小保方氏の博士論文不受理の詳細を明らかにしてほしい

早稲田大学先進理工学研究科にとっては「もう勘弁して」という状態だと思うけど、この理由はもやもやすぎる。

しかしながら、指導教員らの指示に従って何度か改訂稿が提出されたものの、それらの改訂稿は、なされるべき訂正作業が終了しておらず、審査に付すべき完成度に達していないことから、先進理工学研究科では10月29日の運営委員会で協議を行い、論文審査に付すことができないことを確認した。また、小保方氏より猶予期間の延長を求められていたが、これには応じないことをあわせて決定した。

これを受けて、大学は、10月30日の研究科長会の議を経て、「博士学位論文として相応しいもの」が提出されないまま、猶予期間が満了し、学位の取消しが確定したことを確認した。
2015年11月2日:早稲田大学における博士学位論文の取扱いについてより)

もともと、昨年の7月の調査報告書では小保方氏の博士論文について以下のように報告されていた。

早稲田大学は、2014年3月31日、先進理工学研究科からの要請を受け、小保方晴子氏の博士学位論文に関する調査委員会を設置し、同年7月17日に調査報告書の提出を受けた。

同調査報告書は、大学院先進理工学研究科の審査分科会および研究科運営委員会での合否判定時に閲覧に供され、最終的に国会図書館に送付された本件博士学位論文は論文執筆の初期に書かれた下書きに類するものであって、本来最終版として提出されるべき論文があったものと認定するとともに、本件博士学位論文について複数の不正箇所が存在するが、本学学位規則第23条にいう「不正の方法により学位の授与を受けた事実」を認定することはできず、当該学位を取り消すことはできないとした。
2014年10月9日:早稲田大学における博士学位論文の取り扱い等についてより)

一方で、再審査(手続き上は、まず、学位取り消し、その後、再審査に合格したら再授与)した理由は以下のとおり。この理由だと学位論文の内容の問題ではなく、研究者としての姿勢を問題としている。

しかしながら、早稲田大学は、調査報告書の事案認定を踏まえながらも、小保方氏が公聴会による実質的な審査の対象となった論文よりも明らかに内容が劣った本件博士学位論文を提出したことは、研究者としてわきまえるべき基本的な注意義務を著しく怠ったものであり、これによって最終的な合否判定が行われたことは「不正の方法により学位の授与を受けた事実」に該当すると認定し、博士学位の取り消しを決定した。

ただし、誤って提出された本件博士学位論文に対して博士学位が授与されたことについては、先進理工学研究科における指導・審査過程に重大な不備・欠陥があったものと認められることから、概ね1年間程度の猶予期間を設けて、博士学位論文指導と研究倫理の再教育を行い、論文を訂正させ、これが適切に履行された場合には学位が維持できるものとした。なお、これが適切に履行できないときは、当然に学位は取り消される。
2014年10月9日:早稲田大学における博士学位論文の取り扱い等についてより)

この理屈だと博士論文の体裁が整ったら学位を授与すべきなのだけど、以下のような結論になっている。

小保方氏の学位論文について具体的には、「論文中にコピー&ペーストした箇所があったこと、企業Webサイトからの写真の盗用があったこと、参考文献情報が適切に掲載されていないこと、科学的根拠・論理性に乏しかったこと、以上の4点に問題があった」とし、再指導によって改訂稿ではコピー&ペーストや写真の盗用が行われている箇所の修正・差し替えが行われたというが、やはり「科学的根拠、および論理性が不十分」であったという。

その詳細について同大学は「現在提出されている博士論文自体は途中稿なので、コメントは差し控える」としたが、博士論文のもととなった米国雑誌「Tissue Engineering Part A」に掲載された論文の内容との不一致があったこと、実験手順などの記述が不足していることなどがあったとした。また、再指導については、「メール、電話などで本人の体調を考慮しながら十分な指導を行った。また、2名の教員が3度直接訪問し面談を実施するなど、できることは十分にやってきた」としている。なお、指導教員と審査員は学位論文審査時からすべて入れ替えたという。
マイナビニュース:小保方氏学位論文取消しについて「科学的根拠、論理性に問題」 - 早稲田大より)

STAP細胞関連論文が取り下げられ、(主張していた)STAP細胞の生成法について再現性がないと結論づけられ、かつ、STAP細胞と主張していたものがES細胞であったことが明らかにされている状態で、「手続き的に問題なかったから博士号を授与する」と小保方氏に言うのは、社会的に難しいので今回の博士号取り消しの確定をもって、幕を引きたくなる気持ちはとてもよくわかるのだけど、今回の理由だと小保方氏が悲劇の主人公である物語を描きやすいので、博士論文としての質に達しなかった部分を公開して、きれいさっぱり幕引きしてほしい。

追記

ちなみに、Twitterのタイムラインで「指導教員たちの責任は?」というつぶやきが結構流れているけど、昨年9月で処分自体はなされている。適切かどうかは別にして。

  • 指導教員でかつ主査であった常田聡教授 停職1か月
  • 副査であった本学教員 訓戒
  • 総長 役職手当の20%5か月分を返上
  • 当時の研究科長 役職手当の20%3か月分相当額を返上

2014年10月9日:早稲田大学における博士学位論文の取り扱い等についてより)

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