「不安だからとっておく」のはいけないのだシゴトハッカーズ(1/2 ページ)

ソーシャルブックマークなど、自分にとっての情報を保存するための手段は数多くあります。しかし、その情報を生かそうと思ったら、単に取っておくことは弊害にもなりかねません。メモを死蔵させないためのうまい方法とは?

» 2008年08月21日 15時40分 公開
[大橋悦夫、佐々木正悟,ITmedia]

Biz.ID 大橋さん、佐々木さん、メモを死蔵させないためには、どうしたらいいでしょうか?

大橋 これまでの連載でも部分的にお話してきたことですが、後からたぐり寄せられるようにするための目印として、適切なタグを付けるといった、一定のルールに従ってメモをためていくことだと思います。

 そういう意味では、入り口のところ――すなわちなぜそれをメモするのか、という基準をきちんと持ったうえで、情報に向き合うことが必要です。さもなければ、どれもこれも必要な情報に思えて、結局死蔵させてしまうことになりますから。

佐々木 やはり、行き先を意識してメモをすることでしょうか。書いた先から消えるメモ、例えば買いものメモのようなメモは、決して死蔵されませんね。書いて間を置いて、その後使うつもりでいるメモが、死蔵されやすいわけです。だからその後、何に使うかまで決めておいて、使うときに引き出せるなら、死蔵されにくくなるはずです。

Biz.ID なるほど、最初にメモの目的を決めておくということですね。お二人は、どんな目的をいつも念頭に置いているのですか?

大橋 先ほど、入り口という言葉を使いましたが、当然その先には出口があるわけです。こちらでも書いたとおり、具体的には、出口となるプロジェクトごとにタグを対応させて、常に「これはどのプロジェクトに役に立つ情報だろうか?」と自問するようにしています。そういう意味では、現在自分が抱えている仕事(プロジェクト)を念頭に置いています。

佐々木 死蔵メモがゼロになるわけではないのですが、死蔵しそうなメモって、だんだん分かってくるようになります。どんな目的で使うのかは、はっきりしないけれど、とりあえず忘れたくない、面白そう、覚えておく価値がありそう、ネットなどではそうしたそのほかの役に立ちそうな情報が頻繁に目に飛び込んできます。そういうものは、あちこちに動かすクセを付けておくと、簡単に死蔵して終わり、ということを防ぐことができますね。

Biz.ID あちこちに動かす、とはどういうことですか?

佐々木 とりあえず取っておきたい(でも何に使うかは不明)というメモを[その他]とかいうタグを付けてEvernoteに落とし込んでしまうと、後から読まない可能性がとても高いです。そういうメモ(URL)などは、あるときは、人に紹介してみたり、たまには「あとで読む」などを使ってメールで投げてみたり、あるいはTwitterを使ってちょっと人目にさらしてみたり、diigoなどを使って、仕事のパートナーと共有したりすることで、できるだけ単なるストックにしないようにしています。

Biz.ID なるほど、ため込まずに、いろんな場所に出してみる=あちこち動かす――わけですね。大橋さんは、プロジェクトを念頭においてメモするということですが、とりあえず取っておきたい(でも何に使うかは不明) というネタはどうするのですか?

大橋 前回のチュートリアル編でも書いた「ブリッジ」を試みます。すなわち、それを必要としていそうな人、あるいはチームにブリッジするわけです。当面、自分にとって必要ではない情報でも、それを今すぐに必要としている人というのはいるものですから。

 ただし時には、スルーすることも必要だと思います。みんなが知っておいたほうがいい情報によって、自分(だけ)が知らなければならない情報を埋もれさせてしまっては本末転倒ですので。

Biz.ID なるほど。ではメモを死蔵させずに何らかのアウトプットにつなげるとして、望ましいアウトプットの方法ってあるのでしょうか?

大橋 最も手っ取り早く始められる方法はブログですね。ただし、単に気になることをポストしていくだけではなく、テーマを決めること。分かりやすい例としては、「俺と100冊の成功本」というブログです。

 このブログには、以下のような目的が掲げられています。「このサイトは、いわゆる成功本を100冊読むことで、成功できるかを検証するページです」。その後、100冊を達成したため、「このサイトは、いわゆる成功本を100冊読むことで、成功できるかを検証するページでした」と過去形に改められましたが、このように具体的なテーマを決めておくと、自然と「この本はブログで紹介しよう」というフィルターの役割を果たしてくれるようになります。「みんなが知っておいたほうがいい情報」の誘惑に打ち勝てるわけです。

佐々木 外から見るとアウトプットらしく見えないかもしれませんが、メモを書いて、しばらく寝かせてから、それについて“もっと考える”というアウトプットも悪くないと思います。私はこの目的のために、「考えるブログ」を自分のためだけに1個持っています。ものすごくエントリは少ないのですが、同じことを何度も考えるので、そうした使い方には適しています。考えがまとまると、そこからまた外部へ出したくなります。そういう流れのもとになっています。

Biz.ID 自分の関心がはっきりしている場合、テーマの数だけ、ブログを持っておいたほうがいいのでしょうか?

7つの違ったテーマを追いかけるブログを運営して、8つ目の「仕事を楽しくする」というテーマのブログにたどり着いた

大橋 持とうとすることは良いと思います。実際に、テーマの数だけ作ろうとすれば、その手間に嫌気がさして、本当に自分にとって関心の強いテーマだけが残るはずです。僕自身、これまでに7つのブログを運営してきましたが、いずれも途中で燃え尽きています。でも、7つのテーマを追いかけたからこそ、8つめの、一番長く続いている、現在のブログのテーマにたどり着けた、ということはあります。そうなると、自分が本当に追いかけたいテーマの周辺に狙いを定めて書いていくと、自然と「本物」が残っていくのではないでしょうか。

佐々木 アウトプットとしては、「書く」ということのほかに、例えば「ずっと買おうと思っていたもの」をいろいろメモったり、情報収集したりした後「買う」というようなことも含まれると思いますが、その過程でブログを作ったりする人もいますよね。そういうブログはエントリもそうは増えないし、買いものとともに終わったりもするわけですが、そういう使い方もあると思います。意外と、ほかの人にも役に立ちます。

Biz.ID 興味を持った瞬間に一個ブログを作って、興味が持続している間は更新する感じですね。ちなみに、大橋さん、佐々木さんが定期的に更新している“アウトプット先”っていくつくらいあるのですか?

大橋 この連載のような仕事も含めて6つくらいですが、常に2〜3割程度は入れ替わっています。中には非公開のブログもあり、目的に合わせて本の抜き書きをしています。

佐々木 MindManagerで育てているテーマがありまして、そこにノードとして追記しています。8くらいを中心に、「脳」「心理学」のテーマのメモを入れて、15前後。もちろん連載はアウトプット先ですが、書籍というアウトプット先もあって、ほかには、やっぱり「考えるブログ」にアウトプットします。

Biz.ID なるほど、すごいたくさんのアウトプット先と、明確なテーマ分けがあるわけですね。

佐々木 ブログを付けていくのが深まってくると、だんだん勉強ノートみたいにはなっていきますね。そうしたものっていろいろ「幅」があるので、だから、いろんな切り口からテーマが分かれる分「タグ」が有効なのだと思います。明確なテーマ分けは、ある場合もありますが、ない場合もあります。例えば、「これは心理学で考えたいけど、自分のブログでも、本でも使えるな」というものに、タグを複数付けます。そういうややあいまいなものを「とりあえず取っておく」に入れないことが、死蔵を防ぐのだと思います。

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