2014年4月8日のWindows XPのサポート終了まであと1か月。まさにカウントダウンに入ったわけですが、まだXPを使っているという人も少なくないようです。PCとしては不自由なく使えている人にとって、サポート終了なんて理不尽な話にしか感じられないとは思いますが、やはりそのまま使い続けるのは危険すぎます。とくに盗まれるデータなんてないし……という人でも、ネットワーク経由でマシンを乗っ取られて、踏み台にされたりすると、犯罪者に仕立て上げられる可能性だってありますからね……。
通常ならWindows 7とかWindows 8に乗り換えるというところなのでしょうが、そんな古いマシンにお金をかけるのもシャクだ、という人もいるだろうし、そもそもOSが重くてまともに動かない可能性も高いです。かといって、捨てるのももったいないし、下手に捨てるようと思ってもPCリサイクルの制度によって「マーク」がついていないマシンだと結構多額の費用がとられてしまいます。そこでお勧めしたいのが無料OSのUbuntu(ウブントゥ)のインストールです。とくにUbuntu Studioというものなら、かなり高性能なDTMマシン環境が簡単に得られてしまうので、お勧め。これがどんなものなのか、簡単に紹介してみましょう。
サポートが終了するWindowsXPの入ったマシンをUbuntu Studioに変えよう(下の黒いタワー型マシンです)
Ubuntu Studioに関する記事は、私が連載しているAV Watchでつい先日も「UbuntuでDTMの人気再び? USBオーディオやDAWソフトとの連携を試す」という記事を書いたところです。ぜひ、そちらも併せてお読みいただきたのですが、Ubuntuについて、ご存じない方のために、ごく簡単に紹介しておきましょう。
まずUbuntuはLinux(リナックス)と呼ばれるOSの一つで、非常に高性能なものながら、無料で誰でも使えるというスゴイOSなのです。LinuxやUbuntuの由来などに興味のある方はぜひネットで検索していただきたいのですが、性能的にはWindowsやMacに引けをとらない強力なもの。中でもUbuntuはパソコン初心者でも使えるユーザーインターフェイスにしたもので、WindowsやMacの操作ができる人なら、違和感なく使えるというものになっています。
Ubuntuは毎年4月と10月に新バージョンがリリースされ、2012年4月に出たものはUbuntu 12.04、最新の2013年10月に出たものならUbuntu 13.10のような名前になっており、各バージョンをUbuntuのサイトからダウンロードできるようになっています。
しかし、ここで注目したいのがUbuntuの派生バージョンであるUbuntu Studio。これも同じくUbuntu Studio 13.10のような名前がついているのですが、こちらはOSのみならず、アプリケーションもセットになっているのです。しかもそのアプリケーションはDAWであったりMIDIシーケンサであったり、ソフトシンセのプラグインだったり、エフェクトだったり……。しかも全部が無料なんですよ。こんな嬉しいことってないですよね。
Ubuntu Studioは数多くのDTMソフトもいっぱい入った無料のOS
これをWindows XPマシンにインストールしてしまえば、無料で安全なDTMマシンが作れてしまうわけです。これを試さない手はない、と思いませんか?
実はウチにもまったく使っていないまま放置してあるWindows XPマシンがありました。確認してみるとPentium 4を搭載し、メモリ1GB、HDDが80GBというオンボロマシン。2004年に買ったものだから、ちょうど10年選手です。試しにWindows XPを起動してみると、まあそれなりにサクサクと動いてはくれますが、もう使うわけにはいかないですからね。これにUbuntu Studioをインストールして、うまく動くものなのか、試してみました。
先日のAV Watchの記事ではCore i7にインストールしたので、Ubuntu Studioサイトから64bit版のUbuntu Studio 13.10のISOイメージをダウンロードし、USBメモリーに入れて起動させて使ったのです。これでうまくいくかなと思って、XPマシンで試したところ、どうもうまく起動してくれないんですよね。DVD-Rに焼いて試してみたところ、今度は64bit版はインストールできない、というメッセージが。そうか、Pentium 4は32bit CPUなので64bit OSは利用できないんでしたね…。
Ubuntu Studioのサイトからインストール用のISOファイルをダウンロード
気を取り直して、32bit版をダウンロード。BitTorrentを使ってのダウンロードのほうが速そうですが、BitTorrentなんてものに慣れていない人は、DirectLinkからダウンすればいいと思います。あまりサーバーの回線速度が速くないからなのか、DirectLinkだと2.4GBサイズをダウンロードに2時間程度かかってしまいましたが、まあ、タダですからね。
フリーウェアのImgBurnでISOファイルをDVD-Rに焼いた
このISOファイルをフリーウェアのImgBurnなどを使ってDVD-ROMに焼けば、ブートできるはずです。
日本語を選択すると、日本語でのメニュー表示が現れるので、とりあえずは、DVDから直接起動させてみる
さっそくこのDVDから起動させてメニューを表示。英語サイトからダウンロードしたけど、ちゃんと日本語のメニューも表示されます。ここで、「Try Ubuntu Studio without installing」を選択すると、HDDにインストールすることなく、直接DVDからUbuntu Studioを起動でき、試すことができてしまいます!この場合は基本的に英語モードになってしまいますが、とりあえず使えてしまうのも大きな魅力ですよね。
Ubuntu StudioがDVDから起動する(この場合は英語版となる)
うまくいったので、改めて起動しなおして、80GBのHDDにインストールしてみたところ、バッチリ。動作は快適で、キビキビと動いてくれます。少なくともWindows XPよりも軽い感じで気持ちいいですね。
起動してメニューを見ると、DTM関連のアプリケーションが数多く収録されているのがわかる
AV Watchの記事でも書いた通り、USB Class Audio 2.0に対応しているオーディオインターフェイスはマルチポートの入出力ができ、レコーディングに使えることが確認できました。
USB 2.0のポートさえあれば、UR44が6IN/4OUTのオーディオインターフェイスとして利用できる
具体的には手元にあったSteinbergのUR44、PreSonusのAudioBox 44VSLがそれぞれ利用できました。
PreSonusのAudioBox 44VSLもバッチリ動作
ただし、USB Class Audio 2.0のオーディオインターフェイスを接続するためにはUSB 2.0のポートが必須。まあ、Windows XPが出た時代のマシンであれば問題ないはずですが、もしUSB 1.1しか対応していないPCの場合でも、USB Class Audio 1.0のデバイスなら大丈夫ですよ。試しに私の手元にあったRolandのDUO-CAPTURE EXを接続してみたところ、問題なく動作してくれました。
もしUSB 1.1のポートしかないマシンでもDUO-CAPTURE EXはTABモードで利用することができる
JackサーバーでDUO-CAPTURE EX(UA22)が認識された
このオンボロXPマシンでもカッコイイDAW、Andourはサクサク動いてくれたし、間もなく登場するBITWIG Studioのベータ版も問題なく使うことができたので、マシン環境としては十分な感じ。
購入して10年経ったPCではあるけれど、Ubuntu Studioを入れてしまえば、まだまだ現役マシンとして使えそうですよ!まずはデータのバックアップを取ったうえで、XPマシンは早目にUbuntuを含めた新OSに乗り換えたほうがいいと思います。
【関連記事】
AV Watch — Digital Audio Laboratory
「UbuntuでDTM」の人気再び? USBオーディオやDAWソフトとの連携を試す
新DAW、Bitwig Studioがいよいよ発売だ!
【関連サイト】
Ubuntu Studioサイト
コメント
ubuntuに Wine という Windows API エミュレーターを入れると、一部のWindows DAW とその上で動くWindows用のVSTも動作しますよ。FL Studio はPulseAudioデバイスをつかんでわりとフツーに動いています
Wineはまだ試していませんが(以前、Macで試して結構大変だった記憶もあり…)、そうか、FLもUbuntuで動くんですね。リアルタイムレコーディングしなければ、PulseAudioで十分ですもんね。
UbuntuはWindows8やMac OS Xが動くPCでないとまともに動きません。
XPからの移行ならUbuntuではなくXubuntuやLubuntuが対象になると思います。
Ubuntu StudioはXubuntuがベースになっていたと思います。
witmaさん
コメントありがとうございます。うまく動いたのはうちのマシンがPentium4の3GHz以上だったからですかね。
いま改めてUbuntu Studioを調べてみましたが、Xubuntu、Lubuntuがベースになっているという表記は見つけられませんでした。
>4
“Ubuntu Studioを調べてみましたが、Xubuntu、Lubuntuがベースになっているという表記は見つけられませんでした。”
Ubuntu Studioはデスクトップ環境がxfceなのでXubuntuとおんなじ環境なのです。
xfceはLXDEと同じように軽量デスクトップ環境とのことです。
まぁ、Ubuntu Studioはマルチメディア用にカーネル部分もいろいろいじられてるのでね。。。
少し前(10.10)ならCeleron 256MHzでも快適に動いたんですけどねぇ。
ぶっちゃん!さん
なるほど、そういうことなんですね。私も分からないことばかりで…
ありがとうございました。
Ubuntu Studioに入っているアプリケーションがかなり進化しているので、10.10などにすると、そこでの魅力が半減してしまいそうですが、マシンの動作が重ければ、古いディストリビューションを引っ張り出してきて使うのもいいのかもしれませんね。
Ubuntuもサポート期間の思想がありますし、Windows以上に期間が短いです。10.10は2012/4にサポート切れになっています。
こちらを参考に。”LTS”とされているバージョンだとリリースから3年間使い続けられます。いまのLTSは12.04で、次のLTSが14.04で来月出ます。
https://www.ubuntulinux.jp/ubuntu
Windowsと違ってアップグレードも無料ですし、LTSを乗り継いでいく分にはさほど問題ではないんですが。
#LTS以外だと日本語環境のような特殊環境で品質が怪しいこともあるので、個人的にはLTS乗り継ぎを推奨。
Ubuntu Studioのカーネルは11.10からはUbuntu標準に合流している?みたいですね。
こちらは11.04までのUbuntu Studioをはじめとした低レイテンシカーネルの成果がメインライン(標準)に取り込まれたものによるようです。
あかみさん
そうか、10.10など手元にあるのをインストールするというのはXPからのリスクで乗り換えという意味では本末転倒になるということですね。いま入手できる13.10か12.04を使えばいいということですね。ありがとうございます。
カーネル自体は標準のUbuntuと同じ、ということなのか…。試しに今度、標準のUbuntuを入れて試してみます。
機械に弱いので、難しそうですが、面白そうです。
XPマシンは、ネットから外して、音楽の授業で使っています。
あーもし、まだ見てる人が居たら要注意、
グラボのメーカーはできるだけNvidiaで昔から対応してるんで相性がいいですが
ATI系はここ数年、対応したばかりなのでXが固まる事が多いです
ノートパソコンでATIのグラボ使ってるのは気をつけた方がいいです
得に最新はダメ
windowsから初めてubuntuに来る人はGUIがログインの所で選択出来ますので
クラシックにしてgnomeでお使い下さい
Unityにすると慣れない内は面倒です
おおかみ様のおっしゃるとおり、Unityは使いにくい上に重いです。
gnomeのタスクバーを下側へ移動させれば、Windows移行組でも違和感なく使えます。
もしgnomeが搭載されていないディストリを選択しても、
#sudo apt-get istall gnome
とターミナルへ書き込めば、大抵Gnome環境にできるので安心です。
個人的には、xfceよりもGnomeのほうが設定ボタンを見つけやすいので初心者向きだと思っています。
(画面解像度の変更や音量設定を見つけにくかった)
ただ、見た目はxfceのほうがWindowsに似ているので、一度設定してしまえばxfceのほうが楽か、あるいは単に慣れの問題か・・
藤本さんの以前の記事からArdourに興味を持ち、UbuntuStudioを11から試しました。
しかし11の時は、インストールで躓き、日本語の文字化けなどにも悩まされました。
12が出た処でまたトライしましたら、これらの不具合も解消されていて、
WindowsXpと変わらない快適な環境になりました。
昨今ではLPレコードの自炊(音楽分野ではまだこう言いませんか)などは
専らArdourで行っています。
しかしまだ1点だけ不具合(とゆーよりお節介)があります。
10分位稼動していると、省電力の為か画面をブラックアウトされます。
このときにぷちんとクリックノイズが載ってしまいます。
これを防ぐにはまだコマンド操作が必要です。
$xset s off
と打つと、お節介な省電力機能を停止できる様です。
丁度xpからOS乗換えで迷っている所なので参考になります。
ところで、記事には書いてないようなので気になっている事があるのでコメントさせて頂きます。
OSのアップグレードを今までしたことがなかったので、今回のxpサポート終了で調べて始めて知ったのですが、xpから7や8.1にアップグレードする場合、クリーンインストールでHDDが初期化されるそうなのですが、こちらのUbuntu Sutudioも同様にHDDは初期化されるのでしょうか?
どちらにしてもバックアップは必須だと思いますが、OSが変わるということはやはりwindows用のソフトは使えなくなってしまうんですかね?
だとすると、ただxpからUbuntu SutudioにするっていうのはメインPCとして使うのは、私には厳しいかなと思ってしまいました。
結局windows用のソフト使うためにHDDを増設して7か8.1を入れて、その上でxpをUbuntu Sutudioにって本末転倒に(笑)
ginsectさん
HDDは初期化することもできるし、データをとっておくことも可能ですが、
ある程度はHDDをUbuntu用に確保しなくてはならないので、データ量が多いと
問題になると思います。が、いずれにせよ、バックアップは必須ですね。
初めまして。宜しくお願いします。私はxpを使用していました。しかし4月以降、『使用継続は危険』との事で、インターネット接続はしないで、専ら文書作成などに使用しています。パソコンを買い換えようか迷っていた所、今日書店で『日経pc21』と言う雑誌を発見しました。その雑誌の中に付録として『ubuntu』のdvdをインストールをしたら、今までの様にxpを使用出きるという事でした。ちなみにサポート期間は5年のようです。これは信用しても大丈夫名のでしょうか?御教授頂ければ幸いです。基本的に普段はネット検索やyou tubeなどの動画を見るくらいです。
ジェラードさん
こんにちは。すみません、あくまでもここはDTMという視点でUbuntu Studioについて書いているページなので、なんともいえませんが…。Ubuntuの最新版を入れれば、大きな危険はなく、これまでのPCを使えるはずです。「今までの様にxpを使用出できる」という意味がよく分からないですが、PCが使えるだけで、Windows XPは使えないと思いますよ。
返信ありがとうございます。立ち読みレベルで舌足らずになってしまいましたが、内容はwindowsxpはマイクロソフトのサポート終了により継続使用が困難。しかし付録のdvd『ubuntu14.04』をインストール刷ると、パソコンが使い続けられ,メールやweb閲覧はもちろん,オフイスの文書も編集出来る。また5年に渡ってセキュリティ更新画サポートされるとありました。私はパソコンが詳しくなく、「パソコンを買い換えた方が良い」との声が多い中、付録のdvdをインストールするだけで、今まで通りインターネット検索が出来るって本当かな?と思い色々検索している内にこちらに辿り着きました。ただこちらの『ubuntu studio』というのを失念してました、すみません(汗)。
ginsect さん
時期的にもう買い替えかXPを消してインストールしてしまっているかもしれませんが、
私は手持ちのメインのノートマシンがPentiumM(2Ghz)・メモリ2GBでXP Tablet PC Editionなマシンなのですが、ubuntu studio14.04とのデュアルブートで自己責任で未だにXPも現役運用中です。
ubuntuのインストーラー(もしくは標準装備ソフト)で今あるHDDの構成を弄ってubuntuをインストールする場所を作ることができるので、空き容量さえ作ればWindowsも共存可能です。
因みに、Windowsで仮想メモリと言われるpagefile.sysというファイル(このファイルをメモリとは別にHDDに仮想的なメモリとして利用している)に当たるものとしてスワップ領域があります。[ubuntu スワップ領域 サイズ][検索]← と検索して適切なサイズを確認してインストール時に作成するとよいでしょう。
当方のubuntu studioで使用している容量は、ソフトをいくつか入れたりして約20GBとなっています。
Windowsと違い空き容量がなくなると起動にまで影響が出てきたりするそうなので空き容量は余裕を持ったほうが良いです。
ジェラードさん
ubuntuを始めとしたLinuxは、基本としてはオープンソース(ソフトを構築する際の設計図というかを皆に公開して誰でも手を加えることができる)で、基本的には無料(全て有料だったりちゃんとしたサポートは有料だったりすることはある)で有名ドコロは確実に更新もされているので最新のものにしていくとセキュリティー面では安心できます(LTSという長期サポート版を使用すると良いと思う)。
ソフト麺でも充実しており、officeは基本部分は互換のある(拡張機能というかだと互換が無かったりする)ソフトがあるので、使い方さえわかれば問題ないかと思います。
wineというソフトを利用すればWindows用ソフトも利用可能な可能性があります。
長文失礼しました。
書き忘れていたので追記しますが、現行のubuntu(のベース部分(カーネル?))は骨董品?は相手にしないということで現代的には大分と古いCPUが対応しないPAEに対応している必要があります。
因みにPentiumMとかのうちの一部を中心に対応していない場合があるので場合によっては起動できない場合があります。
後、nvidiaの標準のオープンソースドライバが14.04だと問題があるような気がします(Gefoce8400辺りで確認。 AMDは動くものが手元にないので未確認だが、11.10辺りの時にはRadeon6450で問題があった)。DVDに焼いたもので確認したのでアップデートや別のドライバの使用で改善されるかもしれません。