すし通/六本木

前回は当日ダメモトで電話し、たまたま「ばらちらし」なら提供できる、とのことでしたが、今回は1ヶ月も前に予約を入れ、きちんとにぎりを頂きます。
一風変わったアプローチではあるものの、凛とした佇まい。
 前回も述べましたが、ネタに手が込んでいる一方で、ガリはとても普通です。開店前から全席にガリを並べており、乾いてしまわないか心配になってしまう。
 一発目は大トロ。トップバッターがエースで四番なのは意見が分かれるところでしょう。非の打ちどころのない味わいですが、最初の一口としては脂が強すぎる。
 カワハギ。ほーら言わんこっちゃない、大トロの脂で口の中がバカになっており、カワハギの繊細さがぼやけてしまう。ただ、名刺代わりに大トロを出すのは店主のポリシーのようなので、今後お邪魔する際は、大トロを食べた後にガリとお茶で舌の上を片付けておこうと心に決めました。
 ブリ。色々と手が込んでいるとは思うのですが、ブリ特有の歯ごたえが薄く、ピンと来ませんでした。
 甘エビは1秒湯にくぐらせてから、3日間熟成させる。ねっとりとした甘さが吸い付いて来る。美味。
 金目鯛を昆布〆してからの塩焼き。これには全面降伏。魚の旨味、脂の乗り具合、どれを取っても完璧で、思わず唸ってしまいました。
アメリケーヌソースのような味噌汁。甲殻類の特長をこれでもかというぐらいに凝縮。それでいてクドくなく、品格すら感じられます。
 塩アナゴ。ふかふかに蒸した優しい穴子に柚子の香り。さすがです。一度ツメで食べてみたいなあ。
 ヒラメは2週間熟成。こちらは企画倒れ。熟成が過ぎてしまい、食感が失われ、それはひとつの死のかたち。残念だ。
 ホタテも同様。色を失った食材に魅力を感じることはできない。
 ヅケは20日熟成。うーん、、、なんでもかんでも熟成させる必要は無いのにな。もちろん熟成は当店の特徴ではあるとは思いますが、素材の個性に合った工夫が欲しいところです。
 ズワイガニ。割合はシャリが2のカニが8でおはぎ状態。これを出されて喜ばない客はいないでしょう。ばびろんまつこなら濡れてしまうかもしれません。逆に言うと、大衆に迎合したハリウッド映画的な一品でもあります。

味は見ての通りズワイガニ味。サンフランシスコのフィッシャーマンズワーフではもっと大量のほぐし身が5ドルぐらいで売られているということを指摘しておく。
 「盛りすぎちゃったかなあ」と店主がつぶやきながらウニを出してくれる。純粋に嬉しく質も高い。ただ、はし田のウニの盛り付けに慣れてしまった私としては妙に騒ぎ立てることなく至って冷静に対応。
玉子はフワフワのかすてらスタイル。ただ、熟成にここまで手がかけれるのであれば、もう少し生地の目の細かさ等を追求できるのではあるまいか。

にぎりは一通りこちらでおしまい。不完全燃焼だったので、追加で「ばらちらし」を注文するか死ぬほど迷ったけれどやめておきました。味に満足しない場合に満腹で満足させようとするのはデブの発想ですからね。

熟成は痛し痒しですね。おっ、と思えるようなネタに化けることもあれば、魚の人となりを改悪してしまうこともある。もちろん、ランチのにぎりで全てを判断するのはルール違反なので、近々夜にお邪魔して最終的な判断を下そうと思います。

ところで、私はカウンターの隅っこで細々と食べていただけなので被害はありませんでしたが、店主がとにかく客にカラむカラむ。「技術で一番になるには突き抜けたことやらなきゃ」「ウチはオンリーワン」などなど、常にウンチクを披露している一方で、相手をさせられている客は疲労しています。

熟成にしろ客あしらいにしろ、もうちょっと普通にすれば良いのにな。


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