「蔵人しか味わえない搾り立ての日本酒が飲める」

 そんな誘いを受け、都内で開催された浅舞酒造(秋田)のテイスティング会にうかがった。いや、搾り立てといったって、商品化していれば搾ってから時間もたってるし、「単なる生酒でしょ?」と思っていたら、キンキンに凍ったチタンボトルに入った酒「天の戸 純米大吟醸45」が用意されていた。何でもこの酒は搾った酒をチタンボトルに詰めた後、最新技術をもって、マイナス30度で急速冷凍しているのだそう。通常の方法で日本酒を冷凍すると水とアルコールに分離して風味が変わったり、容器が破損したりしてしまうが、急速冷凍ではこれらのデメリットを全て解決。これにより、蔵で搾ったままの生酒が飲めるようになったのだ。

チタンボトルに詰めて急速冷凍された「天の戸 純米大吟醸45」
こちらは通常商品。スペックは同じだが…

 試飲した瞬間、「おぉ、これは!」と思わず声が出た。ぴちぴちと弾けるようなフレッシュ感とわずかなとろみと、クリアかつ、洋梨に似たジューシーな味わいは、まさに搾り立ての証。特殊加工したボトルによる効果で、搾り立ての酒にありがちな苦味が軽減され、さらに完成度を高めていた。同じスペックの通常商品と飲み比べをしたが、「ベツモノ?」と思うほど味が違い驚いた。現段階では非売品で値段も決まっていないが、SAKEブームで沸く海外に向けた商品だという。なるほど納得。「本物の搾り立て」の味を知らない外国人が、これを飲んだらリピートが絶えなくなるに違いない。だが外国人に独占されるのは、あまりにも悔しい。いつか国内でも販売されることを強く願う。

 現在、急速冷凍の日本酒はこの酒をはじめ、南部美人(岩手)や出羽桜酒造(山形)など複数の蔵で販売している。急速冷凍の日本酒はここ数年で普及した新しい技術なだけに、通常の商品よりやや値段が張るが、酒好きなら「ここぞ」という時に飲んで欲しい。日本酒の技術の進化を舌で実感できるはずだ。