セミやコオロギ、キリギリスは同じ種でも生息する地域によって鳴き方が異なる。例えば、ミンミンゼミは「ミーンミンミンミンミンミンミー」と鳴くが、対馬の個体は「ミンミンミンミンミンミンミー」と鳴く。地域性という点に着目すれば、ムシにも人間でいう方言がある、と言っていいだろう。 ゲンジボタルの場合、生息地域によって光を発するテンポが異なる。東日本では間隔が4秒間だが、西日本では2秒。その中間に3秒のテンポもいる。ゲンジボタルにとって光の明滅はオスとメスとのコミュニケーション手段。だから重要な方言だと言えよう。 関西や九州を転々としてきた私にとって方言について、考えさせられることが多くある。 大阪育ちの両親のもと、兵庫県西宮市で20歳まで過ごした。次の10年を京都で、その次の10年を福岡市で暮らし、5年前から筑豊にいる。だから今では、大阪弁に近い神戸弁に京都弁が継ぎ目なくかぶさり、所々にわざと