ウインタースポーツ真っ盛りの2月上旬、日中はスキーヤーらでごった返す新潟県湯沢町三国の苗場スキー場周辺も、午後7時を過ぎれば人影はほとんどない。旅館やロッジの窓から漏れる明かりだけが、人々の息づかいを感じさせる。
張り詰めるような静けさと、勢いを増していく雪。国道17号の脇の温度計は氷点下7度を示す。恐怖すら感じて立っていると、遠くからひときわ明るい光が近づいてきた。「グオオオオ」と地響きのような重低音を立て、目の前を除雪車両が通り過ぎていった。
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湯沢町三俣から群馬県との県境までの13・6キロを担当するのが、町内の総合建設業「文明屋(ぶんめいや)」だ。二居除雪ステーションを拠点に1班16人の3班が日勤と当直をこなし、24時間体制で除雪を担う。
除雪オペレーター歴10年目の杉田将平さん(33)は「前が見えなくなるので、いつもよりスピードを落とし、スノーポールなどで位置を確認して運転している」と話す。普段は時速20キロぐらいで走るが、吹雪の時は5キロほど落とす。
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激しい降雪に道路の急勾配、急カーブ、狭いトンネル-。除雪オペレーターは日本海側と首都圏をつなぐ要所で、昼夜を問わず奮闘している。杉田さんは「地元の人に、『文明屋さんが一番除雪がきれい』と言ってもらえるのが一番だ」と力を込める。
近年は自動運転機能を搭載したロータリー除雪車が導入されるなど、新技術の開発が進んでいるが、杉田さんはこう言う。「うちの工区では厳しい。その時の状況で、人の感覚と経験でやらないといけない」。難所の除雪には、熟練の技術が欠かせない。
(写真映像部・大橋奎介)...