※本稿は、木下勝寿『なぜあの商品、サービスは売れたのか? トップマーケッターたちの思考』(実業之日本社)の一部を再編集したものです。
ノリで始めたYouTubeから半年後にブランドが生まれた
【木下勝寿(北の達人コーポレーション社長)】最初は筋トレ界のスーパースターである山本義徳さんのYouTubeチャンネルを立ち上げてからVALXというブランドの商品を発売して、SNSで売っていったと聞いております。
事業戦略があってそのような流れにしたのか、それとも、山本さんのYouTubeをやりながらプロテインを出そうという流れになったんでしょうか?
【只石昌幸(レバレッジ代表)】今だと「戦略を描いてました」って美しく言えてしまうんですが、お恥ずかしい話、ノリの部分が大きかったです。元々僕たちはプロテインを出す前から、パーソナルトレーナーのマッチングメディアを運営していたんですが、その過程でそこに登録しているトレーナーの人たちと一緒に何か商品を売れば勝機があるんじゃないかという話が出たんです。
そこでトレーナーといえば「プロテイン」だよね、と。でもプロテインはすでに大手をはじめ競合がめちゃくちゃ強く、レッドオーシャンだよね。ここで戦うにはどうしたらいい……? そうだ、有名人に監修してもらおう! となって、筋トレ界のスーパースター山本義徳さんに「僕らと一緒にやりましょう!」と伝えにいったんです。最初は普通に断られてしまって、4度目の正直で引き受けていただけることになりました。
でもレッドオーシャンで普通にやっても後発なので売れない。そこで山本先生のYouTubeチャンネルを立ち上げて、そこで一つひとつの商品を丁寧に伝えていけば売れるんじゃない? とノリで始めたYouTubeから半年後にブランドが生まれた、というのが流れで、本当にノリです。
【木下】いや、でもそれはノリというよりかは、最初にプロテインの事業をやるという戦略があって、そこの地ならしをやっていたという感じじゃないですか?
【只石】そうですね。ただ、僕らは通販をやった経験がなかったのが功を奏して、後発ブランドとして普通じゃ絶対に勝てないと考えてしまうような市場でも突き進めたというのがあると思います。
ですから、参入する前から「そこで勝つには他がやっていないやり方をする必要がある」と考え、レッドオーシャンのプロテイン市場で勝つために、道具であるSNS・YouTubeというものをミックスすることによって、新たな市場が見つかった……というイメージですね。