Weierstrassの多項式近似定理ワイエルシュトラスの多項式近似定理 - INTEGERSは1937年にStoneによって拡張されました(通称Stone-Weierstrassの定理)。それを述べるために言葉の導入から始めましょう。
をコンパクト位相空間とします。このとき、連続関数空間
を考えましょう。はコンパクトなので、
にはsupノルム
が入ります。簡単に確かめられるように、このノルムについては
上のBanach代数をなします*1。
を区間
としたとき、
の部分代数
を
とすると、Weierstrassの多項式近似定理は次のように述べることができます:
Stoneはを一般のコンパクト空間にした場合に、部分代数が稠密になるための条件を与えたのです。
Stone-Weierstrassの定理
次がStone-Weierstrassの定理です*2:
ちなみに、が
の点を分離するという条件が成り立つのは
がHausdorffのときだけです。実際、
を
の相異なる二点としたとき、
が
の点を分離するならば、
が存在して
が成り立ちます。よって、
のHausdorff性から開集合
が存在して、
を満たします。すると、は連続なので、
は開集合
によって分離されて、
はHausdorffというわけです。
というわけで、Stone-Weierstrassの定理を述べる場合、最初からをコンパクトHausdorff空間とすることが多いです。しかしながら、証明にはHausdorff性は用いません。
この記事では
B. Brosowski, F. Deutsch, An elementary proof of the Stone–Weierstrass theorem, Proc. Amer. Math. Soc., 81 (1981), pp. 89–92.
の証明を紹介します。彼らの証明法は束の性質など、従来の証明法で用いられてきた幾つかの事実を使わない初等的な証明です。用いるのはコンパクトの定義とBernoulliの不等式
だけと言っても過言ではありません。
準備
定理の条件を仮定します。
,
,
.
証明 . 各に対して、
が
の点を分離することから、
が存在して
が成り立つ。よって、とすると(
は
を含む
代数であることに注意)、
となる。更に、とすれば、
なる性質を持つ関数を構成できた。ここで、
は明らかにの開近傍である。
なので、のコンパクト性*3から、
が存在して
を得る。ここで、を
と定めると、
の性質から、
は
を満たすことがわかる。はコンパクトなので、
はその上で最小値をとる。よって、
であって
なるものが存在する。所望のは
で与えられることを示そう。の性質から、
が
の開近傍であり、
であることがわかる。
を
なるものとする。なので、
が成り立つ。この
を用いて、自然数
毎に
を
と定める。の性質により、
、
である。
任意のに対して、
に注意すると、Bernoulliの不等式ににより
なる評価を得る(最後の極限は上一様であることに注意)。
次に、任意のに対して、
に注意すると、再びBernoulliの不等式により
なる評価を得る(最後の極限は上一様であることに注意)。
以上より、与えられたに対して十分大きい
を取れば
.
が成り立つことがわかる。 Q.E.D.
証明. とする。各
に対して、補題で存在するような
を
とする。
であり、はコンパクトなので、
が存在して、
が成り立つ。をとる。各
に対して
が存在して
が成り立つ(補題より)。これらを用いて、としよう。すると、
であり、Bernoulliの不等式から、に対して
が成り立つ。 Q.E.D.
Stone-Weierstrassの定理の証明
および
を任意にとって、
なるが存在することを示す。
を
でとりかえることによって
と仮定して良い(
は定数関数を含むので許される)。また、
としてよい。
なる整数をとって固定する。
に対して
とする。これらはの閉部分集合であり、
を満たす。命題によって、各に対して
であって
なるものが存在する。そうして、と定義する。任意に
をとる。このとき、
なる
が存在する。すなわち、
および
が成り立つ。に対して
なので、
である。②より
と評価でき、のとき、③より
と評価できる(評価の結論自体はでも成立することに注意)。すなわち、①と合わせて
なので、
が示された。 Q.E.D.
三角多項式近似
Weierstrassの多項式近似定理は確かにStone-Weierstrassの定理の系になっていますが、多変数化も容易に得られます。すなわち、次元Euclid空間
における有界閉集合上定義された連続関数は
変数多項式によって一様近似できます(Stone-Weierstrassの定理の条件を満たすことは容易に確認できる)。
また、Fourier解析と関連する三角多項式近似も得られます。
三角関数の積和公式より実三角多項式全体はを含む
代数をなすことがわかります。
証明. 周期の実連続関数全体のなす集合を
、
の有界閉集合である単位円周を
とする。このとき、
に対して
を対応させることによって、
と
を同一視できる。この同一視によって実三角多項式全体のなす
の部分代数は、二変数多項式(の定める
上の連続関数)全体のなす
の部分代数に対応する(cf. チェビシェフの多項式)。よって、二変数多項式による一様近似によって所望の結果を得る。 Q.E.D.
*1:非自明なのは完備性だけなので完備性の証明を書いておきます。証明: を
のCauchy列とする。
を任意にとるとき、或る
が存在して、
であれば
が成り立つ。このとき、任意の
に対して
であるから、
の完備性により
なる実数
が存在する。
であれば
に対して成り立つ(一様性)。
は連続関数なので、
が存在して
であれば
が成り立つ。よって、
であれば、
なる
に対して
が従う。
であれば
は既に示しているので、
において
であり、証明が完了する。 Q.E.D.
*2:必要十分条件を与える形で書くこともできますし、定理の複素版もありますが、ここでは省略します。
*3:コンパクト空間の閉部分集合はコンパクト。
*4:周期がでなくても三角多項式の定義をmodifyすれば同様の近似が得られることは簡単にわかる。