余裕のポーカーフェイスを貫き通しているかと思えば、一か八かの賭けにはこめかみに伝う汗———
【キングメーカー 大統領を作った男】 2021年 - 韓国 - 112分
原題:
킹메이커 : 선거판의 여우/King Maker
監督:
ビョン・ソンヒン
キャスト:
ソル・ギョング
イ・ソンギュン
ユ・ジェミョン
チョ・ウジン
ペ・ジョンオク
1961年。独裁政治打倒という強い信念を抱くソ・チャンデは、野党新民党に所属し民主主義を掲げるキム・ウンボムの事務所を訪ね、とある戦略を提案する。ウンボムはチャンデの汚い戦略を良しとしなかったが、彼の考えた数々の戦略により見事初当選を果たし、チャンデはウンボムの陰の参謀役となるが...
当初は劇場で観る予定がなかったものの、次の「人質」まで時間があったので、朝イチでインド映画を観てからの韓国映画2本立てハシゴ映画してきた。最近、実話ものにハマっていて、しかも昔から参謀的な頭の回るキャラ好きなので、正直、当初の目当てだった「人質」より好きな内容だったので観て良かった。
支持するキム・ウンボムを勝たせるためなら給料や肩書すら不要。ものすごく頭が回るのに、常識的な倫理観の持ち主なら考えもつかない汚い選挙戦略をとるので、味方からも嫌われてしまう陰の男ソ・チャンデ。
ただし、常に汚い手段を使う訳じゃなくまっとうな手段をとる時もあるので、とにかく結果重視というのが分かる。善悪関係なく一番効果的な戦略をとるまでという徹底的な姿勢が冷酷とも言えるし、笑える時もあれば切ない時もあって本当に見応えのある映画だった。常に先を読み、余裕のポーカーフェイスを貫き通しているかと思えば、一か八かの賭けにはこめかみに伝う汗———そんな表現もたまらない。あと、酔うと途端にニコニコでかわいくなっちゃうところがかわいいww
勝つためなら手段を選ばない冷酷な参謀という面もあれば、信じた男にとことん尽くす一途さもあって後半はなかなか切なかった。
選挙の話の筈なのに映画が後半に向かうにつれ、愛する人のためならどんな汚い手も使って尽くすけど、所詮愛人は愛人にしかなれない日陰の女の一途な悲恋ものに見えてきたのは私だけ?
第三の男まで出てきたし、自分は泥を被って身を引く展開もあったりして、なんかそういうストーリーの恋愛映画があったはず。演歌にもありそう。
北の出身というチャンデの生い立ち故か、ウンボムに向ける思い=独裁政治打倒に対する思いというのも切ない。
実際はウンボムもそれなりに汚いことをやっているんだろうと、つい政治家性悪説な偏見で思ってしまうけど、理想家で真っ当な主義を貫ぬこうとするウンボムと現実的で手段を選ばないチャンデ———最後の鶏の卵の問題が、どこまでも共に日向を歩けない陰と陽の存在だと知らしめると同時に、そんな男だと分かっていたからこそ信じて支えてきたんだというある種の晴れ晴れしさもあって、印象深いラストだった。
(2022/10/01)映画館(字幕)