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[ワシントン発/ロイター]2月5日に学術誌『Science Advances』に掲載された研究は、小惑星ベンヌ規模の天体(直径約500メートル)が地球に衝突した場合の影響をシミュレーションし、世界全体で大惨事の連鎖が起きると発表した。直後の衝撃に加えて、大気中に1億~4億トンの塵が放出され、3~4年間にわたり気候の激変や大気中の化学物質の変化、光合成から生産される有機物量の低下が続くと考えられる。
「塵によって急に『衝突の冬』が訪れる。地表へ届く太陽光の減少、気温の低下、降水量の減少が起きる」と韓国・釜山大学IBS気候物理学センター(ICCP)の博士研究員であり、論文の筆頭著者であるラン・ダイ氏は述べた。最悪のシナリオでは、地表の平均気温が約4度低下し、降水量は15%減少する。また、植物の光合成量は20~30%減少し、紫外線を遮るオゾン層も32%縮小する。
研究チームによると、ベンヌ規模の中型小惑星が陸に衝突した場合、強力な衝撃波や大規模な地震、山火事、熱放射が起こる。そして巨大なクレーターが形成され、大量の岩石の破片や粉塵が飛び散る。また、大量のエアロゾルや気体が上層大気に到達し、気候や生態系へ長期的に変化を及ぼすとダイ氏らは指摘する。
過酷な気候の変化は、陸と海の植物の成長を妨げるという。
「陸の植物は急激に減少したあとに、2年程度をかけてゆっくり回復する。海洋プランクトンは6カ月以内に回復し、その後は鉄分が豊富な塵が海に入ったことにより珪藻(藻類の一種)が大増殖する可能性がある」(ダイ氏)
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