ゲーマーのエンジニアが転職先としてソーシャルゲーム業界を選ばない理由

今回の転職にあたって、各方面から「なんでゲーム業界にいかないの?」と何度も訊かれたので、書いておく。

僕のキャリアはソーシャルゲーム業界から始まって、教育の会社にいって、次はxxxだ。転職先に関しては後日。

僕はそもそもスーパーファミコン時代にスクエニ黄金期の洗礼を受けた古い気質のゲーマーで、ソーシャルゲームを一切楽しめない人間で、ソーシャルゲームに開発として関わった人間でもある。バイアスが掛かっているのは認める。

古巣がどうこうって問題ではなくて、業界全体の問題なので、そこらへんは誤解しないように。

ソーシャルゲーム業界

今のソーシャルゲーム業界の開発現場は、開発の現場が「面白いゲームを作ろう」というモチベーションにはなりにくい。 感覚として、ソーシャルゲームってのは「課金させる場」を作ることであって、面白いゲームを作ることはあまりフォーカスされない。

それを言えばコンシューマだって売り上げることが目的ではあるが、面白さがある程度売上に相関するので、「面白いゲームを作る」という方向付けは明確にあったはずだ。 ソーシャルゲーム、面白いゲームにしよう、っていう感覚がまったくないわけじゃないけど、とにかく後回しにされる。最重要の売上指標(KPI)は週だかデイリーだかの課金額で、長期KPIを見るほどの余裕が無い。

パズドラの後に手触り感とかUXとか取ってつけたような言葉を口にするプロデューサーが増えたような気がするが、彼らにとっての「手触り」ってのは課金導線までの離脱を抑えるものなので、面白さとは明確に区別されるだろう。

今の市場はレッドオーシャン

ソーシャルゲーム業界が終わったかどうかはともかく、少なくとも出せばあたるバブルは終わった。

GREE とか モバゲーの流れで低コスト1本2000万とかで作れていたガラケーソーシャルゲームが、ネイティブ時代になって1本1億超えは当たり前で、しかも回収が難しくなっている。小ヒットじゃ許されなくなった。中ヒットでトントン、大ヒットで次に繋がる感じ。

しかもノウハウがあるところしか大規模のネイティブゲーム作れなくなってて、結果としてコンシューマ業界の会社(ガンホーはやや例外的とはいえ、スクエニセガ等)に勢力図を書き換えられ、「ソーシャルゲーム」あがりの会社はあんまり未来がない。 今生きてるのはコロプラやブレフロで一発当てたgumiぐらいか。とはいえ子会社だし…。GREE, モバゲーは死に体で、泥舟から脱出するように人が抜けてる。

今のコンシューマゲーム業界は死を待つ身

かつて夢溢れたコンシューマゲーム業界、もはや何かが大きく変わらない限り、これ以上の延命は無理だと思う。市場が小さくなったのもあるが、世代が変わるごとに開発費が高騰し、中小の会社が全部ソーシャルにいってしまったので、大作以外がなくなってイノベーションが一切起こらなくなった。国内だと少なくともそうだ。

何か変わるとしたら、インディーゲーム業界だと思う。海外だとインディーゲームの市場がそれなりに大きくて、クラウドファンディングの成功例もいくつかある。(最近では失敗例も目立つが) 日本だとインディーゲームだとほとんど販路がないのが問題で、そこらへん誰かがどうにかしてほしい。それをなんとかできる背景と技術を持ってるのは、ドワンゴあたりだと思うが。

札束で殴りあうことに興味が無い

ほとんどのソーシャルゲームゲームデザインはリニアであると思う。強さの単調増加。上限は課金額で決まり、その時の強さは掛けた時間で決まる。

ほとんどのゲームのプロデューサーは「うちはそうじゃない」というだろうが、メカニクスを分解すると要素が1か2にまとまるはずで、その因子は課金額とプレイ時間で、プレイ時間は課金額で省略可能で、結果として札束で殴りあってる状態になる。あるいはメカニクスらしきものに到達する前提に多額の課金が前提にある。

(カードゲームだと単調増加する「強さ」以外に、絵柄の「かわいさ」「かっこよさ」を付加価値にするんだろうけど、僕はそこに価値を見出さない人間なので、単に相性が悪いってのはあるのだけど) ついでに言うと、ソーシャルゲームにとってのソーシャルってのは「人質」でしかなくて、ゲーム内のしがらみで縛って離脱率を下げる要素でしかない。

プライドの問題

僕はゲーマーでエンジニアなので、自分が関わったゲームがゲーム的に面白く無いとわかるとプライドが傷つく。ゲーム的に面白く無いと思ってしまうと、やる気が削がれる。 自分が関わったゲームは、自分が成功させてやる!って気持ちがないわけじゃないけど、関わる人数が多くなるとそれも難しい。何かしようとすると政治の問題になってくる。

なので興味の対象を変えてしまった。で、先進的な技術を使ったり、正しいエンジニアリングを行いたいんだけど、それができる環境は、成功して余裕があるチームでないと実際には難しい。

僕はプログラミングが好きな人間なので、たとえ作ってるものがつまらなくても、作ってる過程が面白ければ満足してしまう悪い癖がある。 でもまあ、本当だったら面白いゲームに対して、全力で技術を注いで面白くしてみたかったという気持ちはあるが、大きな会社の大きなチームで仕事をしていると、それも許されないことが多かった。当時の扱いが新卒だったってのもあるが。

給与

ゲーム業界はやりがい搾取が横行していて、全体的に低賃金な傾向があると思う。とはいえ、本当にやりたいことがやれて、かつ次に繋がるリターンがあるならある程度の低賃金は許容できる人もいる。自分もその傾向はあったが、やはり限度はある。

実際に自分の可能性や生活が賃金に縛られて、二倍の給与を提示されると普通は転職してしまう。それが最近までのソーシャルとコンシューマの関係だったが、これからはどうだろう。

今だと「面白いゲームを作る」ということが期待できないので、やりがいすらない。やりがいある仕事を選び続けてるとある某コンシューマの会社は、中ヒット出し続けるのに会社の平均給与みてうげぇってなった。

これからどうゲーム業界に関わるか

国内でインディーゲーム業界で成功例がぼちぼち出てきたら、もう一度チャレンジしてもいい。それまでは正直もうゲーム業界に関わりたくない。 それまでは個人で趣味で作るだけだ。僕の場合、途中でミドルウェアとかライブラリつくりだしてしまい、完成しないのがあるのだが… 他に関わるとしたら、開発者向けミドルウェアツールの開発だろうか。これだったらまだ興味がある。

今までこういうことは転職可能性を狭めるので書かないようにしてたんだけど、もうソーシャルゲーム業界に未来も未練もなくなりつつあるので、好き放題言えるようになってきた。

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