電脳筆写『 心超臨界 』

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( マルクス・アウレリウス )

WGIP 《 公職追放が「敗戦利得者」を生み出した――渡部昇一 》

2025-02-12 | 04-歴史・文化・社会
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追放された人たちに代わってその地位に就いた人が、「戦前の日本はよかった」と言えるはずはなかった。大きな得をしたわけですからね。そしてその恩恵をもたらした「戦後」という時代を悪く言うこともないわけです。マッカーサーが証言したように、戦前の日本の戦争目的が「自衛」のためであれば、それを指導した人が追放されること自体がおかしなことになり、それによって得た自らの地位の正当性を失うことになる。


◆公職追放が「敗戦利得者」を生み出した

『日本を弑(しい)する人々』
( 渡部昇一・稲田朋美・八木秀次、PHP研究所、p240 )

【渡部】 自らが卑怯であることを認めたくないから、偽善的な「反戦平和」や「友好第一」などといった衣装をまといたがるのです。私は「戦前の反省」などと言いながら、戦前戦中の日本の指導者を一方的に非難する人たちは、日本の敗戦によって利益を得た「敗戦利得者」だと思っています。

先の大戦を遂行するに当たって日本の目的が「主として自衛のためであった」というマッカーサー証言が戦後日本国内で普及しないのは、独立回復後も日本の敗戦によって利益を得た人たちがその構造を維持しようとしたからだと考えます。

とくに、公職追放が「敗戦利得者」を大勢生み出しました。公職追放は、「日本人民を戦争に導いた軍国主義者の権力および影響力を永遠に排除する」という建前で行われましたが、追放の選別はGHQの恣意で、最初は戦争犯罪人、陸海軍人、超国家主義者・愛国者、政治指導者といった範囲だったのが、経済界、言論界、さらには地方にも及び、本来の意味で公職ではない民間企業、民間団体からのパージも行われました。その隙間(すきま)を埋めた人は、大きな利益を手にしたわけです。

【八木】 GHQの狙いは、敗戦によって沈む者と浮かび上がる者とをつくりだすことで、日本国内に日本人の敵を生ぜしめ、日本社会を歴史的にも、人的にも分断することにあったと言ってよいと思います。

【渡部】 追放指定の基準は、あくまでGHQの占領政策を推進するのに障害となりそうな人物の排除で、それは裏返せば愛国心を維持する人や、戦前の日本史の事実を守ろうとする人にとっては不利益を強いられ、それを捨て去る人には恩恵をもたらすという構図になっていたわけです。政界からは鳩山一郎、石橋湛山、岸信介らが追放され、戦前の日本を指導した各界からの追放者は昭和23年5月までに20万を超えました。

追放された人たちに代わってその地位に就いた人が、「戦前の日本はよかった」と言えるはずはなかった。大きな得をしたわけですからね。そしてその恩恵をもたらした「戦後」という時代を悪く言うこともないわけです。

マッカーサーが証言したように、戦前の日本の戦争目的が「自衛」のためであれば、それを指導した人が追放されること自体がおかしなことになり、それによって得た自らの地位の正当性を失うことになる。

【八木】 公職追放が道理ではなく、GHQの恣意だったことは、昭和25年の朝鮮戦争勃発によって明らかになります。

その直前、GHQはそれまで軍国主義に反対した平和主義者、民主主義者のように持ち上げていた日本共産党中央委員24人全員を追放したのをはじめ、それまでの追放解除を進め、昭和26年1月までに17万5千人の追放を解除しています。その後、サンフランシスコ平和条約発効によって追放令そのものが廃止され全員が解除されたわけですが、「敗戦利得者」たちはすでにその地歩を築いたあとだったということです。

【渡部】 いちばん得をしたのが左翼でした。GHQの民生局はケーディスをはじめ左翼の巣窟でしたから、彼らが公職追放を主導した当然の結果でした。

ケーディスの右腕だったのがハーバート・ノーマンで、ノーマンはのちに共産党員だったことが発覚して自殺しましたが、このノーマンと親しかったのが、一橋大学の学長を務めた都留重人氏です。彼は明らかにコミンテルンと言ってよいと思いますが、ほかにも東大総長を務めた南原繁氏や矢内原忠雄氏、京大総長を務めた滝川幸辰氏、法政大学総長になった大内兵衛氏ら、コミンテルンの思想的影響下にあったと思われる人たちが戦後いかなる地位に就いたかを数えれば、いくらでも敗戦利得の実例として指折れます(苦笑)。

こうした敗戦利得者、追放利得者が後進に与えた影響はきわめて大きく、戦後、雨後の筍のごとくできた大学の教授として日本中にばら撒かれたわけです。あっという間に、進行性の癌のように左翼が日本の教育界を占めてしまった。

彼らの歴史観は戦前否定、“日本悪しかれ”ですから、日本人であって日本に愛国心を感じない。むしろ日本を糾弾することで自らの存在理由を確認するという構造に組み込まれてしまっています。
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