは現金を手元に持たないで銀行預金を持つのだろうか?


人間が資金を現金でもつか銀行預金で持つかを決める力学とはどういうものがあるか?重要と思われる要素は安全性、利便性、必要性の3つだ。


・ 安全性:持っているお金を手元に現金としておいておくのと銀行に預けるのとどちらが安全と思うか?
・ 利便性:物やサービスをお金を交換する際に、現金でもっているのと銀行にもっているのとどちらが便利か?
・ 必要性:現金じゃないとできないこと、銀行預金じゃないとできないことはなにか?


これをクラウド型コンテンツの設計と合わせて考えていこう。


安全性についていえば、実はサーバにデータがおいてあったほうが安心だ。ローカルのデータなんてハードディスクが飛んだり、携帯端末なら落としたり、新機種に買い換えたりでなくなる危険性は高い。サーバにおいてありいつでもダウンロードできるほうが安心だ。もっとも、クラウドの業者側がなくなってしまうリスクが感じられるとこの利点は減少するのだが、どうせそのような業者は競争に負けて淘汰されるから、基本的には安全性というのはクラウド型コンテンツの最大の長所となりうる。ところが、現在のクラウド型サービスでは再ダウンロードができなかったりダウンロード回数が制限されていることが多く、その場合はむしろクラウドであるがためにデータが消滅するリスクが高くなる。これはクラウド型コンテンツの価値を下げていて、コンテンツホルダーにとっては長期的に大きなマイナスなのだが、それを要求しているのが、当のコンテンツホルダー側であるというのが皮肉な現実だ。サーバからの再ダウンロードを保証するのはクラウド型コンテンツにとっては最重要なポイントであり、それはコンテンツホルダーの利益になる。再ダウンロードについてコンテンツホルダーが自分の首をしめている懸念点としてもうひとつある。それは送信可能化権という概念だ。まねきTVの最高裁判決でもあるように自分が購入したコンテンツであってもクラウドにおいたデータの再ダウンロードが著作権侵害とみなされる可能性がある。契約で解決する方法もあるが、音楽著作権のようにJASRACの現在の規定では再ダウンロードの無償化に対応できないケースもあり解決が必要だ。


利便性についても考えよう。銀行預金の例でいうと、まず基本的に現金の形で変換しないといけない分だけ銀行預金はもともと不利である。この不利を打ち消す要素や逆に銀行預金のほうが便利なことはなんだろうか。不利を打ち消す要素として重要なので簡単におもいつくのはATMの数だろう。ATMがどこにでもあって利用時間や1日当たりの利用金額とか、そういう制限がなければないだけ、現金をもってない不利は減少する。パッケージ型コンテンツのクラウド化においてはあらゆるデバイスに対応することがこれに相当する。PCでも携帯でもiPadでも購入したコンテンツが利用できるということだ。銀行預金のほうが便利なことをつぎに考えると、それは他人の口座への振り込みだろうか。パッケージ型コンテンツのクラウドにおいてはローカルでのデータを自分でコピーするよりもサーバからダウンロードしたほうが楽である状況をつくれれば同じ事になる。この目的のためにはダウンロードされるデータにDRMをかけておくのは非常に有効な手段だ。DRMを外してローカルでコピーするよりもサーバからコピーしたほうが楽ならユーザはそちらを選ぶ。そのことによりサーバにおいている自分のデータの利便性は高まり、自分が所有しているという感覚は高まることになるのだ。これについても現在のコンテンツホルダーはデバイスが変わると同じコンテンツでも再購入を要求するケースが多い。でも、どうせほっといたらローカルで勝手にコピーされるデータなんだから、サーバ経由の別デバイスへのダウンロードを認めてあげることで購入したクラウド型コンテンツの価値を高める方法をとったほうがコンテンツホルダー側には本当は有利なのだ。


必要性とは利用を強制する仕組みだ。銀行預金の例でいうと、自動引き落とししたかったら、銀行口座をつくるしかない。もしくは給料の支払いが現金ではなく銀行振り込みしかやらない会社に入社した新入社員は銀行口座をつくらされる。こういうことに対応したクラウド型コンテンツでなければ受けられないサービスとはいったいなんだろうか?非常に多くの方法論がありそうだが、ぼくが考えるもっとな有望なもの、実効性のありそうなものをふたつ紹介すると、コンテンツのバージョンアップとパッケージコンテンツへのバンドルだ。


コンテンツのバージョンアップ:WindowsとOfficeが登場する以前にパッケージソフトウェア全盛時代があった。基本的にコピーが可能な世界でソフトウェアビジネスを展開してきた彼らのやりかたは大いに参考になる。多くの人が正規のパッケージソフトウェアを購入する理由のひとつに最新版への無償アップデートがあった。CD-ROMやフロッピーディスクコピープロテクトを外して違法コピーをつくってもバグなどを修正した最新版へのアップデート用のパッチソフトウェアが正規ユーザに無償で送付されると違法コピーユーザは型遅れのバグありのソフトウェアを利用している状況になる。もちろん再度違法コピーすればいいのだが、コピーの手間だけでなく、いつアップデートされたかもいちいち情報を入手するのも大変だ。このマイナーなバージョンアップの提供というのはコンテンツの正規版購入のための大きなプレッシャーとなる。パッケージコンテンツでも同じことをやればいい。電子書籍であれば、そもそも重版のときに誤字などを修正するわけだが、それが自動的に適用されるというのはユーザのメリットだ。誤字の修正とかいうけちなことよりももっと差別化をはっきりさせるため新章を追加したりだとか、一番最初はあとがきや解説がないとかでもいいだろう。音楽においてもカップリング曲なんかはいわゆるA面の曲の購入者におまけであとからあげればいい。あえて完成度の低い状態でコンテンツを提供してコンテンツが完成していく過程もふくめて購入ユーザに提供すればいいのだ。


パッケージコンテンツへのバンドル:コンテンツホルダーとプラットホームホルダーとの力関係において、現段階であればコンテンツホルダーが有利な点がひとつある。それはコンテンツのユーザ、とくにちゃんとお金を払ってくれるユーザの大部分はまだネットでダウンロードしたデータにお金を払うのではなく、リアルな書籍やCDやDVDなどのパッケージを購入しているということだ。コンテンツホルダーとプラットホームホルダーの力関係はプラットホーム上では圧倒的に後者が有利だ。にもかかわらずコンテンツホルダーはパッケージ市場とは別にデジタルコンテンツ市場を考えたがり、自分があえて不利な立場でプラットホームホルダーと条件交渉しようとしている。パッケージ市場とデジタルコンテンツ市場をリンクしてしまったほうがコンテンツホルダーの立場は強くなれることを気づいていない。僕は思うのだが、現状ほっておいても違法コピーが蔓延しているデジタルの世界なんだから、もはやパッケージの購入者にはネット経由でのデータダウンロードをバンドルしてしまえったほうがいい。これにより、コンテンツホルダーとプラットホームホルダーの力関係は逆転するのだ。複数のプラットホームがある場合、コンテンツホルダーにデータを無償提供の対象となるプラットホームホルダーとして選んでもらうことが競争上きわめて重要になるからだ。あたりまえだがプラットホームホルダーは分断し、競合させたほうがコンテンツホルダー側は有利だ。ところが現状あれほど敵意を剥き出しあっているアップルとグーグルですら、プラットホーム上での課金の囲い込みについては足並みを揃えるのを許している。コンテンツホルダー側にどうやってプラットホームホルダーと交渉していって有利な条件を引き出すかのまともな戦略がまるでないからだ。というよりいまのコンテンツホルダー側はなにが有利な条件なのかを理解していない。戦略を見失っている状態だ。とりあえず理解しやすい収益の分配率が高いとか安いとかで一喜一憂している。そんなのは無意味で、現状たとえいわゆるアップル税が30%で済んで自分たちは70%もらえると喜んでいても、こういう比率は長い目でみるとプラットホームホルダーとコンテンツホルダーの力関係を反映したものにどっかのタイミングで変更されるのは目に見えている。長期的にプラットホームホルダーとの力関係を有利にするための戦略がないのだ。プラットホームホルダー間を競合させるための最強の武器は既存のパッケージビジネスの中にある。また、リアルなパッケージ流通こそがネットのコンテンツプラットホームホルダーにとって最大の競合相手でもあるのだ。これをうまく利用できずに手をこまねいたまま、タイミングを失いかけているのがいまのコンテンツ業界だ。


まあいい、際限なく長くなりそうなので、コンテンツ業界がどうやってネットのプラットホームホルダーに対抗していけばいいかの戦略については別のエントリーでまた議論することにする。


補足追加で後半書き直すつもりだったが、最初、要点だけ書いておいた箇条書きのすべての内容を結局網羅した説明はできなかった。なので、最後にもともと後半にあった箇条書き部分を↓に残しておくことにする。タイトルに(完全版)と追加してあるが、(不完全版)の誤植でした。ご容赦ください。

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コンテンツホルダーが目指すべきゴールだけを箇条書きにする。なんか一番大事な部分をはしょっている気もするがまあいい。別にお金もらって書いているわけじゃないし、ご容赦いただきたい。これもいつものパターンだが、記事の反響があればここから先は補足して書き直す可能性もある。


・ 異なるデバイスへのコピーはローカルでやるよりも、サーバからダウンロードさせたほうがいい。だから、ローカルでコピーするよりもサーバからダウンロードするほうがユーザにとってとても楽であることが重要だ。手間の差を大きくするためにはDRMをかけたほうがいい。


・ コンテンツデータはバージョンアップ版を無理矢理にでもつくったほうがいい。より、クオリティを上げたものや不具合を修正した最新版を購入済みユーザにはサーバから無償でダウンロードできるようにすべきだ。これはローカルコピーじゃなくサーバからダウンロードするほうがユーザメリットがあることをDRM以外の方法で正当化することにもつながる。


・ 追加コンテンツ、おまけコンテンツを購入者に提供できるようにする。当初は無償が望ましいが、将来的にこれは有償化してコンテンツホルダーの収益を拡大する重要な武器となる。


・ iOS端末とアンドロイド端末のように複数のデバイスでも購入したコンテンツは相互に利用可能であることが重要。利用できるデバイスの数が増えれば増えるほどクラウド型コンテンツは価値が高くなるという性質を持つ。


・ 対応デバイスを拡大する切り札として、コミュニティをもつネットサービスを仮想デバイスと考える手法がある。コミュニティ内での購入者同士がコンテンツを利用できる仕組みだ。これはネットサービス自体を囲い込み競争をおこなっているapplegoogleはとりにくい戦略で差別化要因になりうる。


・ 上記のゴールを実現するためには現状のコンテンツプラットホームが提供している機能では不十分。ポイントは課金の自由化と顧客情報の開放。


・ 対プラットホームホルダーへの交渉戦略の基本をひとことでまとめると、クラウドからコンテンツデータの提供だけでなくサービスの提供までも認めさせること。そのためには各プラットホームホルダーを分断し、顧客情報を提供してくれるところにだけクラウドからサービスを提供すればいい。


以上

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