組織のあるところには必ず「無責任の構造」が潜んでいる、と著者は説く。確かにそうだ。まず、責任を支えているのは能力である。そして次に正義感だろう。能力はあっても正義感を欠いた人物はおしなべて、“構造的な無責任”に遭遇しても見て見ぬふりを決め込む。真っ当な責任感は、一段高い位置から自分の業務を部分として捉えることができる。 岡本浩一はJCO臨界事故の調査委員を務めた。事故の経緯に一章が費やされていて、断片的なニュースでは窺い知ることのできなかった貴重な記録となっている。 このプロセス(※JCOの工程違反)で、「それは危険だ」と声をあげようとしてその勇気がなくてできなかった人や、声をあげたために地位や人間関係で不利益に耐えねばならなかった人たちが、幾人かいたことだろう。彼らが声をあげ、その声が聞かれていれば、あの不幸な事故は起こらなかったに違いない。彼らの圧殺された良心を思うとき、私は刺すような
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