フジテレビはこれからどうなっていくのか。元テレビ東京社員で、桜美林大学教授の田淵俊彦さんは「今回のフジ騒動で、私は『ヒト』が『ないがしろ』にされているように思えて仕方がない。現場で働く社員のこころが離れてしまった。『フジ離れ』は制作会社や芸能事務所、取材先、他局へと広がっている。スポンサー離れよりずっと深刻だ」という――。
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取締役会後、取材に応じるフジテレビの清水賢治社長(手前)=2025年1月30日、東京都港区

フジ経営陣は、あの会見で誰に謝罪したのか

「こんな会社の社員で情けないと思った」
「社員のことを何も考えてくれていない気がした」
「幹部は自分の保身しかないよね」
「4月に入って来る新入社員がかわいそう」

以上は、27日のフジテレビの記者会見後に、私がフジの社員や元社員に取材をした際に出た感想である。

10時間以上に及ぶ、フジとフジ・メディアHDの取締役による「やり直し会見」は「準備不足」と「保身」、スポンサーや外資ファンド、総務省への「アピール」ばかりが目立ち、「何の成果もなかった」と酷評されている。

私はこのプレジデントオンラインの前稿において、同会見を「公共電波の私物化」と非難したが、あえて評価できる点を挙げるとすれば、以下の3つである。

1.「10時間超もの会見をよくやったな」という「呆れ」にも似た登壇者への評価
2.「のらりくらり」会見でも少しずつ事実を明らかにしていった記者たちの「粘り」への評価
3.「会見の在り方」について改めて考える機会をくれたという評価

だが、その反面、冒頭に挙げた社員や元社員の声からわかるように、会見に「社員不在」「社員無視」という感覚を持った者が多かったことは確かである。私も中継映像を見ていて、「幹部が向いている先は、社員ではない」と感じた。

社員たちの「疎外感」

会見の4日前には、社員向けの説明会がおこなわれた。その場で、幹部たちは社員の悲痛な叫びを聞いたはずだ。もしその訴えに真摯に耳を傾けていたら、27日の会見はあんな長丁場にならなかっただろう。

だが、実際には、社内説明会で社員が投げかけた質疑はそのまま同じように会見で繰り返され、幹部はそれに対して明確な返答ができなかった。「準備不足」が原因で会見が長時間化したことは火を見るより明らかだ。