2025年2月28日(金)

現場搾取社会を変えよう

2024年7月1日

 50人に3000件、70人に2000件、100人に2000件──。

 これらの数字は、工業高校の各校の就職希望者に対する求人件数の状況だ。高校生全体の求人倍率は2022年度で3.49倍だが、全国工業高等学校長協会の調査では全国の工業高校の求人倍率は22年度で20.6倍、内定率は24年3月末で99.2%と、工業高校生が企業から引く手あまたの状況が分かる。

 令和の工業高校のイメージは昭和や平成と比べて様変わりしている。工業技術やモノづくりと真剣に向き合う生徒たちが、エッセンシャルワーカーとして社会に出て活躍しているのだ。

 朝8時半、茨城県立水戸工業高校を訪ねると、生徒たちが元気な挨拶と共に次々と登校してきた。運動部は強豪揃いで関東大会で上位に入るなど、「水工」を地域で知らない人はいない。工業技術を競う大会で受賞する生徒も多く、就職先は地元の中小企業のほか、日立製作所、トヨタ自動車、小松製作所など世界的なメーカー揃いだ。

 この日、機械科の実習室では、2年生が真剣な顔で技能検定3級取得に向け旋盤実習を行っていた。旋盤とは、金属を加工する工作機械を指す。加工したい素材を回転する台座につけ、「バイト」と呼ばれる刃の工具に近づけて切削加工して、目的の形状に削り出す。円筒の金属を削って「段つき丸棒」と呼ばれる2つの部品を作り、ペアの部品をはめ込めるよう仕上げる。

技能検定3級試験は限られた時間で「段付き丸棒」を制作することが課題となる(WEDGE、以下同)

 円すい体の斜めの部分は、図面を見て削る角度を三角関数の式を使って計算しなければならない。硬い金属に穴を広げていく作業を、生徒たちが慎重に行う。技能検定3級は20分の1ミリメートルという精度が必要とされる。その技術が基本となって、「NC工作機械」という自動で加工作業を行う大きな機械を扱うようになっていく。

 実習中の鈴木青空さんは、「小さい頃から工作が好きで製造現場で働きたいと思い、工業高校に入学しました。モノづくりの勉強は中学までの勉強とは違い、とても楽しいです」と目を輝かす。技能検定3級に合格した後は、フォークリフトの資格取得などにも挑戦するという。

真剣に実習に取り組む鈴木青空さん。資格取得に向け、日々研鑽を積んでいる

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