日本発の動画共有サービスとして、うなぎ上りで登録ユーザーを集める「ニコニコ動画」。先週、そのニコニコ動画を管理する(株)ニワンゴが、サービス内で使われる音楽著作物の利用料を払うために、(社)日本音楽著作権協会(JASRAC)と協議を始めたというニュースがネットに流れた(関連記事)。
この提携は、ニコニコ動画とそのユーザーに何をもたらすだろうか。また、JASRACといえばその著作権ビジネスのやり方でインターネットで毛嫌いされる風潮があるが、その原因はどこにあるのか。ネットと著作権に詳しい、ITジャーナリストの津田大介氏に話を聞いた。
【解説】JASRAC
JASRACは、作詞家、作曲家、音楽出版社などから著作権の管理を委託され、使用料を回収して著作権者に分配するという事業を行なう団体。音楽の歌詞やメロディーには著作権があり、コンサートやカラオケ、CD/DVD、テレビ/ラジオ/インターネットなどで音楽を利用する際には、著作権者に対して使用料を払う必要がある(著作権が切れているときや、権利者が無料での使用を認めた場合などは除く)。
JASRACとの提携は「既定路線」
── 今回の提携を率直にどう評価しますか?
津田 YouTubeもニコニコ動画も、投稿される動画の大半は著作者の許諾を得ない「海賊版」ですよね。利用者の動画に対するニーズと、権利者の削除要請や法的圧力が完全に対立する中で、今回の契約締結を前提とした協議が開始されたことは、膠着する著作権問題を解決すべく第一歩を踏み出したという点で評価されるべきだと思います。
とはいっても、個人的にはそこまで大したニュースではない、十分予測できた話だなと思っています。なぜならニワンゴがニコニコ動画を存続させる気なら、当然、早い段階から著作物の使用料を支払うことを視野に入れていたはずだからです。
ニワンゴの親会社である(株)ドワンゴは、着メロで成長した企業ということもあって、JASRACやコンテンツホルダーと何度も契約を交わしてきていて、著作権関連の交渉に慣れています。
だからニワンゴも今回の提携以前から、コンテンツホルダーに「一緒にやりましょう」と呼びかけて、それと同時にニコニコ動画の動画投稿サーバーである「SMILE VIDEO」の権利保護を強化するという体制を整えてきた。JASRACとの提携もその一環で、ニュースを聞いたときも「既定路線」だと感じました。
(次ページに続く)
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