2025年2月28日(金)

WEDGE SPECIAL OPINION

2024年3月7日

 昨年11月、川崎市長沢浄水場(多摩区)に、男女4人のウクライナ人が見学に訪れた。案内者が沈でん池などの上に「テロ対策のために覆蓋を設置している」と話すと、「ミサイルにも耐えられるのか?」という質問が飛び、彼らが〝戦地〟から来ているのだと実感させられた──。

ウクライナの国旗カラーにペイントされた「モバイル・シフォンタンク」。日本原料高萩工場でウクライナの技術者たちは1週間の研修を受けた(NIHONGENRYO)

 このウクライナ人たちは、首都キーウの水道局職員だ。ロシアの侵攻で、浄水施設や上水道の配管が破壊された。足元の能登半島地震でも「水」の供給が問題になっているように、ウクライナでも事情は同じだ。しかも、求められているのは「飲料水」。給水車で運搬するだけでは到底間に合わない。

 そこで白羽の矢が立ったのが、日本原料(川崎市川崎区)の「モバイル・シフォンタンク(シフォン式ろ過砂洗浄機)」だ。同社は、水道用ろ過材(主に砂)の製造・販売を手掛けており、全国の浄水場の80%以上に納入している実績を持つ。世界広しといえども、「タップウオーター(水道水)」をそのまま飲める国は多くないが、それを支えているのが、同社の「砂ろ過システム」なのだ。

 通常のろ過材は、砂に汚れが付着することから、7~10年ごとに交換工事が必要となる。洗浄して再利用できればよいが、普通に洗浄するだけだと、汚れが取りきれなかったり、ろ過材自体が壊れたりしてしまうため、それらの課題を克服する洗浄方法が求められていた。また近年、「サンド・ウォーズ(砂戦争)」と呼ばれるように、現在ではろ過材となる「砂」そのものが世界では貴重な資源となっている。

 日本原料が開発したのは「シフォン洗浄」と呼ばれる独自技術。タンクの中にスクリューを入れ、そこで生まれる、揚力、遠心力で渦流を起こすことでろ過材を洗浄していく。ヒントとなったのが「鳴き砂」。踏むときれいな砂の音のみが鳴るのは、砂同士が揉み洗いをしているからだということに気付き、これを応用することで、砂を壊すことなく洗浄することに成功した。

 さらにこの「シフォン洗浄」の仕組みを搭載した「モバイル・シフォンタンク」を開発。装置内部に洗浄システムを搭載しているため、30年間(同社保証)の長期にわたって、そのまま使用することができる。


新着記事

»もっと見る
pFad - Phonifier reborn

Pfad - The Proxy pFad of © 2024 Garber Painting. All rights reserved.

Note: This service is not intended for secure transactions such as banking, social media, email, or purchasing. Use at your own risk. We assume no liability whatsoever for broken pages.


Alternative Proxies:

Alternative Proxy

pFad Proxy

pFad v3 Proxy

pFad v4 Proxy