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猛スピードで駆け上がった。新しいビジネスを作り上げた。億万長者にもなったのに、どうしてこんなに不安なんだろう。「時代の寵児」と持て囃された経営者たち。その顔に焦りの色が滲み始めた。
社員の給料が高すぎて
六本木ヒルズ(東京都港区)のグリー本社を訪ねると、エレベーターホールから続くエントランスは、真っ白を基調とした広々とした待合スペースになっていた。来客者はゆったりとした白いソファに座って、アポイントを取ったグリー社員をそこで待つ。経費節約のために受付は「電話だけ」という会社が増えている中にあって、日本トップクラスの家賃を誇る六本木ヒルズで、来客者のために惜しみなくスペースを使う様は優雅さを漂わせていた。
来客者の一人が、その空間を「まるで巨大宗教団体の施設のようだ」と語っていたのが耳に残る。いまから2年前の2011年、本誌記者が取材でグリーを訪ねた時のことである。
当時、対応に出てきた広報担当者は大手電機メーカーからの転職組。取材に応じてくれたゲーム開発ディレクターも、直前に大手ゲームメーカーから転職してきたばかりだった。ちょうど携帯電話用ゲーム業界が急拡大する中で各社は人材獲得競争を熾烈化させ、グリーは新卒社員に「最高1500万円」の年収を約束するなど、破格の待遇を打ち出して人材集めを急いでいた時期である。
オフィスには「我こそは」とグリーの門を叩いた20代、30代中心の〝腕自慢〟が溢れ、ノートパソコンを片手に次々と訪れる来客者に慌ただしく対応していた。この年、グリーの株価は上場来高値の2840円をつけて絶頂の極みにあった。