上記のようなQQEの目標がなかなか達成できず、コロナ後にようやく構造パラメーターの変化が実現したことが、クルーグマンのロジック自体(経済主体が将来の金融緩和効果を現在に先取りして行動する)に問題があったと考えるのか、それとも、クルーグマンの提唱した将来の政策に関する「約束」の仕方に工夫の余地があったのかは興味深い問題である。
どのような「約束」をすれば企業や家計が短期間のうちに行動様式を変化させたかという問題には適切な回答が思いつかない。例えば、QQEの導入時点で、「CPIインフレ率が4%に達しても金融緩和を維持する」と約束しても-事後的にそうなったが-当時の企業や家計が行動様式を変えたかと言えば、同意する人は少ないように思う。さらに言えば、「総括的検証」までのQQEが一定の期間に亘って強力な金融緩和を続け、その意味で「約束」を実績で示したにも関わらず、インフレ予想が目立った変化を見せなかった点にも注意する必要がある。
ただし、「レビュー」の多くの論文は、コロナ後の大きな供給ショックが生じる以前に、インフレ予想の改善が始まっていたことも示唆している。
QQEの後半の局面に焦点を絞って、例えば労働参加率の飽和などの内生的な要因が企業や家計の行動様式にどのような影響を与えたのかを明らかにすることも、インフレ予想の変化の持続性を考える上でも重要と思われる。
https://www.nri.com/jp/media/column/inoue/20250114.html 関連する多くの論文が相互に成果や概念を参照していたことから明らかなように、このプロジェクトは、一定の標準化された視点によって経済や...
上記のようなQQEの目標がなかなか達成できず、コロナ後にようやく構造パラメーターの変化が実現したことが、クルーグマンのロジック自体(経済主体が将来の金融緩和効果を現在に先...
将来に非伝統的な政策手段を実施する場合にも、shadow rate自体、あるいは自然利子率ないし中立金利との相対関係を示すことで、金融政策のスタンスの説明にも資することが期待される。...
マイナス金利政策(NIRP)に残された課題 第三に、より難しい課題ではあるが、NIRPが長期にわたって維持されるとの期待を生じないようにする必要がある点である。 先にみたNIRPの...
「レビュー」のもう一つの焦点は、前節で取り上げたNIRPを含めて、この間に実施した非伝統的金融政策の波及効果である。 この点に関して興味深いのは、構造モデルと時系列モデル...