中国史オタが非オタの彼女に中国史世界を軽く紹介するための皇帝10人

アニオタが非オタの彼女にアニメ世界を軽く紹介するための10本(増田)
が流行っているらしいので、改変して遊んでみた。

まあ、どのくらいの数の中国史オタがそういう彼女をゲットできるかは別にして、
「オタではまったくないんだが、しかし自分のオタ趣味を肯定的に黙認してくれて、
 その上で全く知らない中国史の世界とはなんなのか、ちょっとだけ好奇心持ってる」
ような、ヲタの都合のいい妄想の中に出てきそうな彼女に、中国史のことを紹介するために
見せるべき皇帝10人を選んでみたいのだけれど。
(要は「脱オタクファッションガイド」の正反対版だな。彼女に中国史を布教するのではなく
 相互のコミュニケーションの入口として)
あくまで「入口」なので、時代背景解説するだけで時間的な負担を伴う五胡十六国五代十国は避けたい。
できれば統一皇帝、ザコくても三国志の皇帝くらいにとどめたい。
あと、いくら中国史的に基礎といっても古びを感じすぎるものは避けたい。
映画好きが『カリガリ博士』は外せないと言っても、それはちょっとさすがになあ、と思う。
そういう感じ。
彼女の設定は
国史知識はいわゆる「歴史教科書」的なものを除けば、雑学本数冊程度は見ている
歴史教養度も低いが、頭はけっこう良い
という条件で。
まずは俺的に。出した順番は実質的には意味がない。

まあ、いきなりここかよとも思うけれど、「則天武后以前」を濃縮しきっていて、「則天皇帝以後」を決定づけたという点では
外せないんだよなあ。唯一の女皇帝だし。
ただ、ここでオタトーク全開にしてしまうと、彼女との関係が崩れるかも。
この俗情報過多な人物について、どれだけさらりと、嫌味にならず濃すぎず、それでいて必要最小限の情報を彼女に
伝えられるかということは、オタ側の「真のコミュニケーション能力」の試験としてはいいタスクだろうと思う。

アレって典型的な「オタクが考える一般人に受け入れられそうな中華皇帝(そうオタクが思い込んでいるだけ。実際は全然受け入れられない)」そのもの
という意見には半分賛成・半分反対なのだけれど、それを彼女にぶつけて確かめてみるには
一番よさそうな素材なんじゃないのかな。
「中国史オタとしてはこの二人はいまの中国の基礎を作ったと思うんだけど、率直に言ってどう?」って。

ある種の社会派歴史オタが持ってる奴隷解放への憧憬と、趙翼監修のオタ的な考証へのこだわりを
彼女に紹介するという意味ではいいなと思うのと、それに加えていかにもギャルゲ的な
「お嬢様的なださカッコよさ」を体現する郭聖通
「幼なじみで好みな女」を体現する陰麗華
の二人をはじめとして、三角関係になりそうでならないキャラを配偶者にしているのが、紹介してみたい理由。

たぶんこれを知った彼女は「井上靖敦煌だよね」と言ってはくれないかもしれないが、そこが狙いといえば狙い。
この系譜の物語がその後続いていないこと、そのくせシルクロードはいまだに人気があること、
シルクロードならハイビジョンで新シリーズになって、それが歴史に還元されてもおかしくはなさそうなのに、
歴史ものでこういうのがつくられないこと、なんかを非オタ彼女と話してみたいかな、という妄想的願望。

「やっぱり中国史はコレクションだよね」という話になったときに、そこで選ぶのは宋の徽宗
でもいいのだけれど、そこでこっちを選んだのは、文物蒐集にかける弘暦君の思いが好きだから。
断腸の思いで削りに削ってそれでも3503部79337巻、っていう尺が、どうしても俺の心をつかんでしまうのは、
その「捨てる」ということへの諦めきれなさがいかにもオタ的だなあと思えてしまうから。
四庫全書の長さを俺自身は冗長とは思わないし、もう削れないだろうとは思うけれど、一方でこれが
永楽帝だったらきっちり22877巻にしてしまうだろうとも思う。
なのに、各所に頭下げないで迷惑かけて79337巻を作ってしまう、というあたり、どうしても
「自分の物語を形作ってきたものが捨てられないオタク」としては、たとえ弘暦君がそういうキャラでなかったとしても、
親近感を禁じ得ない。人物自体の高評価と合わせて、そんなことを彼女に話してみたい。

今の若年層で宮崎市定読んだことのある人はそんなにいないと思うのだけれど、だから紹介してみたい。
『隋の煬帝』よりも前の段階で、宮崎の歴史再評価の技法とかはこの著作で頂点に達していたとも言えて、
こういう弟ぬっころしてキリスト教弾圧して評価最低みたいな人物が勤勉なる独裁君主の典型として再評価されたんだよ、というのは、
別に俺自身がなんらそこに貢献してなくとも、なんとなく中国史好きとしては不思議に誇らしいし、
いわゆる康煕の次は乾隆でしょみたいな彼女には見せてあげたいなと思う。

演義の「目」あるいは「話づくり」をオタとして教えたい、というお節介焼きから見せる、ということではなくて。
「終わらない漢朝を毎日生きる」的な感覚がオタには共通してあるのかなということを感じていて、
だからこそ吉川英治版『三国志』最終話は諸葛亮の死以外ではあり得なかったとも思う。
「祝祭化した日常を生きる」というオタの感覚が今日さらに強まっているとするなら、その「オタクの気分」の
源は三国志にあったんじゃないか、という、そんな理屈はかけらも口にせずに、
単純に楽しんでもらえるかどうかを見てみたい。

これは地雷だよなあ。地雷が火を噴くか否か、そこのスリルを味わってみたいなあ。
こういう禿・光・僧が禁句で凌遅三千刀滅九族にしちゃう人物を農民保護とかいって擁護して、それが非オタに受け入れられるか
気持ち悪さを誘発するか、というのを見てみたい。

9人まではあっさり決まったんだけど10人目は空白でもいいかな、などと思いつつ、便宜的に玄宗を選んだ。
武則天から始まって玄宗で終わるのもそれなりに収まりはいいだろうし、安史の乱以降の唐朝衰退の先駆けと
なった人物でもあるし、紹介する価値はあるのだろうけど、もっと他にいい人物がありそうな気もする。
というわけで、俺のこういう意図にそって、もっといい10人目はこんなのどうよ、というのがあったら
教えてください。

「駄目だこのブログ主は。俺がちゃんとしたリストを作ってやる」というのは大歓迎。
こういう試みそのものに関する意見も聞けたら嬉しい。

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