
日本史における時代区分
2015年に読んだ「アメリカの歴史Ⅰ」の中で著者サムエル・モリソンは「歴史は多少とも継続的な、年代のはっきりした物語を前提とする」と言っています。従って、中央アメリカのマヤ族・アステカ族、ペルーのインカ族、北米インディアンは文字をもたず、記録にとどめた過去の事柄は記憶に残っていた神話だけであったたため、1942年以前の「アメリカ史」は書くことはできなかったと言いました。
仏教伝来以前の歴史をほとんど知らない私は、仏教伝来の538年(一説には552年)に経典、易、医、暦などと、一緒に文字(漢語、漢字)も伝わったと思っていたので、それ以前の歴史は神話だと思っていました。
(*1959年私が中学時代に習った仏教伝来は552年でした)
日本史における時代区分を作り、古代の歴史を調べてみると、私は大きな間違いを犯していました。
そこで、古代までの歴史を調べ直し、確証ある「古代の超概略史」としてブログに載せてみることにしました。
(*私が中年期(朱夏期)の頃の昭和64年(1989年)に終わった昭和時代は日本史における時代区分では「現代」でなく「近世」に変わっていることに気がつきました。昭和時代はだんだん遠くなっています)
【確証のある日本史の始まりはいつ頃か】
古墳時代の日本は国家として政治体制が未熟な時代でしたが、中国の後漢末期、220年から280年の三国時代(三国志の時代)、東晋時代および朝鮮の350年頃から676年の三国時代に朝貢が行われており、また戦乱からの避難民・亡命人や商売する人々などが日本に渡来していました。
(*朝貢:下の国が上の国に貢ぎものを献上し、上の国は下の国に何十倍の財物を下げ渡す外交政策の一種)
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考えてみれば、縄文・弥生時代にも南方や大陸からの人の移動とともに土器や稲作などが入ってきており、古墳時代はもちろん、時代に関係なく、常に人や物の流入流出があったことは当然だと思いました。
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渡来人や朝貢を通して進んだ政治・社会・文化の知識や技術や文字(漢字)は徐々に浸透してきており、また、中国や朝鮮の史書や石碑に倭人(日本人)が関与した記録があり、日本に残る遺跡や文物と照合し、年代と出来事を確定し、日本の歴史に刻んでいることを知りました。(中国では紀元前500年頃に諸子百家と呼ばれる思想家が輩出し、論語、大学、易経、書経などの四書五経や孫子(兵法)、暦学・天文学・陰陽説・五行説の書籍などが編纂され、その後も漢書、史記などの歴史書など数多く編纂されている)
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朝鮮半島の三国時代の405年 百済が倭国に漢字を、552年に仏教を伝えたと記されていますが、政治・外交・商売を行うため皇族・上級豪族・商人・知識階級の間では既に漢字(漢語)は使われていたのです。
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古墳時代には漢字は日本語としての表記法などが定まらず、書籍として残すことはできませんでしたが、記録として残すことができ、約100年後の奈良時代に日本語で712年『古事記』や720年『日本書紀』が最初の日本の歴史書として編纂されることになります。(*古事記、日本書紀には神話も含まれている)
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古墳時代の369年百済の任那(みまな、現在の全羅南道の釜山市を含む地域)に日本府を作り、そこを足場に日本が勢力を広げたことが記録として残っています。
また、592年に政治権力を握っていた蘇我馬子が崇峻天皇を殺害し、おなじ592年に推古天皇が即位し、聖徳太子が摂政となり、隋に遣隋使を派遣し、国家として認めさせました。ここから飛鳥時代が始まったとされています。
古墳時代の後半区間を「大和時代」と呼んでいる参考書があります。すなわち、古墳時代半ば(4世紀半ばのヤマト政権成立、369年任那日本府設置の頃)から592年飛鳥時代の直前までを大和時代としています。(参考4、5、6、7)
朝鮮半島北(中国吉林省集安)に414年高句麗19代広開土王(クァンゲトワン)の功績を讃えた碑文に倭軍が関与したことを下記の文に記録が記されています。
*400年百済支援の倭軍(日本軍)新羅に侵攻したが高句麗軍が迫ると任那まで退却した。
*404年高句麗軍は倭軍と戦い勝利した。
東漢(あずまのあやの)氏は後漢末期から三国志の時代の200~270年頃の戦乱時に日本に渡来した漢人の帰化集団を言い、土木建築技術や織物の技術を持っていました。
大和地方に住む東漢(あずまのあやの)氏は軍事力にも秀で、蘇我氏の門衛や宮廷の警護などを担当しており、東漢直駒(あずまのあやのあたいこま)が、592年に蘇我馬子に命じられて崇峻天皇を殺害したと言われています。
このように日本には古墳時代に中国・朝鮮から文字が入り、記録として残っていたため、古墳時代の年代と出来事は後年、書籍として編纂され、確証ある日本の歴史に刻まれました。
日本の歴史は文字が入り、使われた古墳時代から始まっていたことを認識しました。
【参考】
1.「明日への日本歴史 1 古代国家と中世社会」、五味文彦、山川出版社、2023
2.「入門 日本書紀 事典」、瀧音能之 監修、東京堂出版、2021
3.「マンガものがたり韓国史1」、徐永沫、訳 野崎充彦、(株)国書刊行会、2001.11.10
4.「0から学ぶ日本史講義 古代篇」、出口治明、(株)文芸春秋社、2018.2.25
5.「年表でおさらい日本史」、田崎俊明、(有)蒼史社、2019
6.「日本の歴史 1 神話から歴史へ」、井上光貞、中央公論社、1965
7.「日本の歴史 2 古代国家の成立」、直木孝次郎、中央公論社、1965
8.「最新古代史論"まほろばの国"ヤマトのあけぼの」、小池徹郎編集、(株)学習研究社、2009.4.15
9.「日本の古代史」、創刊人 蓮見清一、(株)宝島社、2014.1.13