JASRACの市場シェアは99%
── なぜ包括契約が問題になったのですか?
津田 元々、JASRACは創立した1939年以来、60年以上にわたって音楽著作権の管理を一社で独占してきました。独占できたのは法律の裏付けがあったわけですが、それが2001年に「著作権等管理事業法」という法律が施行されて、ほかの業者も音楽著作権の管理業務に参入できるようになっています。
つまり、JASRACが管理業務を独占していたことで、放送局はJASRACに定額料金を支払っていれば「かけ放題」を維持できていたわけです。しかし、今ではJASRAC以外の事業者が管理する楽曲を流すと、追加で著作権料を支払わなければいけなくなった。
放送局からしたら、ほとんどの曲はJASRACに登録されているので、追加料金を払ってまで新事業者の曲をかけようとは思わないでしょう。事実、放送局内部では「この曲はJASRAC管理じゃないのでかけないように」という通達が出回っていたりします。
しかし、これでは公正な競争が行なわれず、いわばJASRACが放送局とグルになって、60年以上著作権管理業務を独占していたメリットをフルに利用しているとも言えますよね。これを元に公取は「JASRACが実質的に市場を支配している」と判断して、今回の立ち入り検査につながったのだと思います。
── 現在、JASRACのシェアはどのくらいですか?
津田 音楽著作権業務の取り扱い金額で見ると、99%以上がJASRACという状況です。JASRAC以外では、最近YouTubeとの提携で話題になったJRC(関連記事)やイーライセンスといった企業もありますが、今でも事実上独占という形ですね。
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