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ピアポント素数

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』

ピアポント素数(ピアポントそすう)またはピアポン素数[1](ピアポンそすう、: Pierpont prime)は次のような形で表される素数のことである:

2u 3v + 1, ただし uv非負整数

つまり p − 1 が 3-smooth英語版[注釈 1] であるような素数 p である。

概要

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数学者のジェームズ・ピアポント英語版にちなんで名付けられた。彼はこれを円錐曲線を用いて作図できる正多角形の研究に導入した。

v = 0 のときのピアポント素数は 2u + 1 の形であり、これはフェルマー素数となる(u = 0 のときの値 2 を除く)。v がならば u も正でなくてはならない(3v + 1v > 0 のときは 2 以外の偶数であり素数ではないから)。したがって、2 でもフェルマー素数でもない全てのピアポント素数は、k を正の整数として 6k + 1 の形をとる。

ピアポント素数の最初の数項は

2, 3, 5, 7, 13, 17, 19, 37, 73, 97, 109, 163, 193, 257, 433, 487, 577, 769, 1153, 1297, 1459, 2593, 2917, 3457, 3889, 10369, 12289, 17497, 18433, 39367, 52489, 65537, 139969, 147457, 209953, 331777, 472393, 629857, 746497, 786433, 839809, 995329, ... (オンライン整数列大辞典の数列 A005109

となる。

2020年現在知られている最も大きいピアポント素数は 3 × 216408818 + 1 (4,939,547 桁)であり、これが素数であることは2020年10月に発見された[2][3]

分布

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数学の未解決問題
ピアポント素数は無限に存在するか?
小さなピアポント素数の分布。軸は2の指数と3の指数。

経験的には、ピアポント素数は特に珍しかったりまばらに分布しているわけではないようである。106 未満には42個あり、109 までに65個、1020 までに157個、10100 までに795個存在する。

ピアポント素数において代数的な因数分解からの制限はほとんどないため、指数が素数でなくてはならないというメルセンヌ素数の条件のような要求はない。したがって、 の形をした n 桁の整数の中で素数であるものが占める割合は、全ての n 桁の整数の中で素数が占める割合と同様、1/n に比例するはずだと期待される。この範囲にこの形の数は Θ(n2) 個あるため、Θ(n) 個のピアポント素数があるはずである。

Andrew M. Gleason はこの推論を明示的なものにし、無限に多くのピアポント素数が存在すると予想し、もっと具体的には 10n までに約 9n 個のピアポント素数が存在するはずだとした[4]。Gleason の予想によれば、N 未満には Θ(log N) 個のピアポント素数が存在することになる。これは同じ範囲においてメルセンヌ素数がわずか O(log log N) 個と予想されていることとは対照的である。

素数判定法

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のとき、 はプロス数であるから、これが素数であるかどうかはプロスの定理英語版により判定できる。一方 のとき、 に対する素数判定は、 が小さな偶数と3の大きな累乗の積と解釈できることに着目して、Williams と Zarnke の判定法を使うのがよい[5]

フェルマー数の因数となるピアポント素数

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世界的に行われているフェルマー数の因数(約数)の探索作業の一環として、いくつかのピアポント素数が因数として発表されている。次の表[6]

素数 を割り切る

ような m, k, n の値を示している。左の数は k が3の累乗のときにピアポント素数であり、右の数はフェルマー数である。

m k n 発見者
38 3 41 1903 Cullen, Cunningham & Western
63 9 67 1956 Robinson
207 3 209 1956 Robinson
452 27 455 1956 Robinson
9428 9 9431 1983 Keller
12185 81 12189 1993 Dubner
28281 81 28285 1996 Taura
157167 3 157169 1995 Young
213319 3 213321 1996 Young
303088 3 303093 1998 Young
382447 3 382449 1999 Cosgrave & Gallot
461076 9 461081 2003 Nohara, Jobling, Woltman & Gallot
495728 243 495732 2007 Keiser, Jobling, Penné & Fougeron
672005 27 672007 2005 Cooper, Jobling, Woltman & Gallot
2145351 3 2145353 2003 Cosgrave, Jobling, Woltman & Gallot
2478782 3 2478785 2003 Cosgrave, Jobling, Woltman & Gallot
2543548 9 2543551 2011 Brown, Reynolds, Penné & Fougeron

正多角形の作図

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折紙の数学において、藤田の公理は可能な7種類の折り方のうち6つを定義する。これらの折り方は任意の三次方程式を解く点の作図を可能とするために十分であることが示されている[7]。ここから、N が3以上でかつ N = 2m3nρm, n は0以上, ρ は相異なるピアポント素数の積[注釈 2])という形をしていることが、N 辺の正多角形を折り出せるための必要十分条件であるということが導かれる。これはコンパス定規角の三等分器を用いて作図できる正多角形のクラスと同一である。なお、コンパスと定規のみで作図できる正多角形(通常の意味での作図可能な正多角形)は、その特別な場合で、n = 0 でありかつ ρ が相異なるフェルマー素数の積になっているものである[注釈 2]

1895年、ジェームズ・ピアポントがこのクラスの正多角形を研究した。ピアポント素数の名はこの業績に由来する。ピアポントはそれまでに作図された点に由来する係数を持つ円錐曲線を描く能力を加えることで、コンパスと定規による作図を上記とは異なるやり方で一般化した。彼が示したように、これらの操作で作図することができる正 N 角形は Nトーシェントが 3-smooth であるようなものである。素数のトーシェントは自身から1を引いて得られるから、ピアポントの作図手法により作られる素数 N はまさしくピアポント素数である。しかし、ピアポントは 3-smooth なトーシェントを持つ合成数の形については記述しなかった[8]。後に Gleason が示したように、これらの数は先述した 2m3nρ という形のものに他ならない。

ピアポントでない(フェルマーでもない)最小の素数は11であり、正十一角形はコンパス、定規、角の三等分器(もしくは折り紙、円錐曲線)で作図することができない最小の正多角形である。これ以外の 3 ≤ N ≤ 21 である正 N 角形はどれもコンパス、定規、角の三等分器で作図することができる。

一般化

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第2種ピアポント素数: Pierpont prime of the second kind)は 2u3v − 1 という形の素数である。これらは以下の値である。

2, 3, 5, 7, 11, 17, 23, 31, 47, 53, 71, 107, 127, 191, 383, 431, 647, 863, 971, 1151, 2591, 4373, 6143, 6911, 8191, 8747, 13121, 15551, 23327, 27647, 62207, 73727, 131071, 139967, 165887, 294911, 314927, 442367, 472391, 497663, 524287, 786431, 995327, ... (オンライン整数列大辞典の数列 A005105

k 個の固定された素数 {p1, p2, p3, ..., pk}, pi < pj for i < j に対して、一般化ピアポント素数: generalized Pierpont prime)とは の形で表される素数である。第2種一般化ピアポント素数: generalized Pierpont prime of the second kind)とは の形で表される素数である。2より大きい素数は全て奇数であるため、どちらも p1 は2でなければならない。OEISにあるこのような素数列は以下の通り。

{p1, p2, p3, ..., pk} +1 −1
{2} A092506 A000668
{2, 3} A005109 A005105
{2, 5} A077497 A077313
{2, 3, 5} A002200 A293194
{2, 7} A077498 A077314
{2, 3, 5, 7} A174144
{2, 11} A077499 A077315
{2, 13} A173236 A173062

関連項目

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  • 安全素数p − 1 ができるだけsmoothでない素数)

脚注

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注釈

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  1. ^ 3以下の素因数しか持たないこと。
  2. ^ a b 0個の数の積すなわち ρ=1 でもよいとする。空積を参照せよ。

出典

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  1. ^ デイヴィッド・A.コックス、梶原健(訳)、2008–2010、『ガロワ理論』下、日本評論社 ISBN 978-4-535-78455-0, 「第10章 作図」.
  2. ^ Caldwell, Chris. “The largest known primes”. The Prime Pages. 2 Jan 2021閲覧。
  3. ^ The Prime Database: 3*2^16408818+1”. The Prime Pages. 2 Jan 2021閲覧。
  4. ^ Gleason, Andrew M. (1988), “Angle trisection, the heptagon, and the triskaidecagon”, American Mathematical Monthly 95 (3): 185–194, doi:10.2307/2323624, MR935432 . Footnote 8, p. 191.
  5. ^ Kirfel, Christoph; Rødseth, Øystein J. (2001), “On the primality of ”, Discrete Mathematics 241 (1-3): 395–406, doi:10.1016/S0012-365X(01)00125-X, MR1861431 . 特に Theorem 2.
  6. ^ Wilfrid Keller, Fermat factoring status.
  7. ^ Hull, Thomas C. (2011), “Solving cubics with creases: the work of Beloch and Lill”, American Mathematical Monthly 118 (4): 307–315, doi:10.4169/amer.math.monthly.118.04.307, MR2800341 .
  8. ^ Pierpont, James (1895), “On an undemonstrated theorem of the Disquisitiones Arithmeticæ”, Bulletin of the American Mathematical Society 2 (3): 77–83, doi:10.1090/S0002-9904-1895-00317-1, MR1557414 .

外部リンク

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