「現代最高の知性6人」の推薦図書オモロい
『知の逆転』を読んだ。
これはサイエンス・ライターの吉成真由美さんが行ったインタビューをまとめたもの。インタビュイーは以下の6名。
- ジャレド・ダイアモンド(銃・鉄・病原菌なヒト)
- ノーマ・チョムスキー(チョムスキーなヒト)
- オリバー・サックス(レナードの朝なヒト)
- マービン・ミンスキー(人工知能なヒト)
- トム・レイトン(コンテンツデリバリーネットワークなヒト)
- ジェームズ・ワトソン(DNAなヒト)
本の帯には「現代最高の知性6人」と紹介されていますが、「現代最高レベルの変態6人」の方が実態を反映していると思います(個人の想像です)。それぞれの著書を読んで想像してたイメージとだいぶ違う人から、ああやっぱりこんな感じの人なんだという人まで、本当に様々。著書は面白いけど、話をさせてみると意外に普通な、というかつまらない人とかもいます。インタビュー本なのでさらっと読めます。6名のインタビュイーの専門分野が全然違うので、内容も多岐にわたりますが、6名全員に共通の質問もあって、例えば推薦図書を教えて下さいというのがあるんですが、ここでもそれぞれの個性が出ていて面白かったです。なのでそこだけちょっと紹介します。
第1章はジャレド・ダイアモンド。推薦図書は以下の様なラインナップ。
なんとなくそれっぽい気がします。
第2章はノーマ・チョムスキー。「推薦図書は?」という問に対する答えが以下の引用。
よくそのように質問されるのですが、たいへんありがたいことではあるけれど、歯がゆくもある。つまり、どう答えていいかわからないからです。自分の子供や孫たちに対してさえ、そのようなリストを作れないくらいですから、ましてや私の知らない人に対しては、さらに難しくなります。一般回答というものはないわけです。各個人の興味、目的、コミットの度合い、熱意の度合いなど、千差万別ですから。
一番いいのは、自分で探して、驚くようなこと、予想もしなかったような本を発見するということでしょう。リストを提供することは、その予想外の驚きや探し当てる喜びというものを、多少なりとも奪うことにもなる。自分で発見する喜びというのは、指示に従った場合よりも、はるかにエキサイティングで価値の高いものです。
真面目か!
でも仰っていることは分かる気がします。いい意味でバカ真面目。
第3章はオリバー・サックス。本書では、今は亡きフランシス・クリックが、サックスを見つけると隣に座らせて「ストーリーをきかせてくれ」とおねだりしていたというエピソードも紹介されていました。サックスの推薦図書は以下のとおり。こちらもそれっぽい感じですが、『チューリングの大聖堂』とかはやや意外な感じも。そもそもそれっぽいってなんだ。
- ダーウィン『ビーグル号航海記』
- ウェルズ『短篇集』
- ウィークス/レスター『元素発見の歴史』
- ガモフ『不思議の国のトムキンス』
- ディケンズ『二都物語』
- キャロル『不思議の国のアリス』
- グールドの著作『パンダの親指』など
- シェークスピアの著作
- ダイソン『チューリングの大聖堂』
- ドイル『シャーロック・ホームズ』シリーズ
第4章はマービン・ミンスキー。小説はどれも一緒だから読まないらしい! 読むのはもっぱらSF。でも子供の頃はSFや科学物をたくさん読んでいたそうで、よく読んでいたのが以下の人達の著作だそうです。
第5章はトム・レイトン。この方のことは存じ上げなかったのですが、すごく面白い人でした。推薦図書を問われた際の回答も面白かった
推薦図書ですか!? 数学の本です!(笑)私が読む本ですか? ジャンク小説です!!
不真面目か!
これにはインタビュアーの方も参ったのか、「誰か好きなSF作家はいますか?」と質問を変えていたのがさらに笑えました。その問いに対しては、アイザック・アシモフとクリストファー・バックリーの二名を挙げていました。クリストファー・バックリーさんという方はわたしは存じ上げませんでしたが、何作か映画化もされている有名な風刺小説作家だそうです。
第6章はジェームズ・ワトソン。居酒屋とかで一緒に飲むと色んな種類の笑いを取ってそうな感じの人。どんな感じや。このインタビューでも、いまだにロザリンド・フランクリンを一刀両断していて逆に清々しかったです。フランシス・クリックについて語る場面もあって「私はフランシスの謙虚でないところが気に入っていたんです。」という名言も残しています。謙虚でない人から見ても謙虚でないと見えたということでしょうか。キング・オブ・キングス的な。分かりません。推薦図書も『二重らせん』と『種の起源』の二冊ということで、完全にその場のノリで答えている感じが逆に清々しかったです。