ベトナムで「強さの象徴」「森の友」と愛されているクマが、危機に直面している。狭いおりに閉じ込められ、「伝統薬」の胆汁を注射器で吸い取られたり、飼育放棄で死んだり。哀れなクマを救おうと、市民たちが動き出した。 ハノイ中心部から西へ約40キロ。幹線道路脇の倉庫のような建物の前に、クマの絵が描かれた看板が立つ。建物の入り口をくぐると、薄暗く、がらんとした部屋の隅に主人らしき中年の女性が座っていた。「胆汁はありますか」と聞くと、奥の通用口に通された。 扉を開いて外に出る。動物のフンのにおいが鼻をつく。中庭のような場所に、幅1・5メートル、高さ2メートルほどの鉄製のおりがズラリと並び、ツキノワグマとマレーグマ計20頭が飼育されていた。 体重は100~150キロ。どのクマもあまり元気がない。首を緩慢に左右に振ったり、じっと座り込んだり。女性によると、魚や果物を与えて育てており、半年に1度、注射器で1頭
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