地元当局が7年前から計画していたダムをビーバーが勝手に建設して約1億9000万円の節約に
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by Natural England
中央ヨーロッパのチェコ南西部に位置するブルディ山脈は長らく開発が行われず、手つかずの自然が残っているため景観保護区域が設けられています。そんなブルディ景観保護区域では、湿地を回復するためのダム建設計画がありましたが、野生のヨーロッパビーバーが勝手にダムを建設してくれたおかげで、地元当局は大幅なコストを節約できたと報じられました。
Beavers build planned dams in protected landscape area, while local officials still seeking permits | Radio Prague International
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The government had been planning it for 7 years, beavers built the dam in two days and saved them $1 million
https://www.voxnews.al/english/kosovabota/qeveria-po-e-planifikonte-prej-7-vitesh-kastoret-ndertojne-brenda-dy--i84652
ブルディ山脈はチェコの首都・プラハから南西に約60kmにわたって伸びる丘陵地帯であり、チェコで最も大きい森林地帯のひとつとなっています。チェコスロバキアが建国された直後の1925年に広い範囲が軍事地域に指定され、その後も長らく軍事演習に用いられてきたために開発が行われてきませんでした。
そのため、ブルディ山脈には長らく手つかずの自然が残っており、2016年には軍事地域の大部分が景観保護区域に置き換えられました。記事作成時点のブルディ山脈の景観保護区域は、ハイキングや森林浴などを楽しむことができるエリアになっています。
2018年に、そんなブルディ山脈の景観保護区域で、小規模なダムを建設するプロジェクトが持ち上がりました。かつて同地域を管理していた軍は、水はけを良くするために峡谷にバイパスを建設しましたが、ここを一部せき止めることで湿地を回復させることがプロジェクトの目的でした。
プロジェクトには3000万チェココルナ(約1億9000万円)の予算が与えられ、景観保護区域の当局はダム建設の認可を求めてヴルタヴァ川流域の当局と交渉を続けてきました。ところが、その間に景観保護区域に住んでいる野生のビーバーたちが勝手にダムを造ってしまったとのこと。
以下の写真が、実際にビーバーたちがブルディ山脈の景観保護区域に作ったダム。水の流れをせき止めるように枝が積み上げられ、水がたまっているのがわかります。
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by Nature Conservation Agency of the Czech Republic
ブルディ山脈の景観保護区域管理局の責任者であるBohumil Fišer氏は、「軍の森林管理局とヴルタヴァ川流域の当局はプロジェクトを立ち上げて、土地の所有権に関する問題に対処するために互いに交渉していました。しかし、ビーバーたちはそれを打ち破って、3000万チェココルナを節約しました。ビーバーたちはプロジェクトの文書も作成せず、無償でダムを建設したのです」とコメントしています。
動物学者のJiri Vlček氏は、「ビーバーはたった1晩、長くても2晩でダムを造ることができます。人は建設許可を取って、建設計画を承認してもらい、そのための資金を調達しなければなりません」と述べ、掘削業者の工事が始まってもダム建設に1週間程度はかかるだろうと指摘しました。
実際にビーバーが建設したダムを視察したチェコ自然景観保護庁(AOPK)のJaroslav Obermajer氏は、新たにできた湿地と水たまりは珍しいザリガニやカエル、その他の動植物にとっていい生息条件を提供すると主張。「ビーバーは常にベストな場所を知っています。彼らがダムを造る場所は、いつもちょうどいい場所なのです」と述べました。
なお、AOPKの広報担当者であるKarolína Šůlová氏によると、確かにビーバーのダムは地域の保水に貢献してきたものの、時には水害が起きて人間に被害が及ぶケースもあるとのこと。実際、カナダのブリティッシュコロンビア州タンブラー・リッジでは地下に埋設されていたケーブルがビーバーに切断され、インターネットが不通になる事態も発生しています。
ビーバーに回線を切断されて村の半数がインターネットを使えなくなる事態が発生 - GIGAZINE
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