今日のブログでは、国の方針により、国立大学財務・経営センターの研究部がこの3月31日をもって廃止されますので、読者の皆さんにご報告しておきます。
「独立行政法人の制度及び組織の見直しの基本方針」(平成24年1月20日閣議決定)における国立大学財務・経営センターに関係することとしては
・大学入試センター及び大学評価・学位授与機構については統合し、大学連携型の成果目標達成法人とする。
・国立大学財務・経営センターについては廃止し、その業務のうち当面継続されるものについては、統合後の法人に移管する。
と記載されています。
法人の統合は2年後を目指すとされています。当面継続される事業とは、国立大学の建物修繕費を中心とした交付事業と、国立大学附属病院の建物や医療機器購入に必要な資金の貸付事業の二つです。この二つの事業については、各大学や附属病院から継続が強く要請されています。
なお、貸付事業の財源の一部は、当センターが発行している債権にもとづいていますが、2年後に当センターが廃止されたとしても、新法人に確実に事業が承継されますので、投資家の皆様におかれましては、どうぞご安心ください。
さて、去る3月23日には、センター研究部の最後の事業となったシンポジウムが開催されました。私も、そこでプレゼンをさせていただいたのですが、その内容は追々お話していくことにして、今日のところは、平成16年度以降のセンター研究部の業績を簡単にまとめた小冊子「国立大学財務・経営センター研究部の足跡」の挨拶文を私が書かせていただきましたので、ブログの読者の皆様にも紹介させていただくことにします。
国立大学財務・経営センターは廃止されることが決まっており、今回の研究部廃止により、その機能が大幅に縮小されますが、廃止されるまでは残された事業を遺漏なく遂行しなければなりません。国立大学、特に附属病院の公的機能の向上を支援することを通じて、国民や地域の皆様に少しでも貢献できるように頑張りたいと思っています。
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「国立大学財務・経営センター研究部の足跡」
理事長挨拶
平成22年から当センター理事長を拝命している豊田でございますが、当センター研究部の足跡を発刊するにあたり、一言ご挨拶を申し上げます。
国立大学財務・経営センター研究部は、当センターの前身である国立学校財務センターが設立された時(平成4年)に発足し、平成16年の当センターの独立行政法人としての再出発を経て、20年間にわたり大学の財務・経営の改善を図るための研究を続けてきました。しかし、この度、国の財政縮減の一環として平成23年度をもって廃止され、研究活動に終止符が打たれることになりました。
設立当初は久我重雄氏、市川昭午氏が、それぞれ一人で研究員をお勤めになっておられましたが、平成8年から天野郁夫氏、平成12年からは山本清氏が加わって次第に研究体制が充実され、さらに市川氏ご退職の後、島一則氏、丸山文裕氏が加わって4人体制となり、活発な研究活動がなされました。
時あたかも国立大学法人化の前夜であり、法人化制度とそれに伴う財務・経営の課題を中心として、高等教育の在り方についての国際的で広範な情報提供がこのセンターを中心になされたことは、特筆すべきことです。
平成16年の国立大学の法人化に時機を同じくして、当センターも独立行政法人として再出発し、研究部のテーマであった大学の財務・経営の改善のための研究は、いっそう重要性を増しました。
実は、当時三重大学長であった私も、平成16年10月2日に、当センター研究部の主催する第23回財政・財務研究会「国立大学附属病院の経営とその問題点」において、コメンテータとして発表しています。この時の発表をもとに「大学附属病院の経営とその問題点(コメント)―経営改善活動の経験から―」という論文を書き、当センターの紀要である「大学財務経営研究」第2号(2005年)に掲載していただきました。
法人化当初の混乱の中で、当センター研究部によるこのような大学財務・経営に関する情報提供は、大学の現場においても、また、政策担当者においても、たいへん貴重なものであったと思います。法人化に先立つこと12年も前に、大学の財務・経営をテーマとした研究部を創設された先達の先見の明を感じるものです。
このような、大学の財務・経営の研究を大学において行うことは、学生の需要が小さいこと、研究者の興味に任せることによる中断や、現場のニーズや政策立案と乖離するリスクがあることから、できるならば、政府が支援する第三者機関で行われることが最も望ましいと考えます。法人化後の当センターは、政府と大学から一歩離れた中立的・客観的な立場から大学の財務・経営の研究を行い、その成果を大学に還元することによって大学現場の財務・経営の改善に生かしていただき、一方では、政府の高等教育政策に反映していただくという、たいへん好ましい形で再出発したことになります。
研究部の陣容は、水田健輔氏、石崎宏明氏、澤田佳成氏、そして、金子元久氏を迎え、入れ替わりを含めて4人体制が維持され、大学病院の財務・経営の研究にも力を入れ始めるなど、時代の急速な変化にも対応してきました。そして、法人化第二期を迎えて国立大学法人はさらに厳しい財務・経営状況に置かれることとなり、当センターの研究部の重要性もいっそう大きくなるところでした。
しかしながら、国の財政逼迫に際して、国立大学の財務・経営の支援をし、その機能を守り、高めようとしていた当センターが、まさにこれからという時に事業仕分けの対象となって、研究部が廃止されるに至ったことには、忸怩たる思いを禁じ得ません。
わが国において、大学の財務・経営に関して系統的に研究し、その成果を大学の現場に還元するとともに政策立案に資すことができる研究機関は、現在のところ他に見当たりません。このような研究が途絶えて、これまでの20年間の当センター研究部の蓄積が散逸し忘れ去られることは、わが国にとって大きな損失なのではないかと感じます。
大学の現場と同時に政策立案にも役立つことを通して国民の利益に貢献する「大学の財務・経営の研究」が、今後も何らかの形で継続されるよう、関係各位の善処を切にお願いいたします。
国立大学財務・経営センター理事長
豊田長康